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日本 平和 NA_テーマ2
「自存自衛の鬼ッ子」アナロジー
2006/10/19

 20世紀の人類史が生み出した鬼っ子《北朝鮮》の《独裁者》のアタマの中を洞察してみれば、ここまでの成り行きによる北朝鮮の行動は、『彼』にとっては、極めて「合理的」であり、世界に向けて何度も「予告(警告)」してきたことが無視されたからやむをえず「核武装」したのだ、と開き直っているだろう。

 キム・ジョンイルは、アメリカ政府に向けて、繰り返しラブレターを送りつづけている。「あなたとトモダチになりたい。だから、敵視するのはやめてください。我が国を武力で潰すなどと言わないで下さい」と。

 クリントン政権は、それに応えて、1994年に、平和的共存のための「枠組合意」というものを北朝鮮と結んだ。それを北朝鮮が破り、アメリカは騙された、とブッシュ政権は言っているが、一方の北朝鮮側は、約束を守らなかったのはアメリカのほうだ、と言っている。不幸な認識のズレだ。

 日本の自民党政権は、基本的に米国政府の言い分を支持しているが、ここは鵜呑みにしないほうがいい。両方の言い分を「イーブン」に(洒落か!)聴くべきだ。

 北朝鮮は、アメリカからの『体制転覆(レジューム・チェンジ)』圧力に対抗するために、「核開発をしているよ」「核武装しちゃうよ」「核実験するよ」と、順次「予告」してきた。これすべて、アメリカへのラブレターだ。「こっち向いてよ」「トモダチと認めてよ」というメッセージなのだ。

 ブッシュ政権は、それを拒否する。アメリカと北朝鮮がトモダチになって、世界に「敵」がなくなっては困るからだ。

 世界が「平和」になっては、政権のドル箱である《兵器産業》や《軍隊》が必要なくなるからだ。

 そういう《世界支配の大構造》を知った上で、様々な出来事の《裏側》を洞察する能力を一般市民が身に付けていくことが重要だ。ベストセラー「国家の品格」なんかに騙されて「エリート」とやらに「政治」や「外交」を任せていたら、60年前と同じようにエライ目にあわされるだろう。

 最近日本でもやっと一般に浸透し始めた『9.11テロに米国政府が関与していた疑い』は、歴史上枚挙に暇が無い【国家権力による陰謀】についてナイーブな日本の現代人にとっては、まさに『驚天動地』の「アンビリーバボー」「まさか!ウソ!」の世界だろうが、《疑い》の証拠の映像や事実の数々を自分の目で見て、よ〜く考えてみることは、地球市民の一員として責任ある判断をするための、良い例題だろう。

 21世紀の「鬼っ子」北朝鮮の行動は、先輩先進諸国の行動をよく見て【学習】して、見習っているのである。

 いまの地球では、大国のほかに、数ヶ国が、核兵器を所持している。僕だって持ちたいよ。アレを持っていれば、アメリカから嘗められなくなる、と『彼』が考えるのは、それなりに「合理的」である。

 もちろん、「世界を支配したい」権力からみたら、許しがたいことなのだが。「戦争産業」に融資している「資本家」からみたら、オイシイ存在だ。《裏》から北朝鮮に「核武装」の資金援助をしたかもしれない。

 かつて、明治時代から20世紀前半までの日本は、欧米列強帝国主義国からの植民地化の脅威に対抗するために、自ら「世界最後の帝国主義国」となり、朝鮮を植民地化し、満州に傀儡政権をつくり、中国大陸への「進出」を邪魔されると、世界を相手にして「大戦」を始めた。そのときの『戦費』も、欧州系の大銀行が貸したらしい。ナチスにだって、「誰か」が融資(投資)したワケだ。

 そして国内外の千万人単位の命が失われ、1945年に日本は負けた。

 「大東亜戦争」を戦ったそのときの東条内閣の大臣として、「岸信介」さんは、重要な役割を果たした。「戦争犯罪人」として、戦勝国による裁判で「A級戦犯容疑者」とされ、監獄に入った。その人が、現在の日本の総理大臣「安倍晋三」さんの母方の祖父である。安倍さんは、この祖父を崇拝しているらしい。

 岸さんは、なぜか「戦犯」容疑は無罪となり釈放されて、その後総理大臣となって、1960年の「日米安保条約改定」を国民の大反対を押して強行採決した。そのせいで、孫の晋三少年は当時「いじめられた」そうである。

 安倍晋三さんは、政治家としての岸信介さんの行いをすべて是としていたはずだが、今年の9月に自らが52歳で総理大臣になってから、ずいぶん思いきった「豹変」をしている。

 国会で、民主党の菅直人さんの意地悪な質問に答えて、「大戦を始めたことは間違いだった」と認めた。当時の閣僚としての祖父の行いを否定したのである。

 「あの大戦は、自存自衛のやむをえない戦争だった」という歴史認識を公言してきたはずなのに、国会で問い詰められると、急に「謙虚」になってしまった。

 「主張する」「闘う」政治家なら、堂々と「欧米列強の帝国主義を見習って、国益のために、朝鮮を植民地にし、中国大陸を侵略した」と言えばいいではないか。

 先進国がやっていたのと同じ事をやったら、世界から「鬼っ子」扱いされて、経済制裁をくらい、自衛の為にやむを得ず「戦争」をした。靖国神社の「遊就館」が掲げている「歴史認識」と同じだったはずだ。

 安倍政権発足直後に「中国」と「韓国」をすばやく歴訪して5年余り途切れていた首脳会談を行って新内閣の初陣を飾るために、長年の「信念」を曲げたのだろうか。「国益のために」心にもないことを「国会で答弁」したのだろうか。

 安倍さんには、昭和初期の当時の政治リーダーの一人としての岸さんの悔しさが分かるのだろう。それならば、いまの北朝鮮の悔しさも、理解できるのじゃないだろうか。20世紀前半の日本の立場と、21世紀初頭の北朝鮮の立場にアナロジー(類似形)をみるのは、こじつけに過ぎるだろうか。

 もうひとつのアナロジーが思い浮かぶ。いま「検察」と闘っている「ホリエモン」のことだ。彼は、予定調和的な日本社会を変えようと「チャレンジ」を試みた。政治と官庁と大企業による「体制」のウソと馴れ合いを(少しだけ)暴いた。会社転がし、カネ転がしで大儲けし、見せびらかした。【拝金主義】と非難されたが、テレビに出てしゃべりまくった。やりすぎた(?)ためか、ある日突然、犯罪者にされた。

 株の取引のやりかたが違法だとされたときには彼は、「僕らがやらなければ、もっとアタマのいい人たちにやられてしまいますよ」と【外資】の暗躍をほのめかした。彼は「愛国者」のつもりだったのかもしれない。

 彼は、どんな「罪」を犯したのだろうか。問題なのは「倫理」か「ルール」か。

 「カネで買えないモノはない」と言ったとか書いたとかで、非難されているが、我々が戦後日本で(戦勝国アングロサクソンの「経済」を真似て)つくりあげてきた消費資本主義システムにおいては、極論ではあるがソレは「一面の真理」だろう。

 「政治」も「軍」も、(女もけっこう)カネで動く。世界の偽善者たちが隠しているものを、彼はラディカルに暴露しただけだ。「現代の鬼っ子」の彼を袋叩きにする資格が、我々にあるのだろうか?

 さて、アメリカのブッシュ大統領は、「北朝鮮」を「悪」とか「悪魔」とか決め付けた。「選挙をやらない独裁国家」だから、とか「ひとさらい」だから、とか言うが、アメリカほど、この半世紀「ひとさらい」や「暗殺」や「拷問」をやってきた国はないかもしれない。「選挙」の公正さも、かなり疑われている。どちらのことも、まあ、「ソ連」とはいい勝負かもしれないが。巧みに隠蔽しているだけだ。

 いま地球上の「大国」といわれる国のほかにも、数ヶ国が「核兵器」を所持し、繰り返し「核実験」を行い、アメリカはそれを「容認」している。なぜ北朝鮮が「核」を持つと世界から袋叩きにされるのか。

 「アメリカに嫌われているから」と、テレビで政治家か評論家が言っていた。なるほどそうか。

 さて、日本はアメリカから「好かれている」のか「嫌われている」のか。
 さて、中国はアメリカから「好かれている」のか「嫌われている」のか。

 これは、なかなかに微妙な問題だ。アメリカの政府高官と中国の政府高官は、しょっちゅう「ホットライン」で連絡をとりあっているという。日米中の「三角関係」は、どうなっているのだろう?

 「愛」とは、いつでもとても身勝手なものだ。オトナは、それを知っているはずだが…

 ここで、愚作を五句一首。

●追い詰めるつもりが「核」で大逆転

●アタフタとオロオロとする我が政府

●国民に「冷静に」と言いながら右往左往

●米中朝の駆け引きに手が無い我が日本

●マツタケやアサリやカニに八つ当たり

●こうなると分かっていながら追いこんだホントのワルがわらってる

参考記事:
「911テロ捏造説は世界の常識か非常識か」
「あア、美しい国」十句
《北の核》が現実となりて、十五首

(安住るり)

「自存自衛の核武装」一理あるかも……。







豹変する君子は、舌が一枚では足りないかも……。







「女はカネについてくる」一面の真理かも……。




ご意見板

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[22435] 筆者より。沖縄に行ってきました。
名前:安住るり
日時:2006/10/21 11:02
おはようございます。
まだ沖縄ボケが抜けません。なにしろ昨夜の最終便で那覇から羽田に帰ってきたばかりですので。


のどかな気分で、「沖縄はたのしかったさぁ〜」と、5日間の思い出に浸りながら、久米島の「はての浜」のサンゴや、那覇のやちむん(焼き物)通りで買い込んだ大小様々なシーサーをどこに飾るか考えたりしています。



このコラムは、沖縄に出掛ける前夜の15日に草稿しました。
16日早朝の飛行機で(安いスカイマーク往復)快晴の那覇に着き、
午後一杯は定期観光バスで「南部戦跡」を巡りました。
死なずにすんだはずの数十万の人々の「霊」を感じて、ためいきばかり出ました。
「ひめゆり部隊」の女子高生たちも、米軍の呼びかけに応じて「投降」していれば、命は助かった筈なのです。


日本軍司令部が追い詰められて自決したといわれる本島南端の美しい岬には、あの戦争で亡くなった沖縄の十数万の人々と、沖縄戦で亡くなった外国人も含めた各県の人々の「名前」が刻まれた黒御影石の屏風のような形の「平和の礎(へいわのいしじ)」が、延々と立ち並んでいます。


大勢の婦女子老人たちが海に飛び込んだ「万歳クリフ」が左手に望めます。なんと美しく悲しい場所でしょうか。


「国を愛するなら命を捧げよ」というような「狂った教育」がなされることが二度とあってはなりません。


そのようにして、純粋な人々を結果として騙して、自らはのうのうと生き延びた人間が、クニのトップから、前線の守備隊長まで、大勢いたのですよ。


「あなた」は、再びその犠牲にならない自信がありますか?

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