一転して金融緩和で景気刺激へ
中国政府はこうした状況を見て、景気のさらなる冷え込みに対する警戒感を強めた。そこで、それまでの景気引き締めから金融緩和へと、大きく方針を転換した。
しかし、景気後退局面に突入してから金融緩和へ方針転換しても、景気が回復するまでには時間がかかる。そこで政府は2008年11月に、4兆元(約56兆円)もの思い切った財政出動を発表した。
本来ならば、緊急な財政出動は一般会計ではなく、補正予算の実施に当たるため、全国人民代表大会(「全人代」、日本の国会に当たる)を召集し、チェックする必要がある。だが、4兆元の景気対策は、全人代でのチェックを受けずに、その一部がすでに実行に移された。
問題はその中身にある。経済成長をボトムアップする必要性から、即効性のある公共政策をたくさん盛り込んでいる。しかし、バラマキ型の公共工事を実施しても、成長率が多少上昇するかもしれないが、内需がそれほど刺激されない。成長率の上昇は一過性に過ぎず、このまま行くと、2009年以降の中国経済は大きく落ち込む可能性がある。
それだけでなく、非効率な財政出動の結果、財政赤字が膨らみ、政府のバランスシートが大きく壊れてしまう恐れもある。
2009年3月の全人代では、4兆元の財政出動の財源配分が少し調整され、公共工事から消費を刺激する民生プロジェクトの方に少しシフトされている。しかし、8%成長を実現するには十分とは言えなさそうだ。
過剰なマネーサプライがもたらした株価上昇
政府は、財政出動と同時に思い切った量的金融緩和政策も進めている。
人民銀行が公表した報告書によると、2009年のマネーサプライの目標は5兆元(約70兆円)と言われている。しかし、1月のマネーサプライ(実質値)は1兆6000億元に達し、2月も8000億元以上(同)だった。すなわち、わずか2カ月で半年分のマネーサプライを供給してしまったということになる。
行き過ぎた景気引き締めからマネーサプライを過剰に供給する「超・量的金融緩和」への方針転換こそ、今回の株価上昇の背景のようだ。
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