事実誤認が甚だしい教科書が文部科学省の教科書検定で合格した。
誤った歴史が後世に事実として教授される。これは放置できない。検定制度の不備を早急に是正する必要がある。
検定に合格しながらも、「欠陥」教科書と指摘されているのは「新しい歴史教科書をつくる会」が執筆し、自由社が発行した中学歴史教科書だ。
事実誤認は例えば、第2次大戦での硫黄島の戦い。それに続く沖縄戦の開始時期だ。
同書は「(1945年)4月、米軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いは日本本土に及んだ」と記述している。
だが、国内での地上戦は沖縄ではなく硫黄島が最初だ。これでは硫黄島は日本ではないことになる。
地上戦の開始も米軍が沖縄本島に上陸した4月と読める。だが、米軍は実際には3月26日に慶良間列島に上陸している。慶良間列島はまぎれもなく沖縄だ。そこで起きた住民の悲劇に触れないというのも解せない。
さらに同書は、琉球王朝が「沖縄県」になった「琉球処分」について、多くの教科書が触れてきた新政府が軍隊や警察の力を背景に「強制」した事実を省略している。
「琉球処分がスムーズにいったような書き方」に、事実に大きな間違いがある、沖縄の立場を無視しているとの批判が出ている。
そもそも同書は、最初の検定段階で516カ所も「検定意見」が付き、不合格になった。
それが、訂正・再提出され、さらに136カ所も再修正されている。その上での今回の「合格」だ。
修正個所があまりに多すぎて事実関係の誤記や記述漏れを教科用図書検定調査審議会(検定審)が見逃したというわけではなかろう。
むしろ最初に516カ所、2度目も136カ所も検定意見を出したほど徹底検証したはずだ。
だとするならば、沖縄戦や琉球処分などで同書が犯した「事実誤認」は、執筆者らのみならず合格とした検定審にもある可能性もある。
「歴史を歪曲(わいきょく)し、戦争を賛美する危ない教科書」と批判される教科書に国がお墨付きを与え、学校現場に送り出す。
一方で、国は沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)での軍関与の史実をゆがめ、記述復活にも応じない。検定制度の不備と杜撰(ずさん)さ、危険性はもはや明白だ。
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