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発砲も化学兵器使用も辞さない無法行為を豪州政府は「英雄」扱いしている
捕鯨船10隻を沈めた「環境テロリスト」シー・シェパードの過激な「海賊行為」
(SAPIO 2008年3月12日号掲載) 2008年3月24日(月)配信
被害者のはずの日本が「動物虐待の犯罪者」
シー・シェパードは、マスコミを巧みに利用して、自分たちの行為を正当化しようとしている。抗議船には、マスコミのカメラマンが乗船し、世界中のメディアで彼らの活動が放映された。第二勇新丸に侵入し身柄を拘束された活動家は、手足を縛られ海に放り込まれそうになったとか、暗い部屋に閉じ込められたなどと作り話をしている。しかし、彼らに都合のよい映像ばかりが流されるので、まるで動物愛護の英雄扱いである。
彼らの船には、企業名が書かれた幕が張られている。食品加工会社などが、動物愛護、環境保護を推進していることをアピールするためにスポンサーとなり、資金を提供しているのである。彼らが派手に活動し大きく報道されるほど、スポンサー企業の宣伝効果があがり、シー・シェパードの収入も増えることにつながる。世間の注目を集めるため反捕鯨活動が過激化していることは否めないだろう。
筆者は1月末に英国に滞在していたが、英国の報道番組では、たびたびクジラに捕鯨銃を打ち込む日本船と悶え苦しむクジラの血により海が深紅に染まる映像が放送されていた。これでは、動物を虐待する日本人の姿だけが印象に残ることになる。クジラを食用としない欧米の国では、捕鯨が、娯楽としてのハンティングや毛皮や象牙の獲得を目的とした密猟と同じように扱われ、日本の調査捕鯨は動物虐待の最たるものと考えている。反捕鯨国では、調査捕鯨は禁止されている商業捕鯨の隠れ蓑で、日本人の健啖家を満足させるための営利活動だと考えられている。現代科学をもってすれば、個体を殺害しなくとも生態調査は行なえるのではないかという理屈だ。今回の事件では、被害を受けたはずの日本が、完全に悪役にされている。
第2次大戦後、シロナガスクジラなどの個体数の激減は、欧米人の動物愛護精神を刺激し、捕鯨禁止の風潮が広まった。その結果、国際捕鯨委員会(IWC)では、82年に商業捕鯨の全面禁止を決議したが、日本、ノルウェー、ペルー、ソ連が異議を申し立てた。その後、86年に日本は、米国などの求めにより異議申し立てを撤回し、87年に南極海での商業捕鯨が終了した。現在、日本の行なっている調査捕鯨は年間1300頭ほどで、今年の南極海での調査では、ミンククジラ850頭、ナガスクジラ50頭の捕獲が予定されている。これは、生態系を保護する目的によるもので、IWCの設立の根拠である国際捕鯨取締条約により認められたものだ。
08年の時点で、IWCに加盟している国は78か国。そのうち33か国が捕鯨国で、42か国が反捕鯨国である。それぞれの勢力が、スイス、モンゴル、ラオスなどの海の無い国まで巻き込み、捕鯨の是非を争っている。反捕鯨国の多くは、かつて鯨油をとることを目的に多量のクジラを獲り、複数種を絶滅の危機にさらした。1853年に日本に開港を迫った米国軍人ペリーの本来の目的は、北太平洋を走り回る捕鯨船への水と食糧と薪炭の供給を求めてのことだった。1820年代には日本の近海で大規模なアメリカ式捕鯨船団が活動していた。アメリカ式捕鯨の特徴は、火薬を仕込んだ破裂銛をクジラに打ち込み爆発させ、弱ったところを銛で仕留める方法だ。彼らが、捕鯨を残虐な行為であると考えるのは、多分にこのイメージであり、鯨油が目的のアメリカ式捕鯨と尾ひれから髭までを利用する日本の捕鯨とは、違うものであるという認識はない。
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