大覚寺大沢の池自然景観修復プロジェクト(修復関連データ収集調査)ソウギョバスターズ実行委員会
<本プロジェクトの目的>
大沢の池は、日本三沢の池の一つとして、また湖面に映る月の姿を船をうかべて楽しむという「観月の夕べ」を催す場として、古くから知られ親しまれている。
この池はかっては、数少ない資料からの読み込みや関係者の伝聞によれば、ハスや、スイレンが湖面の一部に繁茂し、開花期には美しい色を湖面に添えていたと言われている。また池の随所には、ヒシを主とする浮水性の水草も分布していたと言われている。おそらくこれらの植物はその繁殖によって湖面を、かなり埋める形で繁殖をしていたと思われるが、農業用水の確保と利用、「観月の夕べ」での湖面空間確保の必要性から人為的かつ定期的な管理によって、一定程度の繁殖をさせつつも湖面での分布範囲を限定的に保つように維持されてきたと思われる。
この管理の仕方としては、大沢の池の定期的な泥抜きと湖底の清掃、あるいは湖面中央での植物繁茂の人為による抜き取り、除去が行われてきたと言える。しかしながら池の水の利用量の減少と泥抜きの中止、あるいは水草除去の労働力の確保の困難さから、昭和40年代後半あたりに水草の除去の手段として大形淡水魚で外来種である草魚が大沢の池に移入されたと言われている。その結果、時間の経過により次の事態を引き起こすに至っている。
まず移入数年を経過した頃から、大沢の池で一切の水草が姿を消したことである。当然これは、草魚による採食によって食べ尽くされたと考えられる。 次に水草の繁茂がなくなる反面、泥抜きの作業もなくなったことである。沈砂池の役割を果たしていた「放生池」の採泥の中止と平行して、大沢の池における堆積土砂の増加した。そして栄養分である水草の吸収源がなくなったため、水質の富栄養化による悪化が始まったのである。
さらにこの結果、水位の上昇による池周辺の樹木のねぐされ現象の増加、湿度の増加による池の周辺に植哉れている樹木の樹皮に苔の付着がおこる等、樹勢の低下につながる環境変化等が引き起こされていると考えられる。 以上の現象が今日、起こっていると見られることから、このまま放置することにより、大沢の池をはじめとする池周辺の自然景観がここ十数年で大きく変化し、壊滅的な状況に陥っていくことが十分予想される。
そこで本プロジェクトでは以上の状況をデーターとして正確に把握すると共に、「観月の夕べ」を催す場として利用しつつ、かつ周辺の樹木に活力を取り戻し桜等が咲き乱れ、また一定程度湖面にハス、スイレン等の水草が繁茂しつつ花の咲く姿の見られる、「大沢の池の自然景観修復」を目的としたプロジェクトを3カ年を目標として計画実施するものである。
なお、本プロジェクトは大覚寺学園京都嵯峨芸術大学および滋賀県立大学の教師、学生からなるボランティアスタッフ、ビオトープ計画、造園計画、野生生物管理計画、地域計画、地域資源管理計画、淡水魚釣りグループ等からなる多数のボランティアスタッフの参加協力によって実施される。
ソウギョバスターズ実行委員会代表
京都嵯峨芸術大学 教授 真板昭夫
2001年8月18日