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クローズアップ2009:毎日新聞全国世論調査 「麻生VS小沢」攻守逆転

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 ◇支持率は伸び悩み、「解散」決め手欠く

 毎日新聞が10、11日実施した全国世論調査(電話)で内閣支持率が24%まで回復し、麻生太郎首相は当面の政権運営に自信を取り戻しつつある。一方、小沢一郎代表の続投を決めた民主党は有権者の「小沢離れ」に悩み、西松建設の違法献金事件を境とした攻守逆転の構図がさらに鮮明となった。ただ、過去最大規模の追加経済対策を発表した政府・与党側としては期待したほど支持率が伸びず、衆院解散・総選挙に打って出る決め手を欠いたまま。今後も「不人気党首」同士の駆け引きが続きそうだ。【中村篤志、上野央絵】

 自民党の細田博之幹事長は「追加対策が評価された。定額給付金支給や高速道路の割引も国民に好評なのだろう」と世論調査結果を歓迎した。しかし「大盤振る舞い」の追加対策を発表した直後だけに、支持率回復への与党側の期待感は大きく、24%と聞いた公明党幹部は「えっ、これだけ?」と問い返した。

 内閣支持率が回復し始めた3月以降、自民党内では古賀誠選対委員長らを中心に、民主党の混乱に乗じた早期解散論が浮上。麻生首相も補正成立前の衆院解散に言及して民主党をけん制するなど、政局の主導権を握ろうと攻勢に出ている。

 しかし、2割台の内閣支持率は依然、危険水域。今回の調査でいつ衆院解散すべきかを聞いたところ「補正予算成立後」が47%と最多。次いで多かったのは「直ちに」の32%。「任期いっぱいまで」の政権運営を期待する声は16%にとどまり、経済対策への期待は必ずしも首相の人気につながっていない。

 一方で小沢氏への批判が加速していることから、解散を先送りして政権の実績を重ねるほど有利になるとの「自信」も与党内に芽生え始めた。菅義偉選対副委員長は11日、横浜市内の会合で「どんなことをしても(補正予算を)成立させ、国民に安心感を与えるべきだ」と強調した。

 補正予算案と関連法案の成立を確実にするには6月3日までの国会会期の延長を検討せざるを得ない。7月の東京都議選前の衆院選には公明党が反対。首相としては7月以降の選挙をにらんで支持率を回復軌道に乗せ続けるしかない。

 自民党支持層の内閣支持率は6割を超えたものの、無党派層の支持率は1割強どまり。与党内には「あれだけ民主党が傷ついているのに、これしか上がらない」(閣僚経験者)との失望感もくすぶる。

 ◇「辞任決断」望む声も--民主

 「衆院選で民主党が勝つためにも小沢代表は辞めるべきだ」--。全国世論調査の結果は、民主党による政権交代を期待する層の間にこんな声が高まっていることを示した。同党の対応と世論のギャップは広がっており、衆院選前の代表辞任を期待する声が党内でも強まるのは必至。しかし、仮に小沢代表が辞任しても後任選びで党内対立が深まる懸念もあり、執行部は厳しい対応を迫られそうだ。

 「風当たりの厳しさは真摯(しんし)に受け止める必要がある」。鳩山由紀夫幹事長は毎日新聞の取材にこう語った。

 党内は「政権交代可能かどうかで進退を判断する」としている小沢氏の決断を見守る意見が大勢。小宮山洋子「次の内閣」文部科学担当は「政権交代への期待が変わらないうちにご判断いただきたい」と早期辞任を求めるが、小宮山氏ら続投批判派も「小沢降ろし」へ決起する気配はなく、小沢氏自身の「辞任決断」を期待する。

 調査では民主党支持層でも「辞めるべきだ」が約6割に達し、頼みの無党派層では7割を超えた。衆院選候補予定者たちには動揺も広がっており、岡田克也副代表への世代交代を望む議員は「解散当日に両院議員総会で『岡田氏』と決めればいい」とのシナリオを描く。

 ただ、これまで民主党の選挙態勢は小沢氏が一手に担っており、選挙直前の交代は混乱を招きかねない。小沢氏側近は「辞めればがっかりする支持者も一定割合でいる」と続投批判派をけん制。執行部は輿石東参院議員会長が「代表を含め党が説明をもっとしていけば(小沢代表への支持も)回復する」と強調するなど続投支持の姿勢を崩していない。

 ◇定額給付金、「評価」が倍増

 全国世論調査では、国民1人当たり1万2000円の支給が一部市町村で始まった定額給付金についても質問。「評価する」との回答が39%、「評価しない」は56%だった。

 支給開始前の昨年12月から今年2月までの計3回の調査では「評価する」は20~22%、「評価しない」は70~74%と大差がついていた。

 ETC(自動料金収受システム)搭載車を対象とした土日祝日の高速道路料金値下げについては「評価する」が51%で「評価しない」の44%を上回った。

 定額給付金を評価する層の内閣支持率は42%、高速料金値下げを評価する層では支持率35%と、回答者全体の支持率をいずれも大きく上回った。これらの政策には次期衆院選を意識した「バラマキ」との批判もあったが、実施後の支持率上昇は「バラマキ効果」を裏付ける形になった。【中田卓二】

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 ◇世論調査の質問と回答◇

 ◆麻生内閣を支持しますか。

                全体 前回 男性 女性

支持する            24(16)25 24

支持しない           56(66)64 51

関心がない           18(17)11 24

 ◇<「支持する」と答えた方に>支持する理由は何ですか。

自民党の首相だから       31(38)28 34

首相の指導力に期待できるから  11 (3) 9 13

首相に親しみを感じるから    21(23)23 19

首相の政策に期待できるから   32(22)35 29

 ◇<「支持しない」と答えた方に>支持しない理由は何ですか。

自民党の首相だから        7 (5)10  4

首相の指導力に期待できないから 32(38)28 36

首相に軽率なイメージがあるから 19(19)20 18

首相の政策に期待できないから  41(36)41 42

 ◆どの政党を支持していますか。

自民党             23(22)24 21

民主党             24(22)31 19

公明党              5 (3) 4  6

共産党              3 (3) 3  3

社民党              2 (2) 2  1

国民新党             1 (1) 1  1

改革クラブ            - (-) -  -

新党日本             0 (0) -  0

その他の政党           1 (2) 0  2

支持政党はない         40(43)34 44

 ◆北朝鮮が人工衛星の打ち上げだと主張して、長距離弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮のミサイルは日本にとって脅威だと思いますか。

脅威だと思う          79    76 81

脅威だと思わない        19    22 17

 ◆北朝鮮のミサイル発射に対し、日本政府は新しい国連決議や追加の経済制裁など厳しい対応を主張しています。こうした日本の外交姿勢を評価しますか、しませんか。

評価する            76    76 76

評価しない           20    21 19

 ◆民主党の小沢代表は、政治資金規正法違反で公設秘書が起訴された後も代表を当面続ける考えを表明しました。次の衆院選に向けて、小沢代表はどうすべきだと思いますか。

代表として衆院選に臨むべきだ  23    28 20

衆院選前に辞めるべきだ     33    29 35

直ちに辞めるべきだ       39    38 39

 ◆民主党は、小沢代表の続投を、党として了承しました。この民主党の対応に納得できますか、できませんか。

納得できる           30    34 28

納得できない          66    62 68

 ◆麻生首相は衆院の解散・総選挙より、補正予算の成立を優先する考えを示しています。解散・総選挙をいつ行うべきだと思いますか。

直ちに行うべきだ        32    36 29

補正予算の成立後に行うべきだ  47    48 46

任期いっぱいまで必要はない   16    12 18

 ◆麻生首相と民主党の小沢代表のどちらが首相にふさわしいと思いますか。

麻生首相            21(10)21 21

小沢代表            12(13)17  9

どちらもふさわしくない     62(73)58 66

 ◆次の衆院選で、自民党と民主党のどちらに勝ってほしいですか。

自民党             32(29)30 33

民主党             42(40)51 35

その他の政党          19(23)14 23

 ◆国民1人当たり1万2000円の定額給付金の支給が一部の市町村で始まっています。定額給付金を評価しますか、しませんか。

評価する            39    34 43

評価しない           56    63 52

 ◆政府は、ETCを装備した乗用車などに限定して原則、土日と祝日の高速道路料金を上限1000円に値下げしました。評価しますか、しませんか。

評価する            51    49 52

評価しない           44    47 42

 (注)数字は%、小数点以下を四捨五入。0は0.5%未満、-は回答なし。無回答は省略。カッコ内の数字は前回3月6、7日の調査結果。

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 ◇調査の方法

 10、11の2日間、コンピューターで無作為に選んだ電話番号を使うRDS法で調査。有権者のいる1903世帯から、1150人の回答を得た。回答率は60%。

毎日新聞 2009年4月12日 東京朝刊

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