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公と民のはざまで 指定管理者制度はいま【9】 途上の制度
- 2009/04/11
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あいまい残す協定
「『見込み以上にもうかった分の半分は返してくれ』と横浜市はこうですからね。じゃあ、赤字が出たらかぶってくれるんですかと言いたい」
飛鳥2など、大型客船が接岸する横浜港のシンボル「大さん橋国際客船ターミナル」(同市中区)。2006年4月から指定管理者となっている共同企業体(JV)の一つ、横浜港振興協会専務理事の永田隆(59)は、怒りを隠しきれない。
市と交わした協定には、駐車場やホールの利用率を上げて年間2%ずつ収入を増やし、その分、市から支払われる指定管理料を2%ずつ減らす内容が盛り込まれている。振興協会側は当初、減額は年間5百万程度と見込んでいた。ところが、営業努力で収益が増えると、指定管理料をめぐる市の減額要求はエスカレート。協議の末、減額幅は抑えられたものの、「それでも年間1千万円を超える指定管理料の減額を強いられている」と永田。「想定外」ならぬ“協定外”とも取れる市の対応に、納得できぬ様子だ。
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「お金」をめぐるトラブルは多い。原因は、協定書に盛り込まれたあいまいな表現にある。よくある文言は、こうだ。
「必要と認められる場合には、別途協議する」
中でも、自治体と指定管理者が分担する施設の修繕費では、10万円や50万円など上限額が設定されているものの、1件だけなのか、累計の金額をなのか不明なことが多いという。
県内のある施設の指定管理者は「自治体は、経年劣化していく部分の修繕費を指定管理料の中に算定していない。放置して破損がひどくなった方が負担しなくて済むので、放置しているケースもある」と打ち明ける。
あいまいさは、金銭以外にもみられる。横浜市救急医療センター(同市中区)では、不祥事が原因で指定管理者が辞退を申し出たが、協定書には辞退に関する規定はなく、関係条例で対処した。千葉県内のレクリエーション施設では、指定管理者の企業が経営危機に陥り、いきなり辞退したが、違約金の規定を盛り込んでおらず、請求は断念している。
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指定管理者制度に詳しい神奈川大教授の大竹弘和(スポーツ政策論)は、「協定書の中でリスク分担を明確にしていないケースが多い。自治体側は、期間中の撤退はできないことや、違約金を支払うことなどを盛り込む必要がある」と指摘する。
ただ、リスクばかりを押し付けては、民間事業者は参入に及び腰になりかねない。大竹は「経営努力でもうけた分は指定管理者がもらえるなど、リターンの部分も明確にし、魅力のある仕組みにすることも重要だ」と話している。
=敬称略