いの健埼玉センター・アスベスト学習会
年度末に向けての相談会、炊き出しなどの情報はこちらにあります。
http://ameblo.jp/sai-mido/entry-10219497108.html
「反貧困・駆け込み大相談会in埼玉」のブログが立ち上がりました。
詳しい内容、連絡先、カンパの受付先などがこちらで確認できます。
http://saichan.air-nifty.com/hanhinkonnkakekomi/
また、元BP@闘争中様から情報提供をいただきましたのでご紹介します。
http://sankei.jp.msn.com/region/kinki/wakayama/090312/wky0903120247009-n1.htm
和歌山 相談村 炊き出し等あり 20日
昨日、3月16日の行動報告の最後です。働くもののいのちと健康を守る埼玉センター(いの健埼玉センターと略します)主催のアスベスト学習会が行なわれました。
まず、川口市内の診療所でじん肺・アスベスト健診に取り組んできた医師からの報告がありました。川口市には鋳物業によるじん肺に取り組んできた歴史があり、診療所内に医師と放射線技師を中心としたじん肺・アスベスト委員会があるそうです。現在までに120名ほどの症例を集めているそうです。
埼玉県は都道府県別中皮腫死亡数が第6位であり、中皮腫での死亡率が高い市では県内の秩父市が第7位となっています。これは、セメント業が主要産業であるためではないかということでした。診療所でのじん肺・アスベスト検診では、2005年に4名、2006年に33名、2007年に25名が所見が発見され、管理区分申請に至っているそうです。労災の認定は2006年から2007年の間に9件で、内1件が中皮腫だそうです。業種別では、鋳物を含む鉄工・溶接工、大工・建設業、左官が多いとのことでした。
症例についての説明もあり、内装業、スレート業などでアスベストを扱って肺にプラーク斑と呼ばれるレントゲンなどで白く写る部分ができている例や、具体的な職歴はないが夫が鋳物業で働いている女性がじん肺になっている例などを紹介してくださいました。
2005年のクボタショック以降、じん肺・アスベスト検診は個人でやるものから事業所単位で行なうものに変わってきており、件数も増えているそうですが、アスベスト肺の診断ができない医師もまだ多く、胸膜炎と診断されているケースもあるということでした。また、本人が仕事でアスベストを扱ったことを自覚していない場合もあり、詳しく問診を取る必要があるということも指摘されました。アスベスト問題は世間的な関心は低くなっていますが、これから症状が出てくる可能性も高く、産業衛生学会でもアスベストへの関心が再び高まっているそうです。これからも医師だけでなく放射線技師などの医療従事者も含めて、この問題に取り組んでいく必要があるとの指摘で、報告は締めくくられました。
次に、アスベストの労災認定に取り組んだ医療機関からの報告がありました。
アスベストの被害については、2005年6月29日にクボタが記者会見を行なったことから注目されるようになり、企業でもアスベスト検診などの取り組みが行なわれるようになりました。ですが、そうした企業での検診結果や厚生労働省発表の石綿曝露による労災認定数は、実態とは開きがあるのではないかという懸念があるそうです。それは、アスベスト製品を取り扱っている企業のある市の気管、気管支及び肺の悪性新生物による死亡者率が、埼玉県全体の同疾患の死亡率よりも高い傾向が1976年から続いているというデータがあるからです。
報告をした医療機関が取り組んだ労災事例は、58歳の男性が肺がんで在職死亡した件です。しかし、39年間アスベストに接する業務をしてきた職務歴があることから、死亡後半年ほどしてから遺族が医療機関に相談し、会社に再三に渡って問い合わせを行なったところ、労働基準監督署に職歴証明書が提出され、その8ヶ月後に労災が認定されたということでした。労災が認定されたことで遺族保証年金や葬祭料、療養費が支給されましたが、会社からは金一封のみで何も賠償がされていないそうです。
また、この事例は石綿(アスベスト)曝露歴10年以上という要件は満たしているものの、レントゲン写真での胸膜肥厚、プレパラートでの石綿小体といった所見はないということで、労災認定は厳しいケースだったそうです。今回の労災認定理由を把握して今後の被災者救済に役立てるため、労働局に対して個人情報開示に基づき状況を請求していく予定だということでした。
今後のアスベスト被害対策としては、被災者の救済と住民の曝露被害の調査、会社の安全配慮義務の追及と基準の法律化、有効な健康診断や被害者相談室などの自治体の取り組みのすすめ、被害者組織の確立が挙げられました。
最後に、埼玉土建の方から首都圏建設アスベスト訴訟についての報告がありました。
この訴訟は、国及び石綿含有建材製造企業46社に対し、慰謝料として1被災者あたり一律3,500万円と弁護士費用350万円、合計3,850万円を請求している損害賠償請求事件です。
アスベストは欧米主要国では1980~90年代に全面使用禁止され、日本では2004年10月から原則禁止、2006年9月から全面禁止となりましたが、東南アジア・アフリカなどでは規制されていません。
1996年から5年間実施されたじん肺検診等の職業病健診では、3人に1人に何らかの所見が認められ、職種別にみてもほぼ全職種にアスベスト疾患・じん肺の所見が認められたそうです。2001年から埼玉土建が行なった健康診断の胸部レントゲンを再度チェックする取り組みや、レセプトからの有所見抽出などから、これまで2003年1月からの統計で90人のじん肺・アスベスト疾患の労災認定を勝ち取っているそうです。
2008年5月、業務が原因でじん肺・アスベスト疾患に罹患した被災者178人が国と企業の責任を追及するために東京地裁に提訴しました。提訴後9ヶ月で、原告178人中18人が亡くなっているそうです。
この訴訟において、国が責任をとるべきと指摘されていることは、憲法13条、25条、及び27条2項に基づく国民を生命・健康の侵害から保護する義務を果たさなかったことと、旧労働基準法・労働安全衛生法に基づく責任の不行使です。つまり、石綿粉じんの発ガン性が明らかになっているにも関わらず、規制があまりにも遅かったという規制権限の不行使です。
この訴訟で目指しているのは、国と建材メーカーの法的責任を明確にし、石綿被害を根絶するよう政策を抜本的に変換させることです。そのため、裁判と平行して、「石綿の健康被害の救済に関する法律」をすべてのアスベスト被害者を対象として十分な救済が受けられるよう抜本改正すること、国・石綿含有建材製造企業の拠出でアスベスト被害者を対象にした「被害者救済基金」を設立すること、アスベスト被害の対象疾病に胸膜肥厚斑を加え、疾病が進行した場合にすみやかに補償する制度をつくること、石綿障害予防規則を改正して近隣住民と建材現場従事者の曝露対策を徹底すること、アスベスト曝露が判明した一人親方労災加入者に石綿健康管理手帳を交付すること、アスベスト被害者の労災認定要件の緩和と給付額の改善、アスベスト疾患の診療体制の拡充と治療法の研究、アスベスト廃棄物の除去・処理費用を企業と国・自治体が発注者に助成することも求めているそうです。
以上で学習会の報告を終わります。
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