「夕暮れ診療」経営難に光 横手市立大森病院が赤字脱却

「夕暮れ診療」で患者を診察する当直の医師
 秋田県横手市大森町の市立大森病院で導入している「夕暮れ診療」が好評だ。日中と同じ診療費で夕方以降に受診可能とあって、勤め人や学生らを中心に外来患者が増加。全国的に自治体病院が経営難に直面する中、赤字から脱却する原動力にもなった。病院側は「全国的にも珍しい医療サービス。これからも地域のニーズに応えたい」と意気込んでいる。

 夕暮れ診療は平日午後5―7時に受け付けを済ませると、当日に受診できる。当直医1人に加え、内科と外科の医師が毎日1人、交代制でサポート。臨床検査技師や放射線技師ら医療スタッフのほか、院外の調剤薬局も対応している。

 診療費も割高な時間外ではなく、通常の費用が適用される。はしかの予防接種で訪れた高校2年の男子生徒(17)は「陸上部に入っているため、脚のけがでよく来院する。夜でも診てもらえるので助かる」と話す。

 夕暮れ診療は1997年に始まった。当時は外来患者が少なく、病院は約3億円の累積赤字を抱えていた。前年に就任した小野剛院長(51)が、患者の受け入れ拡大を目指して実施に踏み切った結果、仕事帰りに子どもを連れてくるなど、日中に多い高齢者以外の患者が増えたという。

 2007年度の外来患者は6万9026人。1割以上の8161人が夕暮れ診療で、1日平均約33人だった。

 2000年度まで赤字経営が続いたが、患者の増加で01年度から黒字に転じた。07年度は夕暮れ診療だけで1300万円、全体で2200万円の収益を確保した。現在は累積赤字が解消され、医師の増員も果たした。

 軽症患者が夜間などに救急外来に駆け込み、各地の医療機関を悩ませている「コンビニ受診」も、夕暮れ診療の開始後は目立って減ったという。

 経営立て直しに成功した大森病院には全国から視察が相次ぎ、秋田県内では同様の診療体制を導入する動きが出ている。大館市立扇田病院は昨年10月、「夕やけ診療」としてスタートさせ、週3日実施している。

 小野院長は「病院全体に危機感があったため、夕暮れ診療が実現できた。職員の考えや組織を時代に沿った形で変革することが大切だ」と強調している。

[横手市立大森病院] 1959年に秋田県大森町立大森病院として開設され、2005年の市町村合併で現名称に変更した。内科、整形外科、小児科など9診療科があり、泌尿器科は休止中。常勤医11人、研修医1人。女性専用外来の診療時間も設けている。敷地内には介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどもある。
2009年04月12日日曜日

秋田

社会



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