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「真相報道バンキシャ!」は、なぜウソを見抜けなかったのか? (1/3)
虚偽の証言に基づいて岐阜県に裏金があると報じた日本テレビ系の報道番組「真相報道バンキシャ!」。今回の問題はマスコミの取材方法や報道のあり方について課題を投げかけたが、なぜ日テレ側はウソを見抜くことができなかったのだろうか?
[産経新聞]
日本テレビ系の報道番組「真相報道バンキシャ!」の取材に、「岐阜県の土木事務所では今も裏金づくりをしている」などと虚偽の証言をし、県の業務に支障を生じさせたとして3月9日、元土木建設会社役員の男(58)が偽計業務妨害の疑いで岐阜県警に逮捕された。証言は昨年11月に放送され、岐阜県が約2カ月間にわたって調査を行う事態に。報道での証言が虚偽とされて立件に至るのは極めて異例で、取材や報道のあり方が根底から問われるケースとなった。日テレ側はなぜ、うそを見抜くことができなかったのか――。
契約再点検955件、聴取380人
「県の担当者から『工事をやったように見せかけ、裏金を捻出(ねんしゅつ)してくれ』といわれた」「200万円送金した」
昨年11月23日に日本テレビ系列で放送された「バンキシャ!」。建設会社関係者を名乗る匿名の男は、モザイクの向こう側から「岐阜県の土木事務所は今も裏金をつくっている」と衝撃的な証言をした。証言は後日、系列局の中京テレビ(名古屋市)のニュース番組でも放送された。
岐阜県では平成18年に約17億円の裏金問題が発覚し、職員4000人以上が処分されている。
それだけに県は「信頼回復に向けて取り組んでいる最中で、本当なら重大事」と判断し、放送直後から約2カ月かけて大規模な調査を実施した。県内11の土木事務所の職員ら約380人から事情を聴取したほか、平成20年度分を中心に計955件の工事契約内容を再点検し、「裏金の事実は確認できない」との結論に達した。
県は、この間の通常業務に支障が出たとして、2月19日、偽計業務妨害容疑で男を県警に告訴。3月9日になり、証言した土木建設会社「美濃建設」の元営業担当役員、蒲(がま)保広容疑者(58)=同県中津川市駒場=が県警に同容疑で逮捕された。
「警察や消防署にいたずら電話をかけて偽計業務妨害で逮捕されることはあるが、報道機関にうそをついたことがきっかけで立件されるのは非常に珍しいケースだ」
捜査幹部はそう話す。
実は、この逮捕の前に蒲容疑者は中津川市の元道路建設係長(44)と共謀し、架空の工事を発注して市から約80万円をだまし取った詐欺事件で逮捕、起訴されている。日テレ側には、この手口を基にして「市」を「県」に置き換えた偽ストーリーを語ったのだという。
県警の調べによると、蒲容疑者は過去、他局の報道番組に数回出演し、出演料などの名目で数千円〜2万円の現金を得ていた。
今回の取材は、蒲容疑者がインターネット上の「アンケートサイト」に情報提供の書き込みをしたことが端緒とされている。サイトは特定されていないが、蒲容疑者は過去にも同種のサイトに書き込みをしたといい、「借金があったので、小遣いを稼ぎたかった。今回も(謝礼の)金がもらえると思った」と供述しているという。
ただ、今回の「裏金証言」については、出演料の交渉も金銭の授受も確認されていない。
「取材の詰め甘かった」……日テレ平謝り
県や日テレの説明などによると、取材の経過は次のような流れになる。
日テレ側は、社員のプロデューサーや下請け制作会社のディレクター、カメラマンなどによる混成の取材チームを編成。社外のスタッフが蒲容疑者と接触し、「裏金」に関する銀行カードや出入金記録、小切手などを示されながら説明を受けた。
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