出版物原水禁ニュース
2004.04号 

【短信】

◆ヒバクシャ、ノーベル平和賞に推薦

 世界で初めて政党にクオータ制(議員の内、一定数を女性に割り当てる)を導入した女性として知られる、ノルウェー・オスロ大学名誉教授で政党の党首を務めるベリット・オースさんが昨年5月に来日し、講演の合間を縫って広島の原爆資料館を訪れ、さらに広島市長にも会った。その際、市長から「ヒバクシャはノーベル平和賞候補にならないものでしょうか」と言われた。
実はノーベル平和賞だけは、ノルウェー国会が任命する5人の選考委員会が受け持っている。
さらに平和賞候補にノミネートさせるには、しかるべき資格と肩書を持った推薦人2人の署名と、優れた推薦文が必要である。オースさんは、平和賞に推挙できる資格を持っている。
昨年8月、オースさんの来日をコーディネートした三井マリ子さん(大阪府・豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」館長)が、ノルウェーの国際会議に参加し、被爆国日本の代表としてスピーチを行った。スピーチの後、オースさんは三井さんに駆け寄り、「日本のヒバクシャを必ずノーベル賞候補に推薦する」と述べたという。
しかしその後、オースさんは帯状疱疹と椎間板ヘルニアを患うことになった。その苦しみのなかでオースさんはノーベル平和賞への推薦文を書き続けたという。彼女は三井さんへの手紙に「あまりに痛くて途中で書くのをお休みします」と書いてきた。燃えるように体中が痛く、耐えられなくなるのだという。
 そうした苦しみの最中、広島・長崎のヒバクシャをノーベル平和賞候補に推薦する文書を書き、先月末ノーベル平和賞委員会に提出した。「今年度の締切日の最終日に間にあわせた」と三井さんへの手紙に書いてあった。さらにノルウェー語の推薦文のコピーが同封されていた。「マリ子、今の私には正確に英語に翻訳してくれるボランティアを探すエネルギーがありません」と書かれてあった。三井さんはその推薦文を広島市長に送ったという。
まだ広島・長崎のヒバクシャがノーベル平和賞に推薦されたというだけで、詳細は不明である。しかし考えてみれば、広島、長崎のヒバクシャが、現在に存在していることが、ノーベル平和賞に値するのだ。私たちはオースさんの健康回復を願うとともに、ヒバクシャがノーベル平和賞を受賞することを心から期待したい。


【編集後記】

●核問題入門は今回は紙面の関係で休みます。次号から、日本核武装論についてもさまざまな視点から書いていきます。
●左の欄でヒバクシャがノーベル平和賞に推薦されたことを知らせてくれた三井マリ子さんは、昨今始まっているフェミニズムに対するバックラッシュ(男女共同の流れに反対する運動)の中で、04年度よりの「すてっぷ」館長に再任されませんでした。
●先日久しぶりに映画を観ました。「アドルフの画集」で、アドルフとはもちろん、アドルフ・ヒットラーのことです。時代背景はいまとはずいぶん異なりますが、閉塞感がただようという点で、つい現在と重ねてしまいました。お薦めです。
●ついに有事7法案が国会審議にかかります。日本の未来が問われようとしています。

(W)

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