|
きょうのコラム「時鐘」 2009年4月10日
危ない、危ない。金沢の男性が釣ったフグを自分で料理し、食中毒になった。幸い回復したそうだが、命あっての美味である
フグには、ふるさとが誇る「コンカ漬け」がある。猛毒を含む卵巣を塩に漬け、ぬかに漬けると、やがて比類ない味に変わる。その「奇跡のからくり」は、分かっていない。分からないから、先人の製法から1歩の脱線も許されない。毒退治の伝統的な手法が愚直に守られている 毒を抜く手法があれば、毒を保つ手だてもある。ミサイル発射を「祝砲」として、北朝鮮の第3期金正日体制が発足した、と外電が報じた。独裁という猛毒は、60年たっても消滅しない。書くのもおぞましい恐怖政治が、父親から教わった通りに明日も続いていく モノの本によると、フグの肝臓は、さっぱりした美味という。禁断の味に誘惑された命知らずが、どこかにいた。独裁という禁断の味も、当事者の醜い欲望を満たすが、末路の哀れさも歴史は教える フグの産地は数あるが、毒抜きの逸品は当地だけである。毒の退治は、やはり至難の業なのか。かの地の空虚な「祝賀」騒ぎに、心が寒くなる。 |