麻生太郎首相は11日、中国の温家宝首相との会談で、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射をめぐり国連が強い姿勢を突き付けるよう最後の働きかけを行った。すでにタイ入り前の10日の記者会見で、安全保障理事会の対応について「緩い決議よりも明確なメッセージ」に言及し、新決議ではなく議長声明でも容認する構えを見せていた。しかし、北朝鮮に影響力を持つ中国との直接対話では、あらためて国連で拒否権を持つ国と持たない国との差を突き付けられたようだ。
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[フォト]朝鮮中央テレビが放映した、「銀河2号」の打ち上げ場面
温首相「前回(昨年12月)は福岡で初めて中日韓首脳会談を行い、新たなスタートとなった」
麻生首相「福岡まで来ていただき歴史的な会談になった」
日中首脳会談は和やかな雰囲気で始まったものの、「議題がミサイル問題になると、緊張感が漂った」(首相同行筋)という。
麻生首相はこれまで、ミサイル発射は「安保理決議違反だ」と批判し、拘束力のある新たな決議を採択すべきだと訴えてきた。さきの訪英時にオバマ米大統領と会談した際には「連携」を確認してきた。
しかし、頼みの米国が安保理の場で拘束力のない議長声明で収拾に乗り出し、日本は苦境に立たされた。10日に決議にこだわらない姿勢を示すと、11日の温首相との会談では、新決議にこだわることはやめ、ミサイル発射への「非難」という文言の盛り込みなど内容重視に力点を置いた。
タイ政府反対派の暴動で東南アジア諸国連合(ASEAN)関連行事が中止になったのも痛手だった。
11日に予定していたASEAN首脳との会議や、ASEANと日中韓の首脳会議で、ミサイル発射を「東アジアの平和と安定に大きな脅威」と非難し、「議長声明」への盛り込みを求める考えだった。
12日の東アジア首脳会議では、アジア経済倍増をうたった「アジア成長戦略」を説明し、日本がASEANとの関係強化を表明する予定でいた。
これまで「経済の麻生」でアピールしてきた首相は笑顔を繕ったものの、不本意な外交となったに違いない。(パタヤ 坂井広志)
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