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【社会】

遺族『事故調の設置を』 東京女子医大事故 高検、上告断念発表

2009年4月11日 朝刊

 東京女子医大病院で二〇〇一年、心臓手術を受けた群馬県高崎市の小学六年生平柳明香さん=当時(12)=が死亡した事故で、業務上過失致死罪に問われ一、二審で無罪判決を受けた佐藤一樹医師(45)について、東京高検は十日、「明確な上告理由が見いだせない」として、上告しないことを発表した。

 東京高検の長谷川充弘刑事部長は「検察側の専門家の意見と、裁判所の認定の根拠となった専門家の意見が分かれることに、この事件の難しさをあらためて感じている」と説明した。

 検察は女子医大の内部事故報告書を参考に起訴したが、無罪が確定する佐藤医師は「女子医大が内部報告書の誤りを認めていれば、遺族も私も長期に苦しむことはなかった。この事件は、女子医大が、遺族と私、そして国民に謝罪しない限り、終わることはありません」とするコメントを出した。

 明香さんの父利明さん(58)は厚生労働省で記者会見し、「上告してもらいたかった。誰が犯人だったのか、分からない。大変、残念な結果だ」と述べた。利明さんは、厚労相あてに、医療版の事故調査委員会の早期設置を求める要望書を提出。「刑事事件では組織の責任は問えない。事故調ができれば、それができるのではないか。娘の死を無駄にしてほしくない」と訴えた。医療事故で無罪判決が続いていることについては、「捜査は萎縮(いしゅく)してほしくない」と語った。検察側にも伝えたという。

 

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