「俺の面白さはこんなもんじゃない!」――田代まさし氏、降臨 出所後の生活を語る
4月10日15時25分配信 ITmediaニュース
田代まさしさん |
田代まさしさんの人生は、山あり谷ありでジェットコースターのようだ。「ダジャレの帝王」と呼ばれ、月に1000万円稼いだ時期があった。刑務所という「笑いのない世界」にも入った。刑務作業で得られる月収は400円だった。
昨年6月、3年半ぶりに出所した。「俺は過去の人」――こんなふうに思っていたが、イベント司会などの仕事が舞い込んでいる。今年3月には動画サイト「zoome」で冠番組「田代まさしのお久しブリーフ」も始まった。番組を見た人から「面白かった」とほめられたが、実はまだ本調子ではないという。「俺の面白さはこんなもんじゃない」と密かに思っている。
ネットでは“ネ申”と呼ばれる。米TIME誌の「PERSON OF THE YEAR」のネット投票で、田代さんが一時的に1位になった“田代祭”は、もはや伝説(?)だ。昨年10月にブログを始めたときには、サーバが落ちるほどアクセスが殺到した。
そんな田代さんに、獄中で苦労したことや出所して驚いたこと、「2ちゃんねる」や今のテレビ番組について思うこと、ダジャレを考えるコツなどを、おおいに語ってもらった。ITmediaに“ネ申降臨”、とくとご覧あれ。
●ネットでいじられ「うれしい」
――ネット界では“ネ申”と呼ばれるほどの人気です。
“ネ申”と呼ばれ始めたころ「“ねざる”って何だ?」と思っていました。神なんておこがましいです。
――なぜ人気だと思いますか。
うーんなぜだろう、すごい不思議です。加勢大周さんとか、ほかにいじられそうな人がいるのに、なんで俺だけこんなにいじられるんだろう。
――いじられることについてどういうふうに感じていますか。
「俺は過去の人間」という意識があったので、ネット上で今でも話題にしてくれることはうれしいですね。
2ちゃんねるに、俺が志村けんさんの風呂をのぞいている合成写真が投稿されていたことがあるんですが、すごく凝っていて、労力がかかっていて、驚きました。
先日、週刊誌「SPA!」の嫌いな有名人ランキングで3位に入ったんです。1位は麻生太郎首相、2位は小島よしおさんだった。忘れられた存在だと思っていたのに、そうそうたるメンバーと肩を並べさせてもらってうれしかった。「まだそんなレベルにいさせてくれるんだ」と思いました。
●ブログを始めたきっかけは 「偽物にジェラシー」
――田代さんはネットに詳しいですか。
全然詳しくないし、ついて行けないです。
――PCは持ってますか。
今年のバレンタインデーにファンから「VAIO type P」をいただきました。ちょっといじってみましたが、消し方(電源オフの方法)も分からなかったです。
――type Pですか!? うらやましい。ネットにはつなげましたか。
はい。でも「YouTube」を見たら、PCの動きが止まってしまって……
――YouTube以外にどんなサイトを見ますか?
mixiに俺の応援コミュニティーがあるのを妹から聞いて見ました。
――昨年10月にブログを始めました。type Pを使って書いているのですか。
いえ、携帯電話で文章を作成し、自分に代わってブログを管理してくれている人に、メールで送って、上げてもらっています。
――田代さんが直接ブログを更新しているのではないのですね。携帯から更新すれば良いのでは?
プリペイド式の携帯電話を使っているのですが、韓国製の安い端末なのでネット接続できないんです。
――ブログを始めた感想は。
毎日更新しなきゃって思うんですが、こっちの社会に戻ってきてから、日記に書くほどの話題がなくて……更新は4日に1度くらいになっています。
俺のなかに「マーシー」という部分が残っていて、どうせなら楽しく読んでもらいたいと思うので、ただの日記のような内容は書きたくないですね。
――そもそもなぜブログを始めたのですか。
俺が書いたと思わせる偽物のブログが開設され、ネット上で騒ぎになっていることを知り、興味がわきました。偽物にジェラシーを感じて「本物だったらどうなるんだろう」と試してみたくなったんです。
偽物ブログを本物と信じてコメントを書き込んでいるファンもいたので、申し訳ないという思いもありました。
――ブログの反響は。
開設した当日のアクセス数が100万で、サーバが落ちてしまいました。偽物ブログのアクセス数は3万程度だったと聞いていたので、びっくりしましたね。
●出所して驚いたこと「パチンコの音の大きさと携帯の薄さ」
――昨年6月に出所しました。
世の中は厳しいですね。家を借りようとしても「田代まさし」ということで断られました。今は妹の家に住んでいます。
――出所して驚いたことはありますか。
パチンコの音が昔よりうるさくなっていたことです。
――記者はパチンコをしないので変化が分からないのですが、そんなにうるさくなったのでしょうか。
出所して3年半ぶりにパチンコ屋に行ったら、音のうるささに耐えられなくなって出てきました。
パチンコのリーチも長くなってる気がします。前はもっと決着が早かったですよ。
――ほかに驚いたことはありますか。
携帯電話が薄くなっていたことです。アンテナが端末に内蔵されていることも、驚きました。
●出所後の仕事は 「イベントで人の多さに気持ち悪くなった」
――出所後、仕事は順調ですか。
雑誌の連載が2本あるほかに、取材を受けたり、トークショーにゲスト出演しています。ありがたいことに生活に困らない程度の収入があります。
「田代まさし」のネームバリューはすごかったんだなと思いますね。
――動画サイト「zoome」では、3月に田代さんの番組「田代まさしのお久しブリーフ」が始まりました。
番組を見た人が「面白い」と言ってくれたんですが、自分としては「俺の面白さはこんなもんじゃないぞ」と思っています。
――まだ本調子ではないということでしょうか。
はい。笑いのない世界に3年半もいたので、すぐに昔のようには戻れないです。昔はもっと頭の回転が良かったですが、今は、妹にギャグを言って、日々リハビリしています。
――電撃ネットワークなどが出演するイベント「新宿クレイジーナイト」では、司会をされていましたね。
司会は何十年もやっていた仕事だし、「へっちゃら」と思って引き受けたんですが、イベント前には不安に襲われました。
――司会は無事務められましたか。
1000人くらいお客さんが入っていたんですが、司会しているうちに人の多さに酔って気持ち悪くなってしまいました。
――それは大変でしたね。田代さんは緊張に弱いタイプなんですか。
精神的に細い人間なんです。昔もテレビの新番組が始まる時などには、視聴率を心配して胃が痛くなったりしていましたね。
――新宿クレイジーナイトでの自分の司会ぶりに点数を付けると、どれくらいですか。
50点くらいかな。俺の面白さはこんなもんじゃないぞ!
――芸能界で活躍していたときはどれくらい忙しかったのですか。
10年間ほどは、睡眠2時間という日が続いていました。
――最も稼いでいたときはどれくらいの収入があったのですか。
1000万円くらいです。
――それは……年収ではなく、もしや月収?
月収1000万円でした。芸能界は怖いところですよ。
――2005年から3年半服役していましたが、刑務作業ではどれくらいの賃金がもらえるのですか。
最初は月400円くらいからスタートし、徐々に上がっていきます。最後は月2000円になり、3年半で総額6万8000円稼ぎました。雲泥の差ですね。
●「午後9時半就寝が慣れなくて」――刑務所の生活
――刑務所での生活を教えて下さい。
午前6時半に起きて、午後9時半に寝るという毎日でした。
――寝るのが早いですね。
もともと夜型人間だったので、辛かったです。毎日睡眠薬を飲んで寝ていました。
――出所するまでずっと睡眠薬を飲んでいたのですか!?
そうです。量は徐々に減らしていきましたが、午後9時半就寝は最後まで慣れなかったですね。
夜は見回りが1時間ごとにくるので、その足音が気になって寝られませんでした。
――そんなにうるさい足音なんですか。
北朝鮮の兵士のような歩き方で、耳障りでしたね。
――ほかに辛かったことはありますか。
刑務作業です。工場で、紙を折ったり、ひもを結ぶといった単純作業が1日8時間続くんです。
体を動かす仕事をする工場もありますが、俺は刑務所側の配慮で、高齢者や体の不自由な人、有名人などが働く工場に配属されていました。
●逮捕されなければ「死んでいたかも」
――覚せい剤所持が発覚して刑務所に入ったわけですが、出所後に覚せい剤を使いたいと思ったことはありますか。
薬の禁断症状も一切ないし、出所してからやりたいと思ったことはないです。
――覚せい剤に手を出したきっかけは。
盗撮事件以降、家族とうまくいかず、「一緒に住みたい」と言っても断られ、「どうにでもなってしまえ」とヤケになってしまいました。家族が俺の生きがいだったんです。
あの頃は「死んでもいいや」と思っていたので、もし捕まっていなかったら死んでいたかもしれません。
――服役中に離婚されたそうですね。
離婚で踏ん切りがつきました。出所後、息子とは会いましたが、元妻とは会っていません。「もう一度家族として食事したい」と思うことはありますね。
――誰かともう一度結婚したいとは思いますか。
結婚はもういいや!
――恋人はいますか。
いません、募集中です。
●出所直後にコンビニで“大人買い”
――出所したらやろうと決めていたことはあったそうですね。
映画「幸福の黄色いハンカチ」で、高倉健さんが演じる主人公が、出所してすぐに、食堂でビールとラーメンを食べるシーンがあり、好きな映画なのでまねしようと思っていました。
――実行しましたか。
出所する俺を迎えにきた義弟に「外に出ない方がいい」と言われて、やめました。
――それは残念でしたね。なぜ外出を控えたのですか。
服役していたとき、俺が出所するという噂が広がって、マスコミや2ちゃんねらーが刑務所の周りに集まってしまったことがあったからです。
義弟が刑務所に横付けした車にすぐに乗り込んで帰りました。
――実際に出所したときは、マスコミや2ちゃんねらーは集まっていましたか。
意外なことに1人もいなかったです。
――結局、出所後はどこにも寄らずに帰ったのですか。
「外に出ない方がいい」という義弟に、頼み込んでコンビニエンスストアに寄ってもらいました。刑務所では甘いものをほとんど食べられないので、甘いものを買いたかったんです。
「僕が買ってきます」と言う義弟に、「頼むから俺に選ばせてくれ」とお願いして、アーモンドチョコレートなどを“大人買い”しました。
――刑務作業で稼いだお金で甘い物を買ったのですか。
そうです。使わないでとっておこうかとも考えたのですが、早く刑務所のことを忘れてしまおうと思って、使いました。
●「寝ていられるだけ寝てます」――出所後の日常
――最近はどんな毎日を送っていますか。
寝ていられるだけ寝て、起きていられるだけ起きてます。刑務所は規則正しい生活だったので、その反動で自由に生きる幸せに浸っています。
――先ほどからタバコをおいしそうに吸っていますが、これも刑務所で吸えなかった反動ですか。
出所後に自由を味わいたくて、タバコを吸い始めました。最初は「1本だけ」と思っていたのですが、それがあだになってしまいましたね。
――暇な時は何をしていますか。
テレビっ子なので、仕事がないときはずっとテレビを見ています。CDを聞いたりもします。
――お気に入りのテレビ番組は。
若手のお笑い芸人が出ている番組を見ていますね。「間がちょっと違うな」と、プロの目線で見てしまいます。
――注目しているお笑い芸人はいますか。
「ハイキングウォーキング」の鈴木Q太郎さんです。見ていて何だかくすぐったい感じがして、気になります。
――最近のテレビ番組に対して何か言いたいことはありますか。
クイズ番組、多すぎ!
●ダジャレを考えるコツを伝授
――「ダジャレの帝王」として、ギャグを考えるコツを教えてください。
くだらないことでも言い続けることかな。言い続けているといつしか、「ダジャレの帝王」とまで呼ばれることもあります。
俺は、寝ようと思ったときに急に思い出しておかしくなるような、じわじわ効いてくるダジャレを目指しています。
――ウケなくてもダジャレを言い続けるのは、心が折れそうですが……。
くだらないことを言ってウケない自分も好きなんです。ウケると逆にびっくりするくらいです。
――刑務所でもダジャレを考えましたか。
刑務所で体をきたえるためストレッチしているときに、「ストレッチという言葉は、“ひとりえっち”に似てるなあ」と考えたりしましたね。昔の田代が出てきて、「似てる言葉ないかな」と探してしまうんです。
――……。今後の夢は。
俺が事件を起こした後、手のひらを返した人もいましたが、変わらない人たちもいました。底辺まで落ちた俺が頑張っているところを、子どもや家族、ファンに見せたい。ちゃんとした職を持って、汗水たらして働いて、1からやり直したいです。
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