学年末試験の採点をしていてハッと気づいた。 な、なんと、あのハートマークみたいな、まるまっちい、ローマ字の筆記体みたいな、可愛い字の答案が1枚もないではないか! まる字というのか変態少女文字というのか、角のない、あの字体である。数年前まではときどき見かけた。しかし今年はついに1枚も見かけなくなった。まる字の盛衰は制服のミニスカートとルーズソックスの盛衰に重なっているように思うが、どうだろうか。 それだけではない。たおやかでやさしい、柳腰を字に写したような、いわゆる女文字がほとんど姿を消してしまった。それどころか、しっかりした楷書体の、きれいで読みやすい字も少なくなった。 というわけで、この数年間で、女子学生の字体が大きく変わったように思う。要するに下手になった。そして男女差が小さくなったのである。 わたしの立場をあらかじめ言っておくと、わたしは女子の字が汚くてもいいじゃないかという立場である。しかし世間一般にはどうだろうか。字の書き方とか言葉づかいとか身のこなしとか料理の技能とか、一般に男女差があると認められていて、かつ女性のほうが優美ととらえられる差があるときに、その差がなくなるのは非難の対象になる。 非難されるのはもちろん女性である。いわく「女の子の言葉づかいが乱れている」、いわく「女らしさがなくなっている」、いわく「女の子なんだから料理くらいできなきゃ」……。 この数十年間というもの、ずっと引き続いて女性の伝統的な優美さが崩れてきている。そしてそのことに対する漠然とした非難の感情が中高年層を中心に渦巻いている。『女性の品格』といった本が売れるわけである。この本の著者は男女共同参画を先頭に立って推進してきた人だが、著者の思いとは少しずれるところで本は大ベストセラーになった。 わたしの立場をもう一度繰り返しておくと、若い女性の字が汚くなったくらいでガタガタ言うなという立場である。いいじゃないか。その分男の字がきれいになっている。整えた眉みたいな字を書く男子がふえている。どうせなら、そっちを誉めてやろうじゃないか。 ところで漢字の話に戻ろう。 漢字検定を主催している団体が公益法人らしからぬ経営をしているのではないかと騒がれている。漢字検定のおかげというのではないと思うが、気のせいか学生の答案から誤字脱字の類は減っているように思う。以前は腹を抱えて笑うような創作誤字や創作熟語がよく現われたが、このごろは心の底から感心する誤字脱字はめっきり少なくなった。 今年の答案から拾ってみると、「浸透」を「侵透」、「価値観」を「価値感」、「無関心」を「無感心」などは昔からよくある誤字である。ちょっと感心したのは「明確」を「名確」。有名な学説を説明している部分だったので、あまり違和感なく読んでしまった。けっこうすごいのは「庶民」を「諸民」。今年いちばんすごいと思ったのは「犠牲」を「義性」としたものだった。「義性」ってなんじゃいな? 冒頭で述べたまる字の衰退だが、これは携帯が普及したせいではないかと思う。小学生のころから携帯でやりとりしているので、手紙やノートにまる字を書いてやりとりする機会がなくなったのだと思う。 |
3月30日〜4月5日
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