それでも、実際の株価は右肩上がりせず、不安定な動きを見せている。それは株価と景気動向に対する投資家の半信半疑の心理が働いているからである。
右往左往する個人投資家たち
中国の株式市場の特徴は、個人投資家の多さである。中国の1億2000万の証券口座のうち、97%は個人投資家だ。これらの個人投資家のほとんどは株取引の知識を十分に持っていない。個人投資家の多くは、2007年に株価が急騰した頃に株が引き続いて上昇するものだと思い込み、株式投資を始めたのである。
株式投資のリスクを十分に認識していない個人投資家は株価が下落した途端にパニックに陥り、ちょっとした噂に左右されてしまう。そのため、1990年株式市場が設立して以来、株価は極端に不安定な推移を示している。
個人投資家の多くは4000~6000ポイントの高位で株を買い込んでしまった人たちだ。個人投資家の多くは、「儲からなくてもかまわない。損さえしないのであれば、手持ちの株を売ってしまいたい」と考えるようになった。その結果、株価が少しでも上昇すれば、売りが殺到し、消化試合の展開になっているのである。
目下の株価上昇をただ喜ぶわけにはいかない
目下の株価上昇は、政府による景気刺激が背景にある。しかし筆者は、現状における株価上昇には以下のような問題点があると考えている。
第1に、株式市場の改革が先送りされる中で、流動性の供給による株価対策を行えば、株式投資に対するさらなる不信を招くことになる。
第2に、上場企業の業績改善がないまま、株価を人為的に押し上げるのは新たなバブルにつながる恐れがある。
第3に、政府行政による株式市場への介入は市場機構の歪みを拡大させ、市場の失敗に加え、政府の失敗につながる。
したがって、目下の株価上昇をただ喜ぶわけにはいかず、冷静に見る必要がある。中長期的に投資家の信頼を取り戻すために、株式市場と関連の法制度を含む抜本的な改革を実施することが重要なのではないか。