新中央病院屋上に着陸
急患空輸でヘリポート初使用
宇都宮→東京 緊急時対処能力を証明
4月3日に外来診療を開始したばかりの自衛隊中央病院(渡辺千之院長、東京・三宿)新病院の屋上ヘリポートが6日午後、急患空輸で初めて使われた。心臓移植手術が必要な栃木県の患者を12ヘリ隊(相馬原)のCH47輸送ヘリで宇都宮市から中央病院まで緊急搬送されたもので、患者は東京消防庁の救急車で東京都文京区の東大病院に運ばれた。東方管内では大型ヘリを使った急患空輸はまれで、自衛隊医療の中核を成す同病院の緊急時対処能力の一端が示された。
新病院の屋上ヘリポートに着陸した陸自12ヘリ隊のCH47輸送ヘリから患者を搬送する隊員ら(4月6日、自衛隊中央病院で)
空輸されたのは栃木県内の男性(23)。重い心臓病のため移植手術が必要になり、入院先の済生会宇都宮病院(宇都宮市)から東大医学部付属病院に転院が決まった。
患者には多くの医療機器が付けられ、多数の医療スタッフの同行が必要なため、陸路での振動や渋滞などの心配がない大型ヘリでの輸送が検討され、県知事から4月3日、12旅団(司令部・相馬原)に災害派遣が要請された。転院先の東大病院屋上にはヘリポートがあるものの、重量の関係でCH47輸送ヘリが着陸できないため、世田谷区三宿の自衛隊中央病院に一旦搬送し、待機した消防庁の大型救急車が患者を引き継ぐことになった。
6日午前11時すぎ、12ヘリ隊のCH47輸送ヘリ2966号機(機長・波多江享宏1陸尉以下6人)が前進待機していた北宇都宮駐屯地を離陸。同20分ごろ済生会病院に到着し、患者と同病院の医師らスタッフ計6人を乗せ12時50分前に離陸、中央病院に向かった。
中央病院では東方の医務官や中病職員、東京消防庁職員らが昼すぎから屋上に待機。午後1時20分すぎ同機が姿を現し、ゆっくり降下しながら接近し、1度のアプローチで同30分、ヘリポートに着陸した。
ローターが停止後、通常の4人態勢から2人増員された機上整備員たちが降り立ち、後部ハッチとヘリポートの接地部分に緩衝材のベニヤ板を敷設。病院関係者、消防隊員と共同で患者が横になったストレッチャーをゆっくりと地面に降ろし、救急車用のストレッチャーに移し変えた。患者は専用スロープを通って館内エレベーターに運ばれ、夜間出入口に待機した東京消防庁の特殊救急車に収容、東大病院に向かった。
2966号機は午後3時すぎ相馬原に帰投。波多江機長は「搬送中は機体のゆれ、振動に細心の注意を払った飛行を心がけた。無事任務を終了し、ほっとしている。転院された患者さんの1日も早い回復を願っている」と話した。
中央病院の佐藤義則総務班長は「今回のヘリポート利用で、災害や有事に即応できる『危機に強い病院』という新病院建て替えの基本理念が実感できた」と話している。