本文へスキップ
ホーム 三井物産って? ブッサン人の挑戦 世界の街角から もっと知りたい! カルガモ日記 ダウンロードコーナー

世界の街角から
スペイン -
 "その瞬間 "や "ノリ "を大切にする
愛すべき人々

とにかく「騒音」には寛容
_
画像
二重縦列駐車が当たり前のマドリッド市内の道路
_
皆さんはスペインというと何を思い浮かべられるでしょうか。私がスペインに1年強生活して、スペインを一言で表せと言われたら、誤解を恐れずに言うと「騒音」だと思います。とにかくここは騒音の多い国です。ちょっとしたことですぐクラクションを鳴らします。二重縦列駐車も日常茶飯事で内側の車は外側の車の持ち主が現れるまで、周りを構わずクラクションを鳴らし続けます。ごみ収集もすごい音をたてて収集しています。しかも、こちらのごみ収集は渋滞を起こさないためとかなんとかで、真夜中というか朝の3時ごろに収集にやってきます。スペイン人はおしゃべりも大好きです。公園で、バル(居酒屋)で、携帯電話で、そして、テレビの中の出演者たちすら、こちらから見るとけんかしているのではないかと思われるほど大きな声でしゃべり合っています。

_
画像
スペイン北部サンセバスチャンで知り合ったおじさんたちのPrivate美食クラブ
_
なぜなのでしょう。私は真剣に考えました。どうしてみんなこんなに騒音に無頓着なのか?と。結論としては、この人たちとは何かが本質的に違う、ということでした。

彼らは騒音をそれほどの騒音と感じていないのです。それはきっと普段のおしゃべりの仕方、話し方に起因しているのでしょう。日本では「人の話は最後まで聞く」というのが学校で最初に習うマナーの一つだと思います。こちらではそんなことをしていてはいつまでたっても自分の話す順番は回ってきません。むしろ、縄跳びの要領で、入れそうなところがあれば果敢に飛び込んでいくようにしていかないといつまでたってもおしゃべりの輪には入れません。そうしていると、人の声の上に、自分の声をかぶせることが普通になってきます。そうすれば、必然的に声の総量、音の総量が増加します。それで、スペイン人は音量に対して寛容になっているのではないかと考えるようになりました。

"祭り"良ければすべて良し
_
画像
辺り構わずトマトを投げ合いぶつけ合う祭り「トマティーナ」で一戦を交えた後。中央の水中眼鏡を掛けているのが許さん
_
また、日本人の私にとって気になるもう一つのことが“アスタマニャーナ”の精神、明日できることは今日やらない、とでも言いましょうか。これも慣れるまでは本当にやりきれない代物でした。そこで、私はまた考えました。なぜなのか? と。スペイン人だって急いでいるときはあるに違いないのです。

結論としては、「その瞬間」あるいは「ノリ」を大切にしているということに気づきました。彼らは、話が盛り上がれば、ちょっとくらい待ち合わせの時間に遅れそうでもおしゃべりを続けます。今その瞬間が大切なのです。それはどの町にもあるフィエスタ(祭り)にも言えることだと思います。人々は年に一度の地元のフィエスタを、そこでの友人との再会・出会いをとても大切にし心待ちにしています。私も、地中海沿いバレンシア地方のブニョールという町で行われる「トマティーナ」というトマトを辺り構わず投げ合いぶつけ合う祭りに参加したことがありますが、その盛り上がりといったらすごいものがありました。“祭り”が良ければほかはどうでもいいのです。ノリが大切なのです。

やるときにはやる国民性
_
画像
アルカラ・デ・エナーレスのセルバンテス祭。中世のかっこうで屋台を出します
_
ノリを大切にしているということは、それに長けているということでもあります。日本人がこつこつ型の農耕民族とすれば、スペイン人は瞬発力の狩猟民族だと思います。従い、その瞬発力が集団で発揮されたときのパワーには目をみはるものがあります。例えば、今年の3月11日にマドリッドで電車爆発テロ事件がありました。この路線は私も、語学研修中に住んでいたアルカラ・デ・エナーレスからマドリッドに出掛ける際に時々利用していた路線であり、この事件には衝撃を受けました。しかし、さらに驚いたのはその数日後のテロ活動に対するスペイン市民のデモ行進でした。デモ行進はスペイン各地で行われ、スペイン全土で1,160万人の参加がありました。スペインの人口は約4,270万人ですので、4人に1人強が参加したことになります。

限られた時間の中であれだけの人数が一つのイベントに集結し、心を一つにすることができる。普段のスペイン人とは大違いですが、やるときにはやれる人々なんだな、とつくづく感じた出来事でした。

5月に25か国からなる拡大EUが発足しスペインのヨーロッパにおける立場は変わりました。これまでの援助してもらう側から援助する側になったのです。そして、スペイン自身もテロ後の選挙で与野党が逆転し、変革の好機を迎えたともいえましょう。そんなスペインに目が離せないなと思う今日このごろです。


[スペイン修業生(英国三井物産スペイン支店)/許 淑恵]

2004年10月掲載



スペイン語版はこちら
このページのトップへ

サイトマップご利用条件リンクについて個人情報保護方針情報セキュリティ方針お問い合わせ 三井物産ホームへ
(C) Copyright 2004 Mitsui&Co.,Ltd.All rights reserved.
三井物産株式会社 キッズMBK