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“親日”台湾映画に噛みついた中国の狼狽(4)

『海角7号』に熱狂した台湾庶民はやっぱり親日だった。
中国発のネガティブキャンペーンの舞台裏を暴く


ノンフィクション作家 河添恵子

■お得意の「南京大虐殺」『海角七号』に対抗?

 昨年十二月八日、中国で「ん?」と首を傾げたくなる報道があった。

 十一月中旬に行われた広東国際観光文化フェスティバルで改革開放三十年を祝って熱唱したジャッキー・チェンが、報道陣に対し、「父親はかつて国民党のスパイで、母親は上海では知られたアヘン売人だった」と告白。その上で来年(つまり今年)、中国電影集団公司(国営の映画会社)と子ども向けの自伝映画『少年成龍(仮)』を制作すると発表した--という報道だ。ジャッキーがかつて語った、「父方の祖父母は南京で空爆により死亡。南京に日本軍が侵攻し、父は最初の結婚相手との間の息子二人(つまりジャッキーの異母兄弟)と離れ離れになった。母の前夫も日本軍の爆撃で殺された」、そんな家族のストーリーを含めた映画なのだろう。

 ちなみにジャッキーは「台湾は中国の一部」と発言してみたり、前々回の台湾総統選挙直前に起こった銃撃事件を 「天大的笑話(大コメディ)」などと揶揄したりと、台湾では人気ガタ落ち。本業が振るわないせいか、近年は中共のスポークスマン的な役割にご執心のよう。

 北京五輪の開閉幕式の総監督を務めた張芸謀監督も、五輪開催中のインタビューで「次回作の候補の一つは南京事件を題材にした内容。みなが歴史を忘れることがないよう。歴史を鏡とすれば、世界は平和と友好が得られる」などと優等生コメントをしている。

 どうやら中国、お得意の「南京大虐殺」大喧伝で台湾の“海角七号現象”に冷や水を浴びせるつもりなのだろう。

 なにせ、昨年に再開された両岸関係の交渉は、中国にとって面子を潰された以外の何ものでもなかった。

 まずは十月二十一日、中国の張銘清・海峡両岸関係協会副会長が民進党の地盤、“超アウェイ”の台南で味わった出来事は〈赤っ恥劇場〉だった。メディアを付き従え台南市内の史跡巡りをしながら、昔の大砲を眺めていた張副会長は、「台湾が独立を主張しなければ、戦争は永遠に起きない」などとエラそうに発言。続々と集まってくる市民から「毒ミルクを謝罪しろ〜」「台湾独立万歳!」などと罵倒される。その場を去ろうとしたところで、メガネが吹っ飛びすってんころりん。プライドはズタズタだっただろう。で、訪問日程を繰り上げ高雄空港から台湾を脱出。ところが台湾のTV各局は、張副会長の「転んだ」映像を何度もリピートしながら、「殴られ転倒派」と「勝手に転んだ派」の二つに分かれて喧々諤々…。

 十一月上旬、今度はトップの陳雲林会長が訪台したが(個人的には、よく来たなぁと感心)、これも大荒れとなった。陳会長が泊まるホテルへ、民衆が大勢押しかけて抗議行動が行われ、裏口から移動というトホホな日々。部屋で『海角七号』を鑑賞したという陳会長は、「台湾の海は美しい」「馬拉桑(映画に出てくる粟酒)が美味しかった」「作品を観るべきだ」などと述べたそうだが、はらわたが煮えくり返っていたハズ。馬総統との会談を五分程度の記念品交換で切り上げ、帰国後は「皇民化のきらいがある」と批判、態度を一変させている。

 続く

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 【略歴】河添恵子氏
 昭和38(1963)年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学を卒業後、1986年から北京外国語学院、翌87年から遼寧師範大学へ留学。主に中国、台湾問題をテーマに取材、執筆活動を続ける。『台湾 新潮流』(双風舎)、『中国マフィア伝』(イースト・プレス)、『中国人とは愛を語れない!』(並木書房)など著書・訳多数。