フィリピン人カルデロンさん一家の強制退去問題で、「在日特権を許さない市民の会」(略称「在特会」)などの市民団体が、4月11日埼玉県蕨市内で、「犯罪フィリピン人カルデロン一家を日本から叩き出せ!」と一家を名指ししたシュプレヒコールをあげながらデモ行進し、ノリコさんの通う蕨第一中学校学区内、中学前を練り歩いた。JR蕨駅前では、このデモに抗議する市民の有志で構成される「外国人排除デモに反対する会」と口論する一幕もあった。なお、ノリコさんの両親はこの2日後に帰国する。(村上力)
●このデモの意図は
日刊ベリタでも報じているように、「在日特権を許さない市民の会」「主権回復を目指す会」「せと弘幸Blog『日本よ何処へ』」「NPO外国人犯罪追放運動」「外国人参政権に反対する会・東京」「日本を護る市民の会」など、“良識ある日本国民で形成される『行動する保守』”を自負するこれらの団体は、カルデロン一家の件を“犯罪フィリピン人一家カルデロン問題”と取り扱い、再三行動を起こしている。
一連の抗議行動は、名目は公的機関に対してであり、その対象は法務省、入管、フィリピン大使館などであった。4月9日には蕨市議会へも申し入れを行っている(※1)。
今回は“大規模抗議デモ開催!”などと銘打って、広く市民の参加を呼びかけていた。「在特会」公式サイトでは、参加を呼びかける動画が配信されていた(※2)。画面に映し出されたのは、「ブルーリボンバッチ」をつけ、ブルーリボングッズと思しきネックストラップを身につけた在特会関係者だ。撮影現場は蕨駅前と思われる。
彼は以下のように語ってみせた。
「これまで『在日特権をゆるさない市民の会』では、会長の桜井誠以下会員一堂、不法滞在者カルデロン一家を叩き出せという抗議活動を行っておりました。それでも怒りの収まらない我々は、更なる行動を起こすことを決意いたしまして、蕨市での抗議活動の手続きをしてきました。蕨市内でデモ行進を行います。」
「デモ行進のコースですけれども、カルデロン・ノリコが通っておりました、蕨市立南小学校、そして現在通っております、蕨市立第一中学校の横を掠めるコースを設定いたしました。桜井誠のマシンガントークを聞きたい方、そしてこのカルデロン問題で憤っている国民の皆様、どうかご参加のほど、よろしくお願いします。」
今回のデモの意図は何か。まず呼びかけ文を見てみよう(※3)。「犯罪を起こした外国人への厳しい処罰と行政処分を求めます」とのことだが、デモコースは「処罰」や「行政処分」を担当する機関を掠めてもいない。警察署や市役所はデモコースの逆方向にある。
「抗議」の対象として、「法治を捻じ曲げようとする無法者」「犯罪助長メディア」があげられている。いうまでも無いが、蕨市には彼らが「犯罪助長メディア」としているTBSも、共同通信も本社を置いていない。
つまるところ今回の「抗議」は、対象が全く明確でない。「法治を捻じ曲げようとする無法者」や、彼らの言う「反日左翼(定義もされていない)」が、蕨市にいるという確証があるのか。あたかも、それら「法治国家の崩壊を目論む」人々が「支援」をしていると彼らは主張しているが、証拠も具体名も出していない。「支援」形態も、資金提供か、ただ署名をしただけなのか、定義されていない。
●「外国人排除デモに反対する会」との口論も
『行動する保守』らは、蕨駅近くの広場で集合を予定していた。このデモに対して、市民の有志で構成される「外国人排除デモに反対する会」が抗議行動を予定していた。
13:00頃、蕨駅前で「外国人排除デモに反対する会」の市民らが「生きることは犯罪じゃない!」などと書かれた横断幕を広げていたところ、『行動する保守』の市民らとの口論が発生した。
だが、『行動する保守』の市民らは「朝鮮人出て来い!」「朝鮮人は日本から出ていけ!」など、「朝鮮人云々」を少なくとも20回ほど連呼し、結局話し合いは成立しなかった。また『行動する保守』らのデモ行進中、散発的な衝突があったようである。
『行動する保守』らのデモには、90名ほどの市民が参加し、拡声器を搭載した「主権回復を目指す会」の街宣車を走らせている。軍歌などを流すのではなく、『行動する保守』らの中心的人物、主に「在特会」会長桜井誠氏/「維新政党・新風」副代表、「世界戦略研究所」代表瀬戸弘幸氏/「世界戦略研究所」元研究生、「NPO外国人犯罪追放運動」代表有門大輔氏/「維新政党・新風」国民運動委員、「救う会・埼玉」会員、「外国人参政権に反対する会・東京」村田春樹氏らのスピーチを流している。
デモ行進中、一団は「不法滞在外国人を叩き出せ!」「法の捻じ曲げを許さないぞ!」「ノリコ・カルデロンの在留を認めないぞ!」「ノリコ・カルデロンの在留を許さないぞ!」とカルデロン一家を名指ししたシュプレヒコールをあげた。その声は半径300m程に響き渡っていた。
また、「救う会・埼玉」「在特会」会員の村田氏は、「カルデロン一家、政府、ノリコちゃんの人権をなんだと思っているんですか。ノリコちゃんが、正規のビザをもって日本にもう一回来たときに、日本中の人から、『ああ、犯罪者の娘か』と、言うじゃないですか」などと話し、「カルデロン・ノリコさんの人権を守れー!」とシュプレヒコールをあげた。
デモコースに設定された蕨市中央、南町は、ノリコさんの通う蕨第一中学校の学区内である(※4)。南町はすべての丁目が蕨第一中学校の学区だ。デモの一団は14:20頃、その南町に到着し、15:00頃に至るまでそこを練り歩いている。デモ行進は予定時間の1時間の殆どをこの地区に集中したのである。
デモの一団はノリコさんの通う蕨第一中学校を前にして、「カルデロン一家を直ちにフィリピンに戻せ!」「不法滞在者、不法就労のカルデロン一家を、直ちに日本から、追放するぞ!」とシュプレヒコールをあげた。なお、ノリコさんはこの日、音楽部のため学校内に居たという。
※1:http://www.zaitokukai.com/modules/wordpress/index.php?p=92
※2:http://www.zaitokukai.com/modules/x_movie/x_movie_view.php?cid=9&lid=145
※3:http://www.zaitokukai.com/modules/news/article.php?storyid=221
※4:http://www.city.warabi.saitama.jp/hp/page000002700/hpg000002610.htm
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