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追加経済対策:国債大量発行は両刃の剣 貸し渋り誘発も

 15.4兆円の真水(財政支出)を投入する政府の追加経済対策は「全治3年」(麻生太郎首相)といわれる日本経済を回復の道筋に押し上げることができるのか。対策を進めても、09年度は「ようやく先進国並みのマイナス幅」(与謝野馨財務・金融・経済財政担当相)にとどまり、プラス成長に浮上するのは早くても10年度以降だ。財源確保のため大量発行する国債が、景気回復の足を引っ張る可能性もあり、過去最大の景気対策は「両刃の剣」だ。【上田宏明、斉藤望、赤間清広】

 政府は昨年12月、09年度の日本経済がゼロ成長に失速するとの経済見通しを公表。しかし、3月に経済協力開発機構(OECD)が公表した見通しでは、日本は先進国中最悪のマイナス6.6%(09年)だった。与謝野氏は「放っておけば成長率が6~7%落ちるところを(経済対策で)2%程度戻すことになる」と説明した。雇用も、対策がなければ失業率が現在の4.4%から約3ポイント悪化し、約200万人の失業者が発生する可能性があったと指摘。過去最悪の5.5%にまで悪化しない範囲に抑制できる効果があるとした。

 麻生太郎首相は会見で、「今回の景気対策は未来の成長につなげることを重視した。公共事業も15兆円のうち2.4兆円に抑えた」と、公共事業を中心とした歴代政権の経済対策との違いを強調した。

 環境対応車(エコカー)と省エネ家電の購入補助制度に関係業界は「需要回復の起爆剤に」と期待を寄せる。自動車と家電は部品メーカーなど関連業種が多く、みずほ総研は「高い波及効果が見込まれる」と指摘する。

 ただ、制度が動き出すのは、09年度補正予算の成立が前提。予算審議が長引いて実施が遅れれば、「消費者に買い控えが広がり、エコカー減税など既存の政策効果が半減しかねない」(アナリスト)。

 また、国債の大量発行が長期金利の上昇を招き、景気の足を引っ張る可能性もある。企業の資金調達コストが高くなり、業績が悪化するだけでなく、金融機関の貸し渋りにもつながりかねない。メガバンクだけで1行あたり20兆~30兆円と大量の国債を保有。金利が上昇すればその分国債の時価が下落し、数千億円規模で含み損を抱えかねず、企業への貸し出しを抑制するかもしれないからだ。

 ◇「ぼろぼろになった旗だが一応立っている」

 過去最大規模の追加経済対策の実施で10兆円を超える国債発行が必要になり、借金の大幅な増加が、現状ですら「火の車」の国の財政を、一段と悪化させることになる。将来世代に過大な「ツケ」を回さないためにも、新たな財政再建の道筋づくりが急務だ。

 今回の経済対策の策定に当たっては、国の財布を握る財務省に対し、与党から大規模な財政支出を求める強い圧力があった。財務省幹部は「誰も彼も、政局と選挙のことしか頭にない」と疲れ切った表情で語った。

 月内にもまとまる09年度補正予算案では、赤字国債や建設国債の発行額は合わせて10兆円を超え、当初予算と合わせた09年度の国債発行額も過去最大の40兆円以上になる見通し。

 08年度末の国・地方の長期債務残高は787兆円と、先進国で最悪の水準だが、更に借金が大幅に積み上がることになる。

 政府が、財政再建の「一里塚」として目指してきた11年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させるとの目標実現は、もはや不可能な状況。麻生首相は9日の会見で、「ぼろぼろになった旗(目標)だが一応立っている」と述べた。

 政府は昨年12月、税財政改革の道筋を示す「中期プログラム」をまとめたばかりだが、今回の追加経済対策には早くも改定の必要性を盛り込んだ。麻生首相は10日の会見で「消費税を含む税制抜本改革は、景気を立て直すことを前提に必ず実施する」と強調したが、与党内には「選挙を前に消費税論議などできるわけがない」との声が強く、踏み込んだ再建路線を打ち出すのは困難なのが実情だ。【平地修】

 ◇15兆円、やりすぎ

 井堀利宏・東京大学大学院教授の話 積極予算となった09年度当初予算や公共事業の前倒し執行の効果を検証するのが先決で、厳しい財政の中で15.4兆円もの補正はやりすぎだ。まず総額ありきで、経済対策の名のもと、バラマキをした印象を受ける。景気浮揚効果は限定的で、負担は将来に回る。このようなバラマキでは、将来的に消費税などの増税をしようとしても国民の理解は得られない。

毎日新聞 2009年4月10日 23時11分(最終更新 4月11日 0時11分)

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