夢の繊維「クモの糸」合成 慶大生命研院生が開発
2人は博士2年の関山和秀さん(26)と、修士2年の菅原潤一さん(24)。関山さんは2004年からクモ糸の実用化に取り組み07年、菅原さんとともに研究所内にバイオベンチャー企業「スパイバー」を設立し、研究を進めてきた。 その結果、培養したバクテリアにフィブロインと呼ばれるタンパク質を合成させる量産技術や、大手メーカーとの共同開発による紡糸技術などを確立。高性能タンパク質繊維の合成に成功した。 関連した技術数件の特許を出願しており、国内外の企業数社からも共同研究の申し出があるという。 新素材は「生産時の二酸化炭素排出が極めて少なく、生分解のため廃棄も容易」(関山さん)という。素材やコスト面の改良を重ねながら、将来的には自動車や航空機、発電用風車の材料、医療用縫合糸など幅広い用途での活用を目指す。 2人の研究は、バイオ分野の技術革新を目的に、大阪府や大阪商工会議所が主催する「バイオビジネスコンペジャパン」の最優秀賞にも輝いた。学生としては初めての最優秀賞で、賞金500万円を獲得した。 指導した同研究所の冨田勝所長は「バイオ分野で最も権威あるビジネスコンペ。受賞をばねに鶴岡から世界に向けた躍進に期待したい」と総括。関山さんは「資源に乏しい日本だからこそ頑張りたい。一日も早い実用化を目指したい」と意気込んでいる。 ポリエステルやナイロンなど石油を原料にする化学繊維は、合成時に多量の二酸化炭素を排出し、土に返らない。これに対し環境負荷が少ないクモの糸は研究者の間で「夢の素材」といわれ、人工的に生成する試みが続けられてきた。
2009年04月08日水曜日
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