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発砲も化学兵器使用も辞さない無法行為を豪州政府は「英雄」扱いしている
捕鯨船10隻を沈めた「環境テロリスト」シー・シェパードの過激な「海賊行為」
(SAPIO 2008年3月12日号掲載) 2008年3月24日(月)配信
文=山田吉彦(日本財団)
1月15日、日本の調査捕鯨船に捕鯨反対グループ活動家が乗り込み、逮捕された。過激な活動で知られるシー・シェパードの行為は明らかな犯罪行為だが、なぜか欧米メディアは喝采を送っている。海洋問題に精通する日本財団・山田吉彦氏が、反捕鯨テロ♀g大の最新事情と背景を解説する。
FBIからも「テロリスト」認定 された過激な暴力
近年、反捕鯨テロリストたちの活動が増長している。1月15日、米国の反捕鯨団体「シー・シェパード」の活動家2人が、調査捕鯨船団所属の第二勇新丸(747t)に小型ボートで接近し、薬品の入ったガラス瓶を投げつけた後、同船に侵入し、身柄を拘束される事件が起きた。
この団体は、南極海で日本が行なう調査捕鯨を毎年のように妨害している。07年2月には、調査母船である日新丸(8044t)のスクリューにロープや漁網を絡ませようとし航行を妨げたうえ、酪酸の入ったガラス瓶を投げつけた。酪酸は、強い悪臭を放つ薬品で、目に入ると失明の危険もある。このテロ攻撃により、日新丸の船員2名が顔面に薬品を浴び負傷している。
シー・シェパードは、過激な行動を売り物にし、FBI(米連邦捜査局)からも環境テロリストグループとして警戒されている。もともとは、国際的環境保護団体「グリーンピース」から独立した団体で、本部は米国にある。グリーンピースとの差別化を意識してか、その行動は社会通念を超えるほど暴力的であり、世界各地で問題を起こしている。
80年にはシロナガスクジラを密漁した捕鯨船をリスボン港で撃沈、86年には北大西洋のフェロー諸島付近で捕鯨船のゴムボートを狙撃、93年に日本漁船に対しても拳銃を発砲している。彼らが沈めた捕鯨船の数は10隻にのぼり、主義・主張を押し通すために暴力を行使するのは、まさにテロリストである。03年には、このグループのメンバー2人が、捕鯨基地として有名な和歌山県太地町に出没し、漁船のロープを切るなど漁師へのいやがらせを行ない、威力業務妨害、器物損壊罪で略式起訴され、それぞれ50万円と30万円の罰金を命じられた。
07年に調査捕鯨船が襲われた事件のとき、1名の活動家が海中に転落し、シー・シェパードは、救難信号を発信した。日新丸は、テロリストとわかっていても人道的見地から、航行予定を変更し、この遭難者の捜索に協力したが、遭難者が発見、救助されると、直ぐに日新丸への攻撃を開始したのである。日新丸の乗組員のシーマンシップは、テロリストグループには伝わらなかったようだ。この事件でも彼らの自己中心的な考えがうかがえる。そして、今年も調査捕鯨船団は、シー・シェパードの攻撃を受けたのである。
今回、拘束された活動家は、2日後に豪州政府の船に身柄を引き渡された。引き渡しにあたり、日本側は、この活動家の不法侵入と危険行為に対し法的な対処を求めたが、豪州政府は、即時に釈放。その結果、この2人は釈放後、ふたたび調査捕鯨船への攻撃を開始した。
また、シー・シェパードの事件の直後、グリーンピースのボートが、調査捕鯨船と燃料補給船の間に割って入り、その際ロープが絡まり、抗議船があわや転覆しそうになっている。「板子一枚下は地獄」といわれる船上での無謀な行為は、生命を危険にさらしていることを考えていない。
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