コラム
現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”:
「活字離れ」はウソ?――本当に本は売れていないのか (4/5)
[森田徹,Business Media 誠]
出版市場を構造不況に陥れているもの
“本が売れていない”はウソと分かったところで次へ行こう。
まず本の話に戻れば、冊数ベースでは底打ちしているのだから、市場規模が縮小しているのは純粋に単価の問題だ。古本が伸びているのも純粋に単価が低いからという理由ではないだろうか? 通信費など娯楽にかけるほかのコストが高くなっているため、多くの人はお金に対しシビアになっているのかもしれない。
となれば返本率(書店が仕入れた本を出版社や取次ぎを通して返すこと)が異常に高い高コスト構造になっている現状を電子書籍でどうにかすれば、利益額ベースでは成長できる可能性は高い(しかし売上ベースは縮小するが)。しかもブックオフなどの古本屋には悪いが、電子書籍なら古本にできないので、出版業界が古本市場の脅威に悩まされることはない。出版業界としては、まさに一石二鳥だ。
その一方、雑誌はどうだろう。こちらはどうやら絶望的なようだ。
再び下のグラフを見ていただくと、月刊誌より週刊誌の方が部数の落ち込みは激しいことが分かる。この現状から推測できるのは、情報の鮮度を重視して厚みを重視していない媒体から廃れていっているということだろう。
週刊誌が部数を減少させている背景として、確かにネットメディアの存在が大きいだろう。ネットで先に報道され、終わった話をそのまま紙に書いても遅すぎるし、何より雑誌は有料だ。例えばBusiness Media 誠が、大手出版社の報道力(取材力)に勝るとは思えないが(筆者のような学生を論陣に加えているくらいだし)、そこらの低俗な週刊誌であれば負ける気はしない。また雑誌などと比べ、ネットメディアは紙面制限がないので、情報量は多い傾向にある。誠の読者の中にも、無料のネット媒体で「情報は十分」と考えている人もいるだろう。
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