医療の危機と医療労働者の危機
まず、今後行なわれる「派遣村」的な相談会の情報です。
浜松 「トドムンド浜松派遣村」 3月29日(日)~30日(月)
東ふれあい公園で開催。主催は生活保護支援ネットワーク静岡など。
各種相談会、炊き出しほか。
30日には市役所までのデモや生活保護の集団申請も行なう。
(「トドムンド」とはポルトガル語で「みんな」の意)
東京 「反貧困フェスタ2009」 3月28日(土)
千代田区立神田一橋中学校で開催。主催は反貧困ネットワーク。
シンポジウムなどと共に、各種相談会、炊き出しも行なわれる。
※チラシをダウンロードすることができ、会場地図もそちらに載っています。
http://www.k5.dion.ne.jp/~hinky/festa2009/festa2009.html
埼玉 川口版派遣村 こまりごと相談所 4月19日(日)10時~14時
川口駅西口前、川口西公園で開催。主催は川口市社会保障推進協議会など。
労働、くらし、法律、生活保護、医療、子育て、介護、納税、多重債務の相談。
フリーマーケットも開催。炊き出しも有り。
元BP@闘争中様からの情報提供で、次のような相談会もあります。
http://www.373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=15912
鹿児島派遣村実行委員会 29日から4月4日、同市ボランティアセンターで集中相談会、炊き出し無し
http://www.kajocentral.com/event/event.htm
山形29日 派遣切りやめろ!雇用を守れ!大相談会 炊き出し有り
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20090326ddlk25040514000c.html
大津で28日、長浜は28、29日 /滋賀
労働・生活相談会と炊き出し
さて。昨日、今日と、テレビのニュースでも大きく取り上げられていますが、東京都の愛育病院が総合周産期母子医療センターの指定を返上することを都に打診したことが明らかになりました。この件についての東京新聞の記事をご紹介します。引用部分は青で表記します。
「総合周産期」返上を打診 医師確保困難で愛育病院
東京新聞 2009年3月25日21時44分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009032501000996.html
東京都から早産などハイリスクの妊産婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(中林正雄院長)が、複数の医師による当直が困難なことなどから、都に指定の解除を打診したことが25日、都や病院への取材で分かった。
愛育病院は必要な医師数が少なくて済む「地域周産期母子医療センター」への指定見直しを希望し24日、都に意向を伝えた。都は医療体制に大きな影響が出るため、病院側と協議している。
愛育病院によると、15人の産科医のうち3人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。
今月中旬、三田労働基準監督署は労働基準法に基づく労使協定(三六協定)を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。これを受け病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、医師2人による当直は難しい」(中林院長)と判断した。
今日の紙面に掲載されていた追加情報もご紹介します。
総合周産期指定 愛育病院が返上打診
当直医不足 都は継続求める
東京新聞 2009年3月27日(30面)
(前略)
同病院は現行の医師数で勤務時間を減らしながら総合センターを維持するのは困難と判断。新に夜間専門の非常勤医師を採用し、同センターの要件である「二十四時間の産科医複数勤務」を満たすことにした。
しかし、夜勤が非常勤医師二人だけという日が生じるため、総合センターとして適切かどうか都に相談。都は「非常勤も問題ない」とし、総合センターを続けてもらう方針。
ただ、中林院長は「ほかの都内の総合センターと異なり当院は母子型病院で、救命救急センターがない」とも述べており、都にさらに指定の是非について検討を求めている。
総合周産期母子医療センターは、危険性が高い妊婦の出産に対応できる施設で、都道府県が指定。新生児集中治療室(NICU)や母胎胎児集中治療管理室(M-FICU)を備え、都内には九カ所ある。
この件については、「もしものときにも安心して出産できる場所がなくなってしまう」という点から問題にされることが多いのですが、この問題が起こった原因としての「安心して出産できる場所」を支えているのが産科医をはじめとする医療労働者の並外れた長時間過密労働だということへの注目が薄いように思います。産科に携わる医療労働者は、ほとんどがいつ倒れてもおかしくない状態にあります。つまり、今現在の「安心して出産できる場所」も、いつ崩れてもおかしくない薄氷の上のものであるということです。
労働組合としてはお恥ずかしいことですが、医療の分野は最も労働基準法違反の指摘が多くされている分野です。そもそも日本の医療は、労働者の犠牲の上に成り立っていたということです。これは単に「労働者としての権利」を犠牲にしてきたというだけでなく、健康や生命といったレベルでの「犠牲」です。そうした「犠牲」によって成し遂げてきたことは大きいのでしょうが、やはり異常なことであると言わざるを得ません。医療崩壊の危機は、そうした異常な「犠牲」を重ねてきたことが限界に達し、起こるべくして起こったということもできるかもしれません。
企業の営利追及のための過労死は許されないが、医療という尊い仕事のための過労死は許される、とすることはできません。その仕事の社会的評価がどうあれ、仕事のために人が死ぬということを許容することはできません。医療が医療労働者の犠牲の上に成り立っているという現状は、やはり改善していかなければなりません。
そして、医療労働者が健康・生命を保って働ける状況をつくるということは、医療を受ける側にとっても安全性を高めることであるという認識に立つことが重要です。
現状を見ると到達不可能な理想に思えるかもしれませんが、理想的な姿を明確にイメージしてそれを目指そうとしていかなければ、そもそも現状から踏み出すことはできないのではないかと思います。
今回の愛育病院の問題が、単に医師の採用が実現すればそれで解決ということではなく、医療全体のあり方を見直し、改善していくためのきっかけになればよいと考えています。
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