コラム
出版&新聞ビジネスの明日を考える:
なぜ『週刊現代』と『週刊ポスト』の部数は凋落したのか? (1/5)
「週刊誌」と聞いて、「派手な見出しと薄い内容」「度肝を抜くスクープ」などをイメージする人も多いだろう。しかし週刊誌の代表格『週刊現代』と『週刊ポスト』が部数を急減させている。紙面の内容はあまり変わっていないような気もするが、なぜ部数が落ち込んでいるのだろうか?
[長浜淳之介,Business Media 誠]
週刊誌の中の週刊誌、というよりも雑誌の中の雑誌、日本を代表する総合週刊誌の部数減が著しい。日本雑誌協会のマガジンデータによると、4大誌『週刊文春』『週刊新潮』『週刊ポスト』『週刊現代』の2008年4月〜6月と10月〜12月の印刷証明付発行部数は、次の通りである。
総合週刊誌の部数(日本雑誌協会調べ)
雑誌名 | 2008年10月〜12月部数(万部) | 2008年4月〜6月部数(万部) | 増減 |
---|---|---|---|
週刊文春 | 76.2 | 76.6 | −0.4 |
週刊新潮 | 68.1 | 71.9 | −3.8 |
週刊ポスト | 47.1 | 51.9 | −4.8 |
週刊現代 | 42.4 | 49.4 | −7.0 |
週刊誌の発行部数は、スキャンダラスな事件の有無などにも左右されるから、即断はできないものの、4大誌ともに部数を減らしており、部数の少ない方から売れなくなってきている傾向が見て取れる。
『週刊文春』の微減はともかく、『週刊現代』は7万部減、『週刊ポスト』も4万8000部減というのはかなりショックな数字である。両誌ともにかつて100万部を軽く超え、ライバルとしてしのぎを削ってきただけに非常に寂しい。
1990年代、『週刊現代』編集長として黄金時代を築くだけでなく、『フライデー』編集長、講談社第一編集局長、インターネットマガジン『Web現代』創刊編集長、市民参加型メディア『オーマイニュース日本版』編集長さらに代表取締役社長を歴任した、元木昌彦氏自身のブログ「元木昌彦のマスコミ業界回遊日誌」の2009年2月17日付エントリで、危機感を訴えている。
「雑誌は読者とともに年をとっていく。団塊世代とともに成長してきた週刊誌は、団塊世代が引退すると同時に、勢いが衰えてきたのだ。いまは、ナンバーワンの文春まで、部数が落ちてきているという。『サンデー毎日』が実売5万部、『アサヒ芸能』が15万部になったと聞く。『週刊現代』も20万部を切っている。
総合週刊誌というジャンルは寿命を終えようとしているのかもしれない。しかし、だからといって、休刊すればいいものではない」
『週刊現代』の実売が20万部に満たないのならば、返品率は半分近くにもなるのだろうか。
男性サラリーマンの総合週刊誌離れが直撃
元木氏に雑誌の現状などを聞くため、早稲田にある事務所を訪ねた。「最も危険な編集者」と噂される人だけにとても恐い人を想像していたが、会ってみると内に信念を秘めた穏やかな人といった印象だ。『週刊現代』や『フライデー』の編集長をしていたころの元木氏を知らないので、当時に比べて今、人間が円くなったのかは筆者では判断がつかない。
「『週刊文春』は、女性に強く女性の読者が半分ですから、目減りしないと言えます。『週刊新潮』は、昔は40歳を過ぎたら読む雑誌でした。今は50歳、60歳を過ぎたらと年齢層がさらに上がっているでしょうが、昔から高年齢層に強かった。それに対して『週刊現代』、『週刊ポスト』は男性サラリーマンを読者の中心として部数を伸ばしてきましたから、直撃を受けています」
『週刊文春』が女性、『週刊新潮』が高齢者に強い雑誌であるというのは感覚的にも納得できる。病院に行けばこの両誌を置いているところも多く『週刊現代』、『週刊ポスト』はあまり見かけない。統計的に調べたわけではないが、病院の定期購読だけでもかなり差がつくだろう。
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