紀元711年にジブラルタル海峡を越えて北アフリカからイベリア半島に侵入してきたアラブ人。既にそれより以前からイベリア半島に居住していたユダヤ人。40万人いたと見られるユダヤ人は1492年、カトリック両王の国土回復により16万人がイベリア半島から追放され、アラブ人もその多くが1609年に追放されたが、その子孫は現在のスペイン人の約3割を占めることがDNA解析により判明した。イギリス、スペイン、ポルトガルの学者らによる共同調査研究によると、イベリア半島及びバレアレス諸島の18市町村の男性1,140人の染色体情報を分析した結果、20%はユダヤ人、11%はアラブ人の末裔だった。カトリック王朝による追放・排斥にもかかわらず、多くのユダヤ人やアラブ人が自主的あるいは強制的に改宗してイベリア半島に留まったことが分かる。そうした末裔の分布を見ると、南北差よりもむしろ東西差が顕著で、アラブ人の末裔はピレネー山脈地方では0%、バレンシアやアンダルシアでもわずかだが、ガリシアでは20%、カスティーリャ北西部では22%に及ぶ。1609年にフェリペ3世はバレンシアやアンダルシアのアラブ人のゲットーは壊滅させたが、ガリシアなどの地方に散在し同化したアラブ人までは手が回らなかったらしい。一方、ユダヤ人の末裔はピレネー地方、カスティーリャ北東部、カタルーニャ地方をのぞいてほぼ均一の割合で分布している。この研究は「American Journal of Human Genetics」で発表。
【スペイン マドリッド 12月5日】