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【北ミサイル発射】制裁に踏み切れない中国
北朝鮮のミサイル発射に対し、日本や米国が新たな国連安保理決議案で、2006年のミサイル発射と核実験の後に採択された対北朝鮮国連安保理制裁決議の履行徹底を求めようとしている。決議でぜいたく品の禁輸が盛り込まれたにもかかわらず、北朝鮮へのぜいたく品輸出を増加させる中国の対応に暗に不満を示したものだ。「制裁」が実際に効果を上げられるか否かは、北朝鮮の最大の貿易相手である中国の動きにかかっている。(川越一、ワシントン=有元隆志)
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中国の楊(よう)潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(けつち)外相は8日、中曽根弘文外相と電話会談し、中国は「北朝鮮に対し事態をエスカレートしなように働きかけていくが、関係国に対しても冷静かつ適切に問題を処理することを望んでいる」と述べ、制裁強化には応じられないとの姿勢を示した。
2006年10月、北朝鮮が核実験を行った際には、中国も安保理決議1718の採択を支持した。しかし、決議は中国、ロシアの要求で軍事的措置は除外し、経済制裁などの非軍事的措置に限定された。さらに、貨物検査の実施も中国の主張で加盟各国に委ねられたことで、ぜいたく品禁輸は「抜け道だらけ」と指摘されている。
中国商務省が公表している輸出入商品国家(地区)総値表によると、中国の対北朝鮮貿易総額(輸出入の取引額総計)は、03年に10億ドル(約1000億円)を突破して以来、年々増え続け、07年も前年比16・2%増の19億7592万ドル(約1980億円)を記録。08年も10月の時点ですでに21億2393万ドル(約2127億円)に達していた。
だが、禁輸品に該当するぜいたく品の詳細が定められていないことから、中国は実施した制裁措置に関する報告書に詳細を記載していない。
昨年末までに調査を行った米ピーターソン国際経済研究所の北朝鮮経済専門家、マーカス・ノーランド上級研究員は、中国商務省の統計をもとに、06年に5000万ドル(約50億円)に満たなかった中国から北朝鮮へのぜいたく品輸出が、07年には1億2000万ドル(約120億円)に増加していたと分析し、「ぜいたく品の輸出を禁じた国連決議は、中国の行動に何ら影響を与えていないようだ」と指摘した。
同氏によると、北朝鮮と韓国の貿易量も制裁決議後に上昇傾向にある。
中国には経済的にも、政治的にも、北朝鮮を過剰に刺激できない理由がある。米シンクタンク外交問題評議会が昨年7月に発表した「中朝関係」と題する文書によると、北朝鮮へ投資する中国企業は増え続けており、有利な取引条件や船舶運航管理の既得権を失うわけにいかない。経済発展を持続させたい中国としては、石炭や鉄鉱石、世界一の埋蔵量を誇るマグネサイトなど北朝鮮の地下資源は無視できないのだ。
3万人近い米兵が駐留する韓国との間に北朝鮮という“緩衝地帯”が存在することで、中国は朝鮮半島と陸続きの東北地方に人民解放軍を配備する負担が軽減され、台湾統一という国家の大命題に比重を置くことができる。北朝鮮の体制が崩壊すれば、中国に流入しようとする無数の“難民”で、中朝国境が混乱に陥ることは避けられない。
中国政府関係者は「安保理がどんな制裁決議を採択したとしても、中国はけっして北朝鮮に対する人道物資の援助を停止しない。中国は金正日政権がここで終わることを望んでいないからだ」と、中国メディアに漏らしている。
北朝鮮は食糧の70%、エネルギー資源の70〜80%を中国から調達しているといわれる。その供給路が断たれれば大きな打撃となるのは確実だが、ノーランド氏は発射前の2日、米政府系放送局、ラジオ自由アジアに対し、「中国と韓国は制裁を推進することで北朝鮮が不安定になることを望んでいない。北朝鮮が経済的に痛みを感じるに足る制裁は行っても、一定の限度を超えることはない」と悲観的な見方を示した。