国が日系外国人失業者の帰国費用を支払う「帰国支援金」制度が4月から始まり、甲府市などのハローワークに相談の日系外国人が殺到している。しかし、原則として再入国しないことが条件になっており、多くの人が苦渋の選択を迫られている。【沢田勇】
帰国支援金は、母国への帰国費用を本人に30万円、扶養家族に1人20万円をそれぞれ支給する仕組み。厚生労働省外国人雇用対策課によると、同省が3月、不況を受けた外国人に対する緊急雇用対策の一環として導入を決めた。雇用対策予算の中から支払う。
対象は南米諸国の国籍を持ち、在留資格が「永住者」「日本人の配偶者」などとなっている日系人失業者。ただ、旅行や一時帰国に利用されることを防ぐため、支給条件には「(日本での)求職活動を断念し、母国で再就職を決意したこと」「同じ在留資格で再入国しないこと」などが定められている。
しかし、山梨労働局によると、生活に困窮して帰国を希望するものの、景気回復を待って再度日本で働きたいと考える日系外国人は多いという。申請書を持ち帰った人はいるが、10日現在、県内で申し込みはまだない。
同じ在留資格で再入国を認めないことについて、厚労省外国人雇用対策課は「日本語が全く話せない人などは、日本に再入国しても、再び景気が悪化すれば同じ状況に陥る可能性がある。あくまで『日本ではやっていけないから母国で就職したい』という人を支援する制度であり、再び戻る意思のある人は自費で渡航してもらいたい」と話している。
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ハローワーク甲府(甲府市住吉1)と同市丸の内2の分室では週3回、ポルトガル語の通訳が相談に応じ、1日30人ほどの日系人が長蛇の列をなす。今月は、ほとんどが帰国支援金の相談という。
10日、ハローワーク甲府を訪れた日系3世のペルー人の男性(30)は4年前に来日、笛吹市御坂町の工場に勤めていたが、不況のあおりで今年2月に突然解雇された。ハローワークで職を探し続けたが、日本語が話せないこともあって難航。支援金制度を知り、帰国を決断した。それでも、いつか日本に戻って職に就きたい思いもある。「しょうがないけど、ペルーに戻っても仕事があるかどうか」と顔を曇らせた。
通訳として男性に付き添っていた元同僚の日本人男性(24)は「別れるのはつらいですが、僕が彼の立場だったら同じ選択をすると思います」と話した。
毎日新聞 2009年4月11日 地方版