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力増す若手個性派

第23回朝日オープン将棋選手権・本戦トーナメント展望



 羽生善治選手権者への挑戦権を争う第23回朝日オープン将棋選手権(朝日新聞社主催)の本戦組み合わせが別表のように決まった。前回のベスト4やタイトル保持者らシード棋士16人と、予選を勝ち抜いた16人の計32人による戦いが今月末から始まる。最近のプロ棋界の話題を交え、注目する棋士や本戦の見どころなどについて、羽生選手権者、中井広恵女流二冠、観戦記者の東公平氏に語り合ってもらった。(司会・村上耕司)

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羽生善治選手権者
羽生善治選手権者 埼玉県所沢市出身。96年に七冠制覇。現在は王位・王座の二冠を保持。

 ● 3氏座談会

 ――加藤一二三・九段が精力的に執筆活動をされているそうですね。

 羽生 自分の考えや読み筋などを書き残したいというお気持ちがある。有吉先生もそうですが、60歳を過ぎて情熱を失わないのはすごい。

 中井 これからの棋士は60歳を過ぎても活躍するのでは。大切なのは家庭環境ですね。家庭がいいと仕事に集中できる。

  昔の大山康晴、升田幸三は60歳を過ぎても名人を取ってやるという迫力があった。今の棋士にもそういう迫力を見せてほしい。

 ――最近のプロ棋戦で反則負けが続きました。

 中井 時間がなくて集中力が切れたときに事件が起きる。私は反則はしたことがないけど、読みの中に反則とか大ポカが入っていて、ハッとすることはよくあります。

 羽生 たまたまだとは思いますが、褒められたことではないですね。

 ――女流棋界は話題が豊富ですね。

  新鋭の早水千紗さんが女流王位戦の挑戦者決定戦まで行きました。

 中井 岩根忍さん、甲斐智美さんなどの奨励会経験者が女流棋士になって、若手の競争が厳しくなっています。今年は12歳の里見香奈さんが女流棋士になり、10歳の伊藤沙恵ちゃんが奨励会に入りました。みんな若いから、将来が楽しみです。

 羽生 10代で強くなるのは当然ですが、中井さんと清水市代さんは20代後半でまた伸びた。そこがこれまでになかったことだと思います。

 中井 環境がよかったですね。清水さんというライバルがいたこと。同世代の男性棋士に強豪がたくさんいたこと。男性棋士との公式戦を指せるようになったこと。男性棋士との対戦は感想戦だけでも勉強になります。

 ――中井さんは前年度のNHK杯で畠山鎮六段と青野照市九段を破り、今年度も佐藤秀司六段を破りました。

 中井 早指しは得意じゃないので、自分が一番びっくりしています。

中井広恵女流二冠
中井広恵女流二冠 北海道稚内市出身。女流王将・倉敷藤花の二冠を保持。埼玉県蕨市教育委員。

 ――羽生さんはタイトル戦に出ずっぱりですが、最近はいろんな将棋が見られますね。

 羽生 今、一つの戦型だけやっているのはよほど自信のある人。こちらは手を変え、品を変えで行かないと。

 中井 「この形になったら試してみたかった」という言葉をよく聞きます。みんないろんな手を準備しているんですね。

 羽生 とはいえ、一つの戦法でも窮めるのは大変です。それが5とか10になると手に負えない。最近は研究会や情報網の発達で、公式戦に出る前に結論が出てしまう。進歩のスピードが速すぎて公式戦で新手が出る時代じゃなくなった。

  棋士がみんな勉強熱心になりましたね。昔は一つの新手で2度も3度も勝てた。

 羽生 そのうち対局者の感想もインターネットで見られるようになるかもしれない。ただ、どこまで情報を重視するかが問題です。自分で考える力や創造性がなくなっては、元も子もない。

 ――情報化によって、アマチュアの力が伸びたとも言えますか。

 羽生 プロとアマには力の差以外に知識の差もあったけど、それがなくなってきた。持ち時間が短くなればもっとアマが勝つのではないですか。

 ――今期の朝日オープンでは、アマの天野高志さんと桐山隆さんが3回戦まで勝ち進みました。

 羽生 天野さんは知識より力で指す。今はそうしたタイプのほうがプロには勝ちやすい。桐山さんは独特の棋風。初めて対戦した人はとまどいそう。他のアマとは違う部分で勝っていますね。

 ――今、注目されている戦法はなんでしょう。

 中井 1手損角換わりかな。あれを見ると、常識は変化していくものだと思います。

  阪田三吉が土居市太郎を相手に指しています。昔は変なことをするとしか思われなかった。

 羽生 今のプロは実用主義ですね。8五飛も1手損角換わりも藤井システムも、理論的にはおかしな戦法だと思うけど、やってみれば大変。異端が見直されている。いいことだと思いますね。

東公平・観戦記者
東公平・観戦記者 神戸市出身。38年にわたり本紙将棋欄に観戦記を執筆。指導棋士四段。

 ● 本戦を展望

 ――まず予選を突破した棋士を見てください。

  阿久津さんの活躍が目立ちますね。一皮むけた気がする。

 中井 私も負けたんです。早見えの才能派ですね。持ち時間3時間でも長いくらい。

  阿久津さん、佐藤和俊さんがよく勝っています。

 羽生 佐藤さんは独自路線の振り飛車党。最近の若手に多いんです。

 中井 他に杉本さんや中村亮介君。振り飛車党の活躍が目立ちますね。

  宮田敦史さんは特異な棋士ですね。

 羽生 策を凝らし、必ず秒読みになる。最近の若手には珍しいタイプ。

  宮田さん、渡辺明さん、松尾さんは所司門下のスーパートリオと呼ばれている。

 ――では本戦の見どころをお願いします。まず右上のブロックから。

  本命森内、対抗渡辺。どちらも今乗っている。南さん、中村修さんと、かつてのスターにも頑張ってほしい。

 中井 森内さん、深浦さん。それに早指しの強い鈴木さんも注目です。

 ――では右下は。

 羽生 堀口、宮田、松尾といった若手と実績ある強豪の組み合わせ。宮田−久保戦は緻密(ちみつ)な読みと軽いさばきで対照的な棋風。ここは誰が出てきても不思議じゃない。

  本命なきブロックですね。

 羽生 丸山さんは最近、横歩取りをやめて注目されています。それから三浦さん。力戦もやるし、終盤まで突っ込む定跡形もやる。特異です。

 ――左上に行きます。

 中井 山崎さんや佐藤和俊さんら若手が、先輩とどんな将棋を指すか興味があります。

 羽生 僕も山崎さんに注目します。彼は五段だけど、相当上位の力を持っている。3時間制も合っている気がします。藤井さんは今や若手振り飛車党の教祖。藤井システムは私もたまにやるけど、本当に指しこなすのが難しい戦法です。

  木村さんも実力者ですね。

 羽生 粘着力があり負かしづらい将棋の典型です。あと佐藤康光さん。この棋戦ではあまり活躍していませんが、本来は3時間でも苦にしない。

 ――では左下を。

 羽生 中原先生を筆頭に実績のある人が多い。中原先生は会長職との兼ね合いで大変だと思いますが、経験はケタ違いなので、他の人とは違った将棋が見られそう。

 中井 朝日といえば谷川先生。谷川−中村戦は異色のカードです。谷川先生、あの髪形を見てどうするか(笑)。

  中原−谷川戦が見られるかどうか。

 羽生 近藤さんのゴキゲン旋風にも注目。それから屋敷さん。若い頃はよく意表を突いて勝っていたけど、今はむしろ堅実。郷田さんは逃げない棋風。長考派だけど、短い将棋も得意です。

 ――最後にずばり優勝候補を挙げてください。

 羽生 谷川、森内、深浦、山崎。でも、外れる予感がする。今までのパターンでは、地力はあるけど実績のない人が出てくることが多いので。

 中井 実績の谷川、勢いの渡辺、仲間内の評価が高い堀口、木村。

  五番勝負に話題を提供する意味で、渡辺、宮田、木村、中原。

 ――1回戦から注目の対戦がたくさんありそうですね。今日はどうもありがとうございました。

(2004年9月28日朝日新聞朝刊紙面)

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