国の直轄公共事業費の一部を地方が負担する制度をめぐり、全国知事会と関係閣僚の初の意見交換会が開かれた。制度の見直しについては物別れに終わったが、地方の首長と国との直接対話が実現したことは前進だ。
きっかけとなったのは、大阪府の橋下徹知事が投じた一石だった。昨年十二月、二〇〇九年度予算で国への負担金の満額支払い拒否を表明。地方負担金見直し論議に火を付けた。
香川県では国土交通省の出先機関の庁舎移転費約七億円の負担のほか、四国整備局が職員給与と退職金計約三億一千万円を請求していたことが判明。茨城県は〇八年度の負担金約四十八億円の支払いを保留するという行動に出た。
また国交省の資料で、〇八年度は全国二十四(十八都県)の出先機関の庁舎改修費のうち、三分の一に当たる十八億一千万円の支払いを関係自治体に求めていたことも明るみに出た。これでは、地方から不満の声が強まるのも当然といえるだろう。
意見交換会では、知事側が将来的に公共事業の実施権限と、これに見合う税財源を大幅に国から地方へ移すよう主張。それまでの改善措置として過去の分も含めた負担金の内訳を提示することや、出先機関の庁舎整備費、職員の人件費などの負担金廃止を訴えた。
これに対して金子一義国交相は制度見直しについて「意見を預かり、検討する」と明言を避けた。だが、〇八年度分の負担金の内訳を早急に開示するとの確約を国側から引き出したのは成果といえる。
橋下知事が「ぼったくりバー」と表現したように、地方に請求される出先事務所の整備費や人件費などの負担金は大枠で、明細書はないからだ。内訳の情報開示を起点に、負担金制度の改革を議論していきたい。
ただ、知事の中には負担金廃止で公共事業の総量が減ることを不安視する声などがあるように、地方側も決して一枚岩ではない。問題点を整理しながら一つずつ取り組まねばなるまい。
政府、与党は、公共事業の地方負担軽減のため国が九割まで実質的に補てんする新交付金を追加経済対策に盛り込む方針だが、期間限定の経済対策であり、負担金問題とは切り離して考えるべきだろう。
行政責任は、単独の主体に一貫して任せるのが自然だ。負担金をめぐる話し合いを、国と地方の役割と責任の所在を明確にする分権論議を進展させるための好機としたい。
政府、与党は深刻な景気後退に対応する追加経済対策をまとめた。財源の裏付けとなる二〇〇九年度補正予算に盛り込まれる財政支出は約十五兆四千億円、事業規模は総額五十六兆八千億円に上る。
金融危機だった小渕政権時の一九九八年度第三次補正の約七兆六千億円を超え過去最大の財政出動となる。政府、与党は十日に正式決定する方針だ。
内容は、非正規労働者への新たな安全網や中小企業への資金繰り支援など緊急対策に四十四兆五千億円、公共事業の地方負担の九割を国が肩代わりするなど「安心と活力の実現」に三兆五千億円を配分した。
環境対応車への買い替え補助や省エネ家電の購入促進、介護や医療従事者の処遇改善など、中長期的に成長が見込める分野には手厚くした。日本経済を外需依存から内需主導へ転換するのに欠かせない。
富裕層優遇と批判のあった住宅購入時の贈与税減税、公明党が主張した「子どもと家族応援手当」も一年限りの措置として認められた。次期衆院選をにらんでさまざまな政策の「大盤振る舞い」となっている。投入した金額に見合うだけの景気浮揚効果があるのか、冷静に見極めることが重要だろう。
財源は「霞が関の埋蔵金」と呼ばれる財政投融資特別会計の積立金などでは足らず、十兆円を超える追加国債の発行は避けられない見通しだ。国の借金は八百兆円を超え、先進国中では最悪の状況だけに財政健全化の道筋が大きな課題となろう。
民主党も、子ども手当の創設や高速道路無料化など、二年間で二十一兆円規模の財政支出を伴う緊急経済対策を決定した。日本経済を再び成長軌道に乗せるため、国会の場で議論を深めてもらいたい。
(2009年4月10日掲載)