「日本の輸出依存度って、せいぜい15％だけど、これって高いかな？」 「……高いだろう。15％もあるのだから」 「でも他の国と比較すると、日本の輸出依存度は、主要国のなかではアメリカの次に低いよ。なにしろ製造業が衰退しちゃった、あのイギリスよりも低いんだから」
そのわかりやすい典型例は「再審の門戸」で，これを広げすぎると個別は救済されても法的安定性という全体の利益（多くの国民の利益）にならないという。再審で確定判例がすぐにひっくり返っては一般の国民の皆様は裁判所の判断に不審を抱いて軽視するでしょうし，「どうせ再審があるから」と当の裁判官が無責任になる弊害すら想定されます。
ただ，この大局的判断は，優秀なる最高裁調査官（トップは高裁部総括レベルで下々でも留学した特例判事補クラス）が，重箱の隅をタングステン細針でつつく法益にとどまり，経済とか他分野の専門分野にまで至っていないのが限界かと思います。
「内需がダメだから輸出で成長していく、つまり円安のほうが望ましいというけど、内需の成長が抑え込まれているのは、そもそも円安だったからだよ・・・」
に続く話は、まったく意味不明。内需と為替レートは何の関係もない。
「昨年の12月に40兆円規模の景気対策を打つって発表して、きちんと予算を通したから、すでにいろいろな対策が始まっているはずだよ」
40兆円というのはグロスの額で、いわゆる「真水」は1.8兆円。GDPの0.4％以下。
「負債は840兆円もあるけど、同時に資産もでかいんだよ。なにしろ政府の金融資産だけで550兆円近くもあるんだから・・・」
この金融資産は、自由に処分できるわけではない。大部分は年金の積立金だから、これで国債を償還することはできない。
「国債の償還期日が来たら、同額の国債を発行して永遠にロールオーバー（借り換え）していけばいいだけ」
これは政府債務が収束することを前提にしているが、今のようなプライマリーバランスの大幅赤字を放置すると、政府債務は発散する。
「景気対策が順調に行なわれて、名目成長率が上がれば、政府債務のGDP比は勝手に小さくなっていく」
ドーマー条件（名目成長率＞長期金利）を誤解しているようだが、これはプライマリーバランスが均衡しているときの維持可能条件で、今は赤字。短期的な「景気対策」で長期的な「名目成長率」は上がらない。
他にも、ほとんどの記述が間違い。要するに「ネットで調べた」だけで日本経済は理解できないのです。ちゃんとマクロ経済学を勉強しようね。
限界消費性向は収入一単位あたり増加を消費に回す比率、限界輸入性向は収入一単位あたりの増加を輸入でまかなう比率ですよね?
直感的な予想に反して、貿易依存度が低ければ、その変化の影響が直感的予想以上に大きい可能性高い事は理解できました。
しかし、
X＝1/(1-c+d)
で表される乗数は、間違っているのかも知れませんが、輸入に対する効果に思えます。輸出の効果を表す式はあるのでしょうか?それともこの式は輸出の効果算定にも利用できるのでしょうか?
輸入と輸出はリンクしているので、輸出が減れば輸入も減り、先の式でも輸出現象の影響が直感的に感じるレベルより高くなること分かります。
為替、財政支出、減税やその他の政策が変わるので単純化できない事は承知しています。しかし、素人的には輸入が15%、半分の7.5%になったらGDPは貿易乗数効果だけ考慮すれば-15%となる、という話なら分かり易いです。
減税や財政支出がどの程度必要なのか、ある程度モデルで予想可能と思います。しかし、少なくとも私は、国会でそんな議論をしているのを見たことも聞いた事もないです。見えない所では議論されている、と信じたいですが実際はどうなのでしょうね... 国会で議論していなくても少なくとも政府内では議論していると信じたいです。
「景気対策が足りない」「不十分だ」と抽象論しか聞きません。逆に「十分だ」とする具体論も聞きません。間違っていても良いからこのモデルでこの条件の場合はこうだ、という議論にならないと水掛け論だと思います。足の引っ張り合いばかりしている国会では無理かも知れませんが...
マスコミにまかせておけば良いような個人批判で時間を無駄にせず、基礎的なマクロ経済の議論を国会で行って欲しいです。無理なのでしょうか?野党に問題分析能力がなくても、野党は政府に質問すれば、政府が回答してくれる仕組みになっているのだと思うのですが...
違います。これは「貿易依存度の所得への影響」です。
読んだ直後、
「不況だ、危機だって騒いでるけど実は日本って大したことないのね。
マスコミが騒いでいるのに、みんな便乗してるだけなんだわ。
不安になっていて損した」
と思いました。
（あの記事を読んだ大半の日本人はこういう感想を持ったと思う
そういう意味であの長文の記事は成功している）
しかし実はこの「1ドル70円台の日本経済」も1面の見方にすぎないと
分かりました。
やはり日本はやばいらしい・・・。
最近のマクロ経済学では、所得を長期的な潜在GDP(potential output)と短期的なGDPギャップ(detrended output)に分解します。望ましい水準に比べて「需要不足」が生じているとしても、それをマクロ政策で埋めることができるとは限らない。短期的な需要の追加でGDPギャップを埋めることはできるが、高い潜在GDPを長期的に維持することはできない。それを高めるには、労働生産性などを高める規制改革が必要なのです。
参考：http://agora-web.jp/archives/473071.html
であるからして、外需依存度が15%ということから外需依存は低いということではなく、マージナルな部分で見なければなりません。ここ数年間で依存度は数パーセント増加したと思います。この数パーセントが一気に逆戻りするわけです。
おそらく日本の輸出産業は家電や自動車といった贅沢品に支えられており、食糧品やエネルギーや医薬品といった必需品は少ないのです。ですから、どこかの国がクシャミをすれば贅沢品は買い控えますから、日本は風邪をひくのです。
経産省が資料を持っていました。EUは小国同士でグルグル回すので依存度がその分高くなり、輸出と輸入をうまくネッティングしなければなりません。経産省の推計なので信頼できるかわかりませんが、ネッティングの結果では日本も欧米も同水準です。しかし、日本のタイムシリーズを見ると、ここ数年(2001年以降)で上昇していたのがわかります。2001年以降はいわゆる「新ブレトンウッズ体制」で日中の貯蓄過剰が米国に流れ込んでいる構図ですね。
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2007/2007honbun/html/i4110000.html
内需産業については円安とは関係ないと思います。そこらへんの洋服屋が淘汰されていない(実感としては増えている)のが証拠です。個人的には何らかのシュタケルベルク均衡で価格が下がらなくなっているのだと思いますが・・・。
ところで、昔このブログで紹介されていたventuresome economyのmp3があります。20分なのでトランスクリプトが欲しいのですが、勉強熱心なブログ読者の方々、ご存じありませんか？
http://www.voxeu.org/index.php?q=node/3103
・・・すると貿易依存度が１５０％超える香港、シンガポールはほとんど外需の影響を受けず、
貿易依存度が１０％以下のアメリカは世界で一番外需に左右されるという認識で良いのでしょうか？
経済規模は小さいものの日本と同程度の貿易依存度のオーストラリアも日本並に外需の悪影響をもろ被りするのでしょうか？
アメリカやオーストラリアはいざとなれば鎖国して生きていけるだけのでっかい内需と資源があるから世界一安全だ！なんて理論新聞でよく見かけましたがあれ大嘘になるのですかねぇ・・・
情報源として国のホームページからデータを持ってきているとは書いてあります。
ということは、データとしては正しいがデータの見方、使用方法が間違っていたという事でしょうか？
その答えを導き出せるのがマクロ経済学ということですか。
為替と内需が関係ないとは・・・勉強不足の自分にはちょっと理解できませんでした。
最初、私は為替が円高になれば輸入しやすくなって物が安くなり売上高が上がりお金が回り内需が潤うと思いました。
はてなブックマークでも７００以上ついているので、みんな（自分も含めて）納得してブックマークしてるのではないでしょうか？
現在確認したところ、人気新着ニュースで１位をつけていますね。
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi
池田先生のブログよりも明るくて楽しいですよ。
ということではありません。外国貿易乗数は、輸出の増加によってGDPが増える「比率」を表わすものなので、輸出のGDP比が大きければ影響も大きくなります。しかし日本の輸出依存度は、1990年代に9％程度まで下がったのが昨年は16％まで上がっており、2000年代の実質成長率のほぼ半分が輸出によるものです。このように増加率が大きかった分だけ、「輸出バブル」が剥げた影響も大きいわけです。
dY=dX/(1-c+d)
ということでしょうか。
１次的効果（？）ｄＸの部分は、輸出依存度に影響を受けそうな気もするけれど、マージナルなところが効くなら必ずしもそうとはいえないですね。
少なくとも波及効果1/(1-c+d)が大きいことは確かなので、輸出減少の影響が少ないとはいえませんね。
せめて、オンラインで読める標準的なテキストがあればいいんですがね。
彼等輸出産業の消費で食っているのが、下請けなどの企業城下町であり、内需だというのに。
で次には、日本の労働法制を改悪してでも国内に工場などおくな、全部出てけとか、もう正気かと思いました。企業や工場の誘致の為に日本の、いや各国の政府や自治体がどれだけ努力しているか知らないのでしょう。
当該の記事は私も読みましたが、全体として言わんとしている事は、「マスコミで流布されている常識を疑え」と言う事ではないかと思います。
「円高は悪い事だから、財政が破綻しそうだから、だから〜しなければならない」というのは本当なのかと。それらは絶対悪ではなく、それなりにメリットもあるんだから、冷静に考えるべきではないかという呼びかけなんでしょう。
それに一応のデータなり根拠なりを調べて発表している。池田先生のような本職から見れば稚拙で間違いだらけなんでしょうが、これまでの日本では、そのレベルにも達していなかった。
「誰かが〜って言ってたから」・「キャスターがそう言ってたから」全員が右へならえ。
どうも日本のメディアは「責任は追及するが、原因は追及しない」体質ですので、何でも小泉改革のせいとか、みそくそゴチャ混ぜの感情的議論になりがちです。
当該記事の様な事も池田先生のようなプロが、キチンと取りあげて議論していけば、いずれ正しい方向に収斂していくと思いますので、「ったく、素人はしょうがねぇな」とはお思いでしょうが根気よく取りあげて下さい。
ちなみにキャスターやコメンテーターが財政破綻の話題で良くアルゼンチンを例に出す事がありますが、対外債務が多いアルゼンチンと日本とを一緒には出来ないのではないかとは、私も疑問に思っていました。外国から借金している場合と国内から借金している場合の違いは何なのでしょうか？
極端なことを言うと輸出=0、輸入=0の経済鎖国に近い状態の国が仮に輸出が半分になったとして(或いは全くゼロになったとしても良いのですが）元々0に近い状態であったので一体その輸出の変化がGDPにどんな影響を与え得るのかと不思議な感じです。
先生の本文中の
�〕⊇佝耄┐両�さい日本が外需の影響を受けやすいのである。
とコメント中の文
�⇒⊇个�GDP比が大きければ影響も大きくなります。
を見ると、これら�，鉢△鰐世蕕�に矛盾するような気がしますが、私の理解不足でしょうか？（�△諒�が私の感覚に近いです。）
或いは「日本の輸出依存度は・・・昨年は16％まで上がっており・・・」云々とありますので、�，蓮嵳⊇佝耄┐両�さい日本(は他の比率の大きい国に比べれば増しであるがそれでも1990年代の日本に比べれば）外需の影響を受けやすいのである」と言うことなのでしょうか？
そのため通貨まで売られる現象まで引き起こしてるんだと考えていたのですがちがうのですか？
先進国がそろってゼロ金利近くまで引き下げて需要喚起してもどうにもならない状況なので短期的にでも需要ギャップを埋めるためにアメリカは紙幣をばらまいてるんだと思うのですが、日本がそれをやらないで長期的に需要を増やしていく方法をもう少しわかりやすく教えてください。
今回のトヨタなどの業績不振で、GDPが予想以上に低下したのをみると、外国貿易乗数の効果がかなり大きいように見受けられます。自動車は構造が複雑で、国内の関連する業界の裾野が広いからです。
単純に輸出額だけ見たら、民間設備投資なみの金額で8000億弱になっています。2008/10-12は、輸出は減っているのに輸入は減ってない為、「純輸出」は減少しています。
http://moneyzine.jp/article/detail/120205
＞輸入と輸出はリンクしている
上記の言葉はよく森永卓郎氏などが使い「円高は悪くない」として、
「日本は資源を買っているのですから...」などとテレビでよく説いていますが、
( http://www.nsjournal.jp/column/detail.php?id=133008&ct=1 )
中学校の社会で習った知識では"GDPに原材料費は含まれない"のでと記憶しています。
小学生レベルに単純化した例：車1台分として
新日鐵がオーストラリア(輸入:米ドル決済)から鉄鉱石を10万円分購入し精製し15万円でトヨタに販売
GDP5万円
トヨタが15万で買った鉄を車にして200万円でアメリカに販売(輸出)
GDP185万円 で 合計190万円
▲上記が1＄＝100円だっとして突然1＄＝70円になったら...
新日鐵がオーストラリア(輸入:米ドル決済)から鉄鉱石を7万円分購入し精製し12万円でトヨタに販売
GDP5万円(材料費が下がったことをトヨタは知っているので値段交渉させられる)
トヨタが12万で買った鉄を車にして140万でアメリカに販売(輸出)
GDP128万円 で 合計133万円 と、そのまま円高になった分がGDPが落ち込みました...
となるはずなので、森永卓郎が久米宏の隣で説くウンチクがさっぱり理解できないのですが、
それは置いておいて、改めて確認したいのが、
この新日鐵の5万円の経済効果は日本国内のトヨタに販売したので国内消費として考えて良いのですよね？
実際はもっとイロイロで"シート"を作っている会社やら"ホイール"を作っている会社やら、
"ネジ"などいろいろ部品"メーカー"が有りそれぞれが製品を販売してGDPに加算されていると。
なので、トヨタこけたら、皆こけたになっていると。
それとも延鋼板やネジなどは商品とみなされず中間財として考えられているのでしょうか。
世界の景気が減速して売り上げダウン、しかも円高で日本からの部品の調達も困難となると、ダブルの痛手ですね。部品メーカーが日本を脱出してしまわないかが心配です。
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24804931.html
のコメント欄で、池田先生のblogは式や理論ばかりで裏付けデータが無い、
と文句を言っている方達がいます。
もう既に大不況になっていること自体が裏づけのような気がしますが。
彼らが三橋貴明氏と並んで絶賛している廣宮孝信氏の
http://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/10736091.html
で池田先生の説を否定しています。こちらの意見も伺ってみたいです。
日銀のこちらの統計もおもしろいです。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/sk/data/sk4.pdf
乗用車も家電も含めた個人消費は全然伸びていないのに製造業の設備投資は伸びている。。
すると・・・
1990年代から2007年にかけて輸出依存度が跳ね上がった率 と 元の輸出依存度の低さ が大きいほど影響が大きいということですか・・・
＞輸出のGDP比が大きいと、その減少の影響が大きいことは明らかですが、その波及効果は貿易依存度が小さいほうが大きいのです。生産の国内依存度が高いからです。したがって全体としての効果は、どっちが大きいかによって違います。
・・・どこが分岐点になるかは知りませんが下手な詐欺師が知ったら分岐点を恣意的に悪用してＡ国はどっちにしろダメだ！Ｂ国はどっちにしろ問題ない！と強弁出来かねませんねそれですと（苦笑）
今回問題の三橋先生はソース明示してるから恣意的にしようがないですが某オオマエ先生あたりだとほんとに悪用しかねない（苦笑）
まぁ池田先生みたいに本職なら見破れるのでしょうが・・・
ちなみにアメリカ、イギリス、ドイツ、スイス、アイスランド、ブラジル、シンガポール・・・辺りですかね。ネトウヨ得意の特アが絡まない＆世界同時不況の影響が判りやすく出そうな国は。
これらの国の実際の数値を式に代入するとどんな結果が出るのでしょうか？
ソースとか実際の結果見てみたいなとか思うわけです一般大衆の端くれとしては
私もマクロ経済を勉強してみたいものですが、池田先生などが政治家などにも（笑）分かりやすく理解できるような1冊の本にして発売してくれると非常に勉強しやすいと思います。
あと、未だに腑に落ちないのが
>逆にいうと、輸出が減った場合のマイナスの影響も大きい。輸出産業の部品を国内で調達する比率が高いからだ。
の部分で、
これってこの式から本当に導けることなんですかね？？輸出産業の部品が完成品に占める額としてそんなに大きなものでなかったとしたら、貿易依存度が小さくても関係ないといえると思うのですが。。
＞輸出のGDP比が大きいと、その減少の影響が大きいことは明らかですが、その波及効果は貿易依存度が小さいほうが大きいのです。生産の国内依存度が高いからです。したがって全体としての効果は、どっちが大きいかによって違います。
「小さいほうが大きい」というのは語弊を招いているようですが、「小さくても大きくなりえる」ということです。たとえば香港等の法人税は低く抑えられていますから、取引でそこを仲介するケースもあります。こうしたケースでは輸出も輸入もしますが、あんな狭い国にあるのはペーパーカンパニーであって輸出入による雇用はそこまで大きくないはずです。一方、日本のケースでは完全に輸出で雇用を創出しています。おそらく６０００万人の雇用の大きな部分を占めています。
ちなみに、GDPの実質3%減ですが、個人消費はそこまで落ち込んでいません。資源価格暴落の関係で輸入の実質成長率がプラスになっていること(名目ではマイナス成長)と、輸出が「きわめて」大きく落ち込んでいること、それに伴って「設備投資」が控えられていることが大きな要因です。というか、それだけで殆ど説明できます。このGDPは三面等価のナントカにしたがって、雇用者報酬とナントカ利潤に分配されるわけですが、GDPが一気に落ち込んでいる以上、どっちかを削らないといけないわけですわ。
輸出の落ち込みによるGDPの影響をブログ読者にわかりやすいように、IS-LMに落とし込んだのが今回の記事です。それでは財政出動は効果的なのかと言えば、次の記事を読めばいいわけです。財政出動には既存企業の延命を図るだけで成長産業への移行を妨げるのであって、投資減税による自助努力が望ましいというのは一貫した主張です。ただし、資金逼迫が続いている現状では、非リフレ的な意味での資金供給が必要かと思います。これはFRBもその立場で、インタゲはまだ実施されていません。
月刊誌の記事における主張の妥当性はともかく、
>X＝1/(1-c+d)
という、貴殿が記事に反論するために示した乗数の式から言えるインプリケーションは、
・限界輸入性向が小さければ（あるいは限界消費性向が大きければ）乗数が大きくなる
という点のみであり、
>ここで貿易依存度が小さいとdが小さくなるので、Xは大きくなる。
ですとか、
>輸出のGDP比が大きいと、その減少の影響が大きいことは明らかですが、その波及効果は貿易依存度が小さいほうが大きいのです。
という主張は、モデルから導かれる結論としては相当の論理の飛躍ではないでしょうか。
たしかに、dが小さければXは大きくなります。
しかしながら、ある国の貿易依存度（X+M/Y）、あるいは輸出のGDP比（X/Y：輸出依存度または平均輸出性向）が小さいと、「限界」輸入性向たる「d」まで小さくなる、などという命題は、少なくとも提示されたモデルからは到底導けない結論であると思います。
ここを見ると、外需の減少程には、民間の支出が減ってない気がするのですが。
もちろん設備投資は減少してますけど、内需はほぼ横這い。
つまり外需がはげ落ちても、内需が変化していないように思えます。
数字の見方が違うのでしょうか？
ど素人ですのでご教唆ください
ΔY＝X*ΔE
だから、Xの変化とΔEの変化はわけて考えないと混乱します。
輸出をX、輸入をM、GDPをY、消費をc(Y-T)、投資をIとすると
Y=c(Y-T)+I+X-M
ここで仮に M=M0+dY の増加関数とする。
M0は定数で、dは0〜1の限界輸入性向。
以上の２式をYについて解くと
Y={-cT+I+X-M0}/(1-c+d)
ここで内需IがﾃﾞﾙﾀI増加すると、ﾃﾞﾙﾀY=ﾃﾞﾙﾀI/(1-c+d)
で純輸出X-Mは{-d/(1-c+d)}*ﾃﾞﾙﾀIだけ減少する。
また外需XがﾃﾞﾙﾀX増加すると、ﾃﾞﾙﾀY=ﾃﾞﾙﾀX/(1-c+d)
で純輸出は、{(1-c)/(1-c+d)}*ﾃﾞﾙﾀXだけ増加する。
こうしたことから
外需主導の場合 Yが増加すると、純輸出増加
Yが減少すると、純輸出減少
内需主導なら Yが増加すると、純輸出は減少
Yが減少すると、純輸出は増加
と内外需主導傾向のリトマス試験紙となる。
これからすると日本は現在まさに外需主導と言える。
XやMそのもののY比率の論議とは違うということのようですね。
以上吉川著「マクロ経済学」からぱくりました。
ﾃﾞﾙﾀ表示をしたかったのですが、特殊文字の変換機能のPC操作不知でありました。
長文で失礼しました。
ただ、私は客観的事実から外需は確かに内需に比べるとGDP比は少ないですが、GDP成長率で見ると、外需が明らかに伸びているわけで、戦後最長の景気拡大は外需頼みだったわけなのは誰でもわかると思うんです。
で、外需が冷え込んだから景気が落ち込んだというのも非常にわかり安く、誰でもこのあたりは納得しているんではないでしょうか。
しかしそれを数式にすると混乱してしまうというところに、日本人は数学が弱いなぁ(私も含めて)と思ってしまうのであります（笑）
不景気やけど、経済の学者さんや、知識人の連中は「どうすりゃええ！」とおっしゃるんやろか？
ただ難しい方程式とか、数字のマジックに踊ってるだけとちゃう？
最後はええも悪いも、世間的に結果が出たら「無理やりその答え合わせ」のような方程式作って…どうや！！ってなこと言われても・・・
その前に、対策方法教えてよ。
＞個人消費はそこまで落ち込んでいません。
このへんの指標は遅行指数ですからね。すでに悪くなる兆しは見え始めています。
金利の影響を考えない経済学などと言うものは無いでしょうから、金利をどんなに下げても少しもお金が回らない状況下で過去の経済学は有益たり得るのでしょうか？
もっとはっきり言えば現在の状況(需要が消失）でこうやれば景気が回復すると言うことを具体的にかつ責任を持って提言できる方はいるのでしょうか？
私の書き方が悪く、問題提起がうまく伝わっていないようですので、再度コメントさせて頂きます。
多くの読者は、「X＝1/(1-c+d)」という式から
>「輸出のGDP比が小さいからといって、（限界輸入性向dが小さければ）その影響も小さいとは限らない」（主張１）
という主張のみならず、
>「貿易依存度が小さいとdが小さくなる」（主張２）
という主張まで果たして言えるのか？言えないのか？という点で混乱しているように見受けました。
そこで私は、
・>X＝1/(1-c+d)
という乗数の式を何時間ながめても、主張２を証明することは出来ない、という点を明確にしようとコメントさせて頂きました。（主張１については異論ありません）
主張２の妥当性につきましては、同主張が如何なる理論に基づく一般的な帰結なのか、今でもブラックボックスにして議論が展開されておられるため、判断のしようがありません
しかしながら、「限界輸入性向たるdが輸出依存度（または貿易依存度）に応じて決まる（換言すればdが輸出（貿易）依存度の関数である）」というような事をstylized factとして書いているオープン・マクロの教科書が本当にあるのか、あるいはその様な事が一般的に実証されているのか、若干疑問に思いました。
ここで使われている数学は一次方程式で中学生のレベルですから、商売を営んでいるようでしたら生涯教育として数学を再勉強してはいかがでしょうか。商売でもこのくらいの数学は使うはずです。損益分岐点の計算も一次方程式レベルですし、小学生がやっている鶴亀算も一次方程式です。
松本孝行さん
ＧＤＰ＝内需＋外需とだけ覚えておけばそれで済みます。ＧＤＰが供給側、内需＋外需が需要側です。日本経済の課題として、内需のうち外需で支えられている面が強いのではないかと指摘され続けています。日本は自動車とか家電とかを作って外国にモノを売ってカネを稼ぐのだとすれば、モノが外国で売れなくなったら稼ぎがなくなります。モノを作ってきた人の稼ぎがなくなれば、日本の中でもモノが売れなくなります。松本さんはこの流れを理解しているようですから、それで十分だと思います。
nabajoさんが納得してくださるかわかりませんが、その処方箋は色々な学者や色々なエコノミストから色々挙げられています。現段階は、その正当性が争われているわけです。数学はその正当性を争う道具であって、言葉での説明よりも「論理的に明快」だから使われているだけです。ちなみに、池田さんのスタンスとしては、欲しいモノを作ればモノを売れるのであって、欲しいモノを作れるようにしなければならないというスタンスだと思います。政府がモノを買うことによって内需を支えるという考えが日本では強いですが、政府は必ずしも欲しいモノを作らないので失業の解消にならず、むしろ投資減税によって作るモノはそれぞれ決めさせることがよいと何回も説いています。また、欲しいモノを作れないのに高いカネを会社から頂戴している中高年は減給して、それで浮いたカネで雇用を支えるべしとも説いています。
feh_2400さん
麻生さんがリーマンショック前に述べられたと思います。しかし、現状を複数の社会人に聞いてみますと、銀行は貸しはがし、企業は短期資金が調達できないので投資は差し控えている状況であるようです。
s695さん
それはその通りですね。まずは雇用問題と資金調達問題の問題が急務であって、政変はその次だと思います。
単純化のために、日本とドイツがＧＤＰが同じ、ドイツの輸出依存度（３０％）とが限界輸入性向（０．３）が日本（１５％、０．１５）の二倍とし、限界消費性向（０．６）は同じだとします。
外需（たとえばアメリカ）の減少があった場合、第一段階では、ドイツは日本の２倍のＧＤＰが減少します。それを２��Ｘ、��Ｘになります。次の段階ではその国民所得の減少により、消費と輸入が減ります。独日それぞれ貿易乗数が１．４３、１．８２なので、国民所得の減少分は、２．８３��Ｘと１．８２��Ｘとなります。よって、第二段階での内需の減少分でもドイツが多くなるはずです。
したがって、輸出入がほぼ均衡している限り、貿易依存度が大きい国の方が、外需減少分による国民所得の減少が大きいというのは少なくとも短期的には間違ってはいないのではないでしょうか？
のではなく、普通は「貿易依存度」を輸出＝輸入のGDP比と考えているので、欧州のように域内の相互依存が強い国では、輸出による所得の増加が輸入で他国に「もれる」という単純な話です。
限界輸入性向を一定にしたら、輸出比率が高いほうが影響が大きくなるのは当たり前。経験的にも、輸出比率の高い国は限界輸入性向も高いので、大国のほうが輸出によるGDPの「変化率」が大きいのです。
前回の景気回復期（２００２−２００７）でＧＤＰ成長に占める輸出の寄与率は６０％と政府の白書はいってます。似非経済評論家はそんなにない、純輸出（輸出ー輸入）で計算すべきだと主張しています。ＧＤＰは付加価値を集計したものであるから、輸出の寄与度を計算する場合も当然、輸出品の付加価値の総計で計るべきと思うが、その統計はない。日本の場合、輸出品の付加価値は極めて高いので、便宜的に輸出額で計算しても大差はないと思いますが、如何でしょうか。
先生のブログにはじめて書き込みます。
私はいわゆる氷河期世代ですが、
先生の意見はいちいち腑に落ちます。
私は最初はいわゆるブラック企業に入社しましたが、その後運よくITバブル・自動車バブルに乗っかり、今では一応大手といわれる会社で正社員をやっています。
なので先生の人材の流動性を上げる提案についてはまったく異論がありません。
また、いつリストラされてもいいように収入がなくとも5年は暮らしていけるだけの内部留保は確保しています。
かえって、今回の金融危機でいわゆるゾンビの方々がさっさと成仏してくださると今後の計画も立てやすく非常に助かります。
最近、コンビニなどへ行くと、松下幸之助氏や新渡戸稲造の武士道などの本がおいてあるのを見かけます。
おそらく、このところの不況を打破するため過去の人物の知恵にあやかろうという思考停止した方々（ゾンビ）の需要を当て込んだものと思いますが、右肩上がりの時代の成功者を参考にしたってこのご時勢あてになるものかよ、と嗤ってしまいます。
取り留めのない文章になりましたが、今後も専門家のご意見、よろしくお願いいたします。
（訂正）
「輸出比率（EX/Y）の高い国は限界輸入性向も高い」との主張を繰り返しされておられますが、前にも述べさせて頂きましたとおり、言葉を替えれば、この主張は「平均輸出性向（EX/Y）の高い国は限界輸入性向も★高い★」という主張と紙一重であり、そうであれば、かなり理論的には違和感を感じます。
非常に興味深いトピックですので、よろしければ、「輸出比率の高い国は限界輸入性向も高い」という事を示す実証分析のソース、またはそのような記述が掲載されている国際マクロの教科書をご教示頂けますか？
よろしくお願いいたします。
ＶＯＩＣＥ読者の大部分である一般国民は日本の貿易依存度が他国に比して低いことも知らないでしょうし、国債の性質も単純に国の借金としてとらえておらず国債所有者について考えないので、それだけ指摘しただけでも意味がないとは言えないと思います。
ただ、大本営発表的な「日本経済は大丈夫、恐れるに足らない」的な楽観論と裁量的財政政策のネガディブな影響をあえて捨象して書いてある面ではきわめて有害な論議ですね。
いずれにせよ、この種の一方的な経済評論に対して自分の頭で考えられるだけの知識と柔軟な視点を養成しておきたいです。このブログはその面で大変に役立っております。
ＥＵ諸国
輸出、輸入ＧＤＰ比率 大、限界輸入性向 大
経済大国の日本
X/Y、M/Y 小、d 小
これからすれば、輸出の減少分 -��X のYへの影響は
-��Y={1/(1-c+d)}＊��x
であって、
ｄが小で（なお多分ｃも小）の日本では、巡航速度で走る経済に壁にぶち当たるようなショックとして大だったという現実とも符合しているように思えます。
今回のｽﾚｯﾄﾞで外需とか内需とかの意味を少しばかり勉強させていただいた気がしております。
国民所得≡消費＋投資＋政府支出＋経常収支
ですから、
経常収支÷国民所得
つまり
（輸出額−輸入額）÷ＧＮＰ
ならまだ意味がわかりますが、貿易依存度のほうは、
（輸出額＋輸入額）÷ＧＮＰ
なので、意味不明です。
輸出依存度＝輸出額÷ＧＮＰ
にしても、対外売上高を総付加価値で割る、という奇妙なことになっているので、これを操作するとすぐに「ちょっとわかりにくい」議論が出てくるのだと思います。
経済は時間発展する過程ですから、それを、無時間的な概念に置き換えて議論しようとする段階で、無理が生じるように感じます。「所得」「需要」「供給」「輸出額」「輸入額」は、すべて時間を区切って集計した概念ですから、無時間的概念です。
たとえば時間発展する過程の例として人間を考えてください。一年間に一人の人間の口から放り込まれる食べ物の量を「輸入」、お尻などから出てくるさまざまの排出物の量を「輸出」と命名し、体内で生成される細胞の重さを「総生産」、体内で廃棄される細胞の重さを「消費」と呼ぶことにしましょう。すると、
体重の変化＝作られる細胞−廃棄される細胞＋食べたもの−出たもの
という式を導くことが出来ます。体重の変化を「投資」（古典派的に「蓄積」でもいいですが）と呼ぶと、上の式は、
投資＝総生産−消費＋輸入−輸出
となります。適当に移項すると、
総生産＝消費＋投資＋（輸出−輸入）
となりますが、これは最初の所得の定義式と同じものです。
もしこの式で、人間の健康状態を議論し、病気の治療法を云々する医者がいれば、池田さんも読者のみなさんも、決して病気になっても診察してもらわないでしょう。
測らないといけないのは、体温や脈や心電図や脳波であって、こんなものに依存して議論する医者は、クルクルパーだといわざるを得ません。マクロ経済学というものは、そういうことをしているのと、あまり変わらないのではないか、というのが、私の学生時代からの疑問点なのです。
この素朴な疑問を解消していただけませんでしょうか？
これはケインズ的な「どマクロ」の話だ、という批判は予想してました。ほとんど同語反復みたいな話をしているだけで、メカニズムについては何も語っていません。その程度の話で、深い意味はありません。
経済学に馴染みのない方に無益な誤解を与えないよう、あえて同じ土俵でコメントしますと、
>体重の変化＝作られる細胞−廃棄される細胞＋食べたもの−出たもの
という恒等式または均衡条件式のみを眺めて議論している経済学者なんていないと思います。
むしろ、作られる細胞、廃棄される細胞、あるいは排泄されるものの量を決める決定要因は何か、時間を通じて量が減ったり増えたりするのは何故か、決定要因間で如何なる相互作用が存在するか、人体にとって望ましくない外的なショックが生じた際、ダメージを和らげる為に如何なる処置を施すのが望ましいか（望ましくないのか）、そういうことを議論することがマクロ経済学あるいはマクロ経済学のモデルを用いて議論をすることの目的だと思います。
体温や脈や心電図や脳波に該当する、注視すべき「要因」は分析の目的に応じて違います。
ときには生産性だったり、利子率だったり、人々の将来に対する期待や資産だったり、為替レートだったり、失業率や稼働率だったり、あるいは銀行や企業のバランスシートや貨幣の流通速度であったりします。
医療処置には効能のみならず副作用があるなかで、医者の間でも処置の方法論や「何を犠牲にすべきか」を巡り議論が分かれることもあります。
短期的/対処療法的な問題解決を提案する医者がいれば、より長期的な展望にたった解決策を提案する医者もいます。
マクロ経済学でも、同様の理由で、時として学者の間でも意見が分かれることもあります。
医学同様に、議論はデータに基づいて行われなければなりませんし、データの動きが既存の理論と整合的でない場合、理論に欠陥がないか再度探求する必要もあります。
したがいまして、マクロ経済学とは恒等式だけを眺めて数字のお遊びをすること、というのは、かなり誤解を発言かと思います。
もちろん、医学同様に、未だ解明されていないメカニズム、学問としての限界も多々あります。
また、医者が喫煙やカロリー過多の食生活をやめるよう患者に提言しても、それを実践するかは患者次第です。提言を聞かない患者が病気になったからといって、その責を医学に帰するのはお門違いです。
同様に、経済学者が政治家に望ましい政策／やってはいけない政策を提言しても、その後（選挙を意識する）政治家が経済学者の言うとおりに行動するか否かは全く別問題です。
したがって、現実にマクロ経済学がある問題を解決できないからといって、その責任を経済学に帰すべきでない場合もあります。
以上、勝手気ままに書いてしまいましたが、外野から失礼いたしました。
それはさておき、私は
・「日米においては「輸出／GDP」が低いという経験的事実」には同意しますし、
・「輸出比率が低いからといって輸出のショックが経済に与える影響が小さいとは限らない」という主張にも同意しますが、
・「輸出比率が低い国では限界輸入性向も低い」という池田先生の主張を裏付ける理論・経験的事実が本当に存在するか、まだ先生より納得のいくご回答を頂けておりません。
（私が無知なだけで、そういう事実が一般的に観察・報告されているのかもしれませんし、その命題を導く理論が存在するのかもしれません。純粋な知的好奇心から質問しております）
先生が批判されている月刊誌の主張には到底同意できない点もあります。
しかし、仮に批判の論理展開にも脆弱性があるならば、結果として、その批判の価値も危うくなってしまいます。
もしも宜しければ、池田先生、ご回答のほど、お願いします。
『マクロ経済学の教科書』の類に書いてあることは、こういったマクロ集計量の相互関係ではないだろうか、と思います。この認識は不適切でしょうか？
ただ、揶揄するような表現は不適切であったと存じます。私の永年の疑問の要点をもう一度考えてみましたところ、
「人々の複雑な相互作用の時間発展によって形成される経済を、その巨大な全体に関し、１年といった長い期間を区切って集計した量を、考察の対象とすることは、果たして合理的な方法なのか」
という点であろうと思い至りました。これについては、どうでしょうか。
元の『Voice』の記事は「どマクロ」のくだらない議論の見本だったので、そのレベルで理論的な間違いを指摘しただけです。経験的には、輸出比率が2000年代に急速に上がったことのほうが問題でしょう。それは前の記事でも書いたし、当たり前だから書かなかったんですが、乗数効果だけ書いたのは混乱のもとでしたね。
元記事の「政府が有効需要を追加すればすべてOK」みたいな話は、いまだに広く残っている民間信仰なので、きちんと議論したほうがいいかもしれない。
これは別に日本に限った話ではないと思いますが。世界中がバブルに浮かれていたのだから、内需主導で成長した国の大半は内需バブル、外需主導で成長した国の大半は外需バブルですよ。
ちなみに、上の方で2002〜2007年の日本の経済成長の輸出寄与率が60%と書かれている方がおられますが、同じ時期について計算するとシンガポールも輸出寄与率は60%かそれ以上、ドイツに至っては約80%に達しますよ。シンガポールは香港と並ぶアジアの金融センターですから、内需の中身も金融バブルっぽいですけどね。
実際、シンガポールは2002〜2007年の間平均で7〜8%の高成長を誇っていたのが、2008年はわずかなプラス、2009年予測値は-5〜-2%という落ち込みぶりです。
>人々の複雑な相互作用の時間発展によって形成される経済を、その巨大な全体に関し、１年といった長い期間を区切って集計した量を、考察の対象とすることは、果たして合理的な方法なのか
チャレンジングなお題ですね。
池田先生のブログで第三者同士が勝手にやりとりさせて頂くことは失礼かもしれませんが、無益な議論ではないと思いますので、私見を述べさせて頂きます。
まず、1年という期間を区切る合理性についてですが、これは経済学、とりわけマクロ経済学の理論上の要請・必然性というよりも、会計上、統計上、フローの変数を観測・活用するためには期間を定義する必要があり、その為に便宜的に1年あるいは四半期といった単位で統計が公表されており、それを用いて議論しているにすぎない、という理解です。
（もちろん、毎月・毎日報告されている統計もありますし、分析の目的によっては、5年、10年という単位でデータを集計しなおして分析をする場合もあると思います。）
理論が教えてくれるのは変数間の相互依存関係であったり、ショックが生じたときの各変数の変化の方向性、大凡の（理論的な）規模であり、例えばその波及効果が「いつ」終了するか、という事を正確に予測することは、現在主流になりつつある動学的なマクロ経済学理論をもってしても、極めて困難です。
政府が想定していない新たな外的ショックが起こるかもしれませんし、政府の政策に人々が反応する際、予測に用いた過去のデータに基づくパラメータどおり、人々が行動・反応してくれるとは限らない、といった理由も考えられます。
医学においても、特定診療行為の治療に効果があることは分かっても、患者が何月何日に完治するのか、これを正確に予測することは難しいと思います。
つぎに、個々人の意思決定やそれらの相互作用の結果としての、巨大な全体を考察の対象とすることについての合理性ですが、これも、まさしく医学のアナロジーが適用可能かと思います。
（私は医者ではありませんが）、医学でも、DNA、あるいは例えば脳の細胞、神経といったミクロのレベルのメカニズムについて、あるいは、そうしたミクロのメカニズムと「体調」あるいは「特定の疾病」との間のリンケージについては、「純粋科学」としてまだまだ解明されていない部分があると思います。
しかしながら、その１段階上の、各種臓器や脳の特定部位の特性、あるいはそれら部位の機能と特定疾患との間の関係については、解明されていることが多々あると思います。
もちろん体質や遺伝により、患者間には個体差がありますが、これらは臨床試験を経て、様々な仮説が統計的な方法論に検証され、そうしたメカニズムに関する一般的な知見は時代とともに厚みと信頼性が増し、実際の治療行為にも応用可能になってきた、というのが医学の歴史なのでは、とも思います。
（以下、続く）
ここで、純粋科学としてDNAや脳神経の全てのメカニズムが分かっていないという理由、あるいは患者には個体差があるという理由で、
「（集合体としての）人体の特定部位の特性やメカニズム、相互作用に関する医学的な知見や、臨床実験という統計的な集計値に基づく方法論は全て放棄すべきだ」
などと主張する医者はいないと思います。
「ミクロレベルの全てのメカニズムが解明されない限り、その他のマクロレベルの知見は封印しよう」という方針を貫くことで患者の生命が絶たれるのであれば、その機会費用ははかりしれません。
マクロ経済学でも、数十年前から、「マクロ経済学はミクロ的な基礎がない」との批判・反省に基づき、ミクロ経済学に基づくマクロ経済学、あるいはそれに不随して動学的なマクロ経済学を構築する努力がなされていると理解していますが、それはそれで、望ましいことだと思います。
他方、上記で述べたとおり、例えミクロ的な基礎に基づく動学的な理論やシミュレーション・モデルを用いたとしても、外的なショックに対し、各変数が「実際問題いつ」「どの程度のインパクトで」反応するかを正確に予測することは、今日でも極めて困難です。
また、ミクロ的な基礎が重視されているとはいえ、マクロ的に観察される相互関係を事後的に説明したり、古くから行われてきた論争につき、特定の学派を擁護する為のモデルを開発することが大きな動機であったりする、といったケースも散見されます。
こうした流れの結果として、もちろん新たにコンセンサスに至った部分もあります。
他方、シンプルなマクロモデルの次元で行われていた論争が、ミクロの次元にリングを移した後も進学論争のように続けられている部分もあるように思えます。
したがって、シンプルなマクロモデルで議論すべきか、ミクロ的基礎に基づくマクロモデルに基づき議論すべきかということに関する「合理性」は、複雑なモデルで議論することの費用対効果、あるいは議論する相手によっても異なる、と思います。
そもそも経済モデルを使うことの最大の目的は、決して世の中の森羅万象を正確に予知・再現することではなく、分析に必要とされる物事の本質だけに着目し、問題の原因を解明し、解決策を模索する事であると理解しております。
胃潰瘍や骨折の治療をする際に、DNAや細胞のメカニズムに立ち返って医者同士が、あるいは医者と患者と議論する合理性は低い（または費用対効果が余りにも低い）のと同じかもしれません。
最近は過去の反省への反動からか、単純なマクロモデルを過度に馬鹿にする自虐的な傾向が特にマクロ経済学において見られるような印象を持っていますが、個人的には、これは残念なことだと思っています。
とりわけ、特定の外的なショックの影響の本質に関する（財・貨幣・債権市場という意味でのマクロ経済学の）一般均衡的な思考実験をしたい時、あるいは政策担当者や国民に対して政策の効果や副作用の本質を説明する時に、「複雑なミクロ的基礎に基づくモデルを用いる方が常に議論の限界生産力が高く望ましい」、などということは決してなく、単純だが本質をついたシンプルなモデルを用いた方が適切・親切という場合も多々あると思います。
また、現実のデータが理論のどの部分と整合的でないかということを発見するためにも、ベンチマーキング一般均衡的な思考実験が極めて有意義なこともあろうかと思います。
理論と整合的でない部分を特定したうえで、初めて産業組織論、公共経済学、労働経済学、国際経済学的な視点で考えてみたり、というプロセスに「正しく」移ることが可能となることもあると考えている為です。
特に学生に対して、シンプルすぎるという理由から、ベンチマークとしてのマクロ経済学的な意味での一般均衡的思考実験の訓練が正しくなされなければ、応用ミクロ分野のマクロ経済学への正しい応用も出来なくなると考えます。
もちろん、純粋学問として、ミクロ的基礎に基づく動学的なマクロモデルを構築・発展させること、あるいは応用ミクロ分野的思考でマクロの問題を考えること自体に意義を唱えているわけではありません。
以上、回答になっていますでしょうか。
自分自身の頭の整理にもなりました。
長文になり、失礼いたしました。
私の場合、ミクロは、前提があまりにとんでもないように思って、全く頭に入りませんでしたが（理由は『生きるための経済学』をご参照ください）、マクロもまた、ある程度はわかった気になるのですが、途中で騙された感じがしました。
だまされた感じがしないで理解できるのが、多部門モデルだったので、これは勉強することが可能でした。
それでいろいろ考えた挙句、どうも、マクロの場合は運動を対象として設定しているので最初のうちは理解可能なのですが、途中で運動として生成されているものを、時間的に集計してしまうことに第一段階の問題があり、さらにそれを全経済で集計する、という第二段階の問題があると考えました。この二回の集計によって、「運動」が固定した何か（「実体」？）へと頭の中で変更されてしまうように思うのです。
さて、それに対してどうしたらよいかですが、私は「イノベーション」を主軸に置いて考えたいと思います。イノベーションとは、「いま現在は存在しないものを創出すること」だと考えています。
問題は、「いま存在しないしないものを創出すること」とは、一体何なのか、何がそれを可能にするのか、がよくわからない、ということです。それで私はポラニーに倣ってこれを「暗黙の次元」に属するものとして、前提することにして、「それは何か」という問いを発するのをやめました。その代わりに、「何がそれを阻害するのか」という問いを立てて、それを取り除く方法を考えたいと思うのです。（このあたりも詳細は『生きるための経済学』をごらんください）
そうやって考えているうちに、レーン＝メイドナーモデルが、そういった「マクロ」経済学の一例なのではないか、と考えるようになった次第です。
大変な時間を割いてアップしてくださったことに、改めて感謝申し上げます。
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