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発信箱:誤ナントカ=福本容子(経済部)

 ゴタンチと聞き、何だそれ?と思った。探知が日課の人には違和感がなくても、一般の耳にはピンと来ない。毎日新聞の記事データベースで過去22年分を検索してみると……。「誤探知」の初登場はやっぱり4月4日だ。

 誤ナントカという言い回しは少し前から気になっていた。最初は05年12月のジェイコム株「誤発注」騒動。「61万円で1株売る」という注文をみずほ証券が「1円で61万株売る」とやった一件だ。

 このあたりから誤ナントカが急に広まった気がする。誤入力、誤表示、誤送信、誤請求、誤配当、誤課金、などなど。誤振り込み、誤仕分けなんて使用例もある。秀逸は「機内食の誤提供」。一度下げた食事を間違って別の客に出したという失敗らしい。

 誤の付く言葉は昔からある。誤報、誤診、誤審に誤解。こういう伝統的誤ナントカは、誤プラス1字が多い。誤報道(誤情報)→誤報、誤審判→誤審と進化した跡がある。他人から先に責められるケースが多く、辞書に載っていて、変換キーですぐ出る。

 今どきの誤ナントカは誤の後に2文字以上が一般的。電子化、自動化されたシステムの周辺で起きることが多く、当事者自ら、さらりと使う。

 誤1字で事足りるのはとても便利。みんなで使っていると違和感もなくなる。でも、今どきの誤ナントカは、どこか責任をあいまいにしている。発注ミスと言わないのはなぜ? ミスは「誰の」がはっきりするけど誤発注なら機械やシステムのせいにもなる。

 誰が何してどうなった、が分かりにくい「誤」はご用心。メディアもそのまんま使っていると意図的なあいまいや責任回避に加担することだってある。つまらぬ誤心配?

毎日新聞 2009年4月10日 0時09分

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