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社説:対北朝鮮制裁 中国説得の努力続けよ

 政府は10日の閣議で北朝鮮に対する独自の経済制裁を1年間延長することを決めた。併せて、河村建夫官房長官が北朝鮮への送金と現金持ち出しの規制を強化する追加制裁を実施すると発表した。

 北朝鮮は拉致被害者の再調査を先送りしたままだ。6カ国協議は核計画の検証方法をめぐる北朝鮮の硬直姿勢のため暗礁に乗り上げている。加えて、国際社会の懸念に背を向け弾道ミサイル発射という挑発的な行動に踏み切った。制裁の延長と追加措置の実施は当然である。

 延長する制裁措置は、貨客船「万景峰号」など北朝鮮籍船舶の入港全面禁止と北朝鮮からの全品目の輸入禁止が柱だ。06年10月の核実験を受けて実施している措置で、半年ごとに延長してきた。

 追加制裁は、日本から北朝鮮へ送金する際の報告基準額を現行の3000万円超から1000万円超に、北朝鮮への渡航者の持ち出し金の届け出基準額を100万円超から30万円超にそれぞれ引き下げる。自民党が求めていた北朝鮮への全品目の輸出禁止は見送った。

 日本は北朝鮮からの輸入禁止に加え、ぜいたく品や大量破壊兵器開発につながる物品の輸出禁止を実施済みだ。日朝貿易の規模は年々縮小しており、制裁延長による効果は限定的にならざるをえない。

 北朝鮮は日本の非難に対し「問題視するならロケットを100基以上打ち上げている日本も非難を免れず、制裁の対象になる」などと反論している。核保有を宣言している北朝鮮のミサイル計画と日本の人工衛星打ち上げを同列視するのは詭弁(きべん)というほかない。

 北朝鮮は日本の大半が射程に入るノドン・ミサイルを多数配備しているとされ、これに核弾頭の小型化が結びつけば日本にとっての脅威は計り知れない。日本が北朝鮮に対し、具体的な措置を伴ったメッセージを出さなければ「日本は容認した」との誤解を与えることになる。

 今回の打ち上げをきっかけに自民党内で「敵基地攻撃論」などの勇ましい声が出始めた。議論し研究すること自体を否定するものではないが、いまは北朝鮮の暴走を防ぎ協議の場に引き戻すための外交にこそ全力を挙げるべき時である。

 国際社会が一致して早期に北朝鮮に対する明確なメッセージを発信するには、安保理常任理事国で6カ国協議の議長国でもある中国の協力が特に必要だ。麻生太郎首相は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の会合が開かれているタイで中国の温家宝首相と会談する。難航している安保理協議を収拾に導くための方策を率直に話し合ってきてほしい。

毎日新聞 2009年4月11日 東京朝刊

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