 ジャパンマネーのアシストでオランダに快勝。この日の星野監督は余裕しゃくしゃくだった(前川純一郎撮影、クリックで拡大) |
【北京=宮脇広久】神様、電通様、テレビ局様−。苦闘中の星野ジャパンに、テレビ中継のおかげで追い風が吹き始めた。
日本代表・星野監督も「そりゃ、台湾の選手たちは大変だぞ」と同情を禁じ得ない。14日の日本−台湾戦、降雨のため試合開始が午後8時にずれ込んだ。終了は午後11時16分。台湾はわずか11時間余り後の翌朝午前10時半から、次の中国戦を開始しなければならなかった。
寝不足のためか、精彩を欠いた台湾は、出場8カ国中で、実力が格段に劣る中国にタイブレークの末、まさかの延長12回サヨナラ負け。この時点で1勝2敗となり、決勝トーナメント進出が極めて難しくなった。一方、台湾戦翌日の日本はというと、午後6時開始のオランダ戦まで、たっぷり英気を養っている。
台湾だけではない。韓国も初戦で、米国を相手に8−7の逆転サヨナラ勝ちを収め「これで韓国は勢いに乗っちゃうなぁ」と星野監督を嘆息させた。ところが、翌朝午前11時半開始の中国戦では、0−0のまま6回裏1死走者なしの場面までもつれ込み、降雨延期となった(17日に同じ場面から再開)。
意外に中国が強いのかと思いきや、日本代表関係者が「ナイターの翌日のデーゲームなんて、こんなものですよ」と解説してくれた。疲れ切った体が翌朝から動かないのは、プロ選手をもってしてもいかんともしがたいというワケか。
予選リーグでは、米国に3試合、韓国と台湾に4試合ずつデーゲームが組まれている。日本代表はどうか。デーゲームは18日のカナダ戦(午前11時半開始)のみ。しかも、その前日(17日)が試合のない予備日だから、体内時計を調節し直す時間は十分ある。
星野監督は「日本は恵まれている。テレビ中継があるからなんだよなぁ。IOC(国際オリンピック委員会)にお金が入るから…」と胸をなでおろしている。
北京五輪の日本での放映権は、まず大手広告代理店の電通がIOCから買い取り(金額不明)、手数料込みの推定198億円とされる額で、ジャパンコンソーシアム(NHKと民放各局の共同体)へ売却。
「うまくできているのは、五輪番組を制作するテレビ局へスポンサー企業を紹介するのも電通で、ここでも手数料が発生する。星野ジャパンの試合がナイターばかりなのは、IOCと電通との話し合いが思惑通り進んだ結果でしょう。おかげでゴールデンタイム以降に合わせて放送できる。電通、スポンサー、テレビ局の三者が満足できる形になった」(民放関係者)という構図があった。
本来、日本のプロ野球ではデーゲームといっても午後1時開始がせいぜい。高校球児ではあるまいし、ただでさえ午前中の開始には戸惑うはず。競泳では、午前中に決勝が行われたのが地球の裏側の米国のゴールデンタイム以降に合わせたためといわれ、現場からブーイングが上がっている。
野球では、こと日本代表にとってはテレビ放送のおかげでチョ〜楽な日程で戦える。これもジャパンマネーの威力あればこそか。恩恵を受けた星野ジャパンが、これでも金メダルを取れなかったらバチが当たる。
ZAKZAK 2008/08/16