Buon Anno! 新年おめでとうございます。今年もイタリアから楽しい報告が出来るように頑張りますので、宜しくお願いいたします! 2008年初回の報告は、光栄なことに『イタリア一の菓子職人』のご紹介です!!
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ヴェスーヴィオ火山が裾野から見渡せる、ナポリ市外の小さな小さな町の菓子職人が、コンクールで金メダルを受賞。それも1回や2回だけではないのです! イタリア国内はもちろん、他のヨーロッパの国々でもコンクールに出てはメダルを受賞していき、ついには2003年、イタリア国内最高峰の選手権に優勝……30歳という若さでトップの菓子職人として名声を高めたのは、パスクアーレ・マリリアーノ氏です。
パスクアーレ氏が菓子の世界に入ったのは、なんと12歳の頃。ナポリでは学歴よりも職人気質、手に職を持つ事が大事に思われていますので、パスクアーレ氏もこんなに若い内から経験を積み始めていたのでしょう。そして生涯の生業にすることを決め、20歳の時には単身フランスへと修行に出かけます。日本でも有名な、高級食材店のフォションやル・ノートルなどでも修行をしました。
画像左:一軒家の小さなお店が、欧州で有名なパスクアーレ氏の菓子店です。
画像中:店内の様子。左端の女性はパスクアーレ氏のフランス人奥様で、お客様の対応を担当されています。
画像右:店内の様子。上にズラリと並んでいるのはパネットーネ。全て予約済みです。
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数年間の修行の後、自分の生まれた土地に戻り、そこで菓子店を開店しました。彼の才能なら、イタリア国内でもミラノやローマにお店が持てたと思いますが、やはり、こちらの人々は『自分の土地』=『故郷』に掛け替えのない愛情を持っていますので、パスクアーレ氏もこの地以外に開店は考えなかったのでしょう。
ナポリ市外と言ってもいろいろな町がありますが、パスクアーレ氏の故郷の町は、本当に小さな小さなところです。彼のお店がなければ、住民以外は誰も来ないで、素通りするような、そんな感じ……。でも、今はパスクアーレ氏のお店がある! イタリア一の職人の菓子店がある!! ……と、いうわけで、わざわざ遠方からもやってくるお客さん達で、お店はいつもいつも満杯です。
画像左:クリスマスや大晦日は予約がメイン。こうしてショーケースに予約なしのケーキも並ぶことがあっても、展示されてすぐに完売になってしまいます。
画像中、右:色とりどりのフルーツ型マジパンに、イタリア伝統ケーキのカッサータ。
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フランスで修行してきた洗練された菓子職人というと、なんかちょっとスノッブなイメージを抱いてしまいますが、パスクアーレ氏はさすがにナポリの人!! とても気さくで明るく、しかもとても腰の低い人でした。
私は工房にも入れていただき、仕事ぶりも拝見させていただいたのですが、仕事に入っても、気さくさと明るさは失いません。仕事に入れば厳しい顔にもなるか…と思ったのですが、終始とても優しい顔で仕事をされていました。もちろん、視線に『鋭さ』はありますが、それは決して厳しさではなかったのです。
そんな優しい視線のパスクアーレ氏のドルチェ(Dolce:デザート)は、ご本人そのものを表すような感じです。とがったところが一切なく、単純に『美味しい!!』。砂糖や生クリームをバンバン入れて、甘さでごまかす菓子職人が多い中、パスクアーレ氏は、材料1つ1つを吟味し、軽い仕上がりなのに、それぞれの素材の味が感じられる極上のドルチェを作ってくれています。
画像左:チョコレートケーキにお祝いの言葉を入れて仕上げるパスクアーレ氏。
画像中:チョコレート関係の仕上げが終わったと思ったら、次は巨大カッサータの用意。従業員一同、テキパキと動き、迅速にケーキ作りが行われていきます。向こう側にはTVのカメラマンがいて両側から取材状態でした。
画像右:デコレーションももちろんパスクアーレ氏が仕上げます。
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例えば、イタリアでのクリスマスのお菓子の定番となっているパネットーネですが、なんと120年も生き続けるという天然酵母を元に、手作りバター、提携先の限定小麦粉などの材料で作られます。ほんの香り付けでしかないバニラも、タヒチ産を厳選するというこだわり。その上、中に入るドライフルーツも全種類パスクアーレ氏のお店で作られるものですし、これが美味しくないわけはありませんよね! 我が家でも、大人達が、まるで子供のように奪い合いで食べきってしましました。
それからカッサータ。シチリア生まれのこのお菓子は、軽いリコッタチーズがメインでありながら、甘いものが多いイタリアのドルチェの中でもひときわ甘く、あまりにも甘くて食べれない人もいるくらいのお菓子なんです。でも、素材厳選、手作りの忠実さで勝負するパスクアーレ氏のカッサータは、他の味とは全くの別物!! もちろん甘いのですが、それが何の甘さかちゃんと分かるので、本当に心から「あ??美味しいね!」と、思わず笑顔がこぼれてしまうケーキなのでした。
『スローフード』とはイタリアの料理人が言い出して世界に広まった言葉ですが、言うなれば、パスクアーレ氏は『スロースイーツ』を実践して作っている人だと思います。手をかけ、時間をかけ、商業的ペースにはせず、あくまで『手作り』の姿勢を守り、自分の目の届く範囲の、小さなお店で作り続ける……。
先にも書きましたが、本来なら、ここまでの受賞歴のある職人さんなら、イタリア国内でももっと中心のローマやミラノでもお店を開いて人気店になると思います。でもそれをしないで、地元の小さな店だけでやっていくのが凄いですよね!!
画像左、中:クリスマスの伝統お菓子パネットーネ。パスクアーレ氏の作る絶品パネットーネは全て手作りのため、予約でないと買えません。
画像右上:大晦日のお店のイベント用に作られた巨大カッサータ! その周りにも、年末年始の時期に食べられる伝統菓子の数々が。
画像右下:パスクアーレ氏の片腕である菓子職人さん。
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自分の根っこを一番に考えて地元にお店を構えたパスクアーレ氏。交通の便も車しかない、とても不便な町ですが、それでも、遠方から彼のスイーツを求めて多くの人たちがやってきます。美味しい物の為なら、遠距離も苦にならず…という感じで。
私の自宅からも、同じくナポリ市外の町のありながら、方向が違うために、渋滞がない状態で車で片道30分という、ただケーキを買いに行くには結構な距離なのですが、一度パスクアーレ氏のスイーツを食べてしまうと、片道30分でも『もっと遠方から来る人も多いのだし、近くで良かった!!』なんて思うのです?!
ちなみに……私が取材に行ったのは2007年のクリスマスイヴと大晦日でしたが、31日にはイタリア国営放送のRAIも取材に来ていました。若くしてイタリア一の菓子職人になった人のお店ですから、もちろんこういうマスコミの取材も日常茶飯事ですが、そんな時に私のミニ取材もご一緒できて光栄でしたー! もちろん、また何度でもパスクアーレ氏のお店には戻るつもりですので、他のお話が出てくれば、追記させていただきますね。
最後に、パスクアーレ氏のお店の内部まで取材をさせていただいたのは、カプリ島の5つ星ホテル:クイシサーナでメートルを勤めるアルド・デンリーコ氏のご紹介があってこそでした。本当にありがとうございました。アルド氏のいらっしゃるクイシサーナにも、いつか取材に伺わせていただきたいと思っています。
□お店のデータ
店名:Pasticceria Marigliano
住所:via G. D Annunzio n° 23, San Gennarello di Ottaviano ( Napoli )
電話:( +39 ) 081 - 52 96 831
画像左:イタリア国内の食に関するイベントを企画しているエンツォさん。今回のTV取材も彼の企画でした。イタリア全土を知り尽くしているエンツォさんでさえも、パスクアーレ氏はイチオシの菓子職人との事!
画像中:左から、今回の取材の仲立ちをしてくれたアルドさん、エンツォさん、TV局の方、アルドさんの従弟。皆さん、ありがとうございました!
画像右上:取材していた国営放送RAIのカメラマンさん。
画像右下:そして、優しいパスクアーレ氏。クリスマス前から不眠で働き、大晦日でまだ修羅場の最中というのに、笑顔で迎えていただき、本当にありがとうございました。
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【短信】今回の『スロースイーツ』取材は国営放送RAIの取材も同日で、その様子も一緒に撮影できました。とは言え、RAIの取材は菓子作りまで及んだのですが、私の方は時間がなくて最後まで一緒ではありませんでした。今回は、忙しい時期だったので、ご本人にも内助の功の奥様にも詳しい話を聞けなかったのですが、次回の時には、もっとパーソナルな事まで聞きたいな〜と思ってます(⌒-⌒)
そして、去年の12月に『ゴミ問題の解決』に関して書いたばかりというのに、また!!!!その12月に再発してしまいました…。まったくもって、同じことの繰り返しです……。2007年12月よりまた回収に来ない日も出てきたのです。夏以降、新しく設定されたゴミ集積所も既に満杯……もう場所がないので回収に来ない……という状況です。私の住む町は、一軒一軒回収に来ることに改革して『ゴミのない町』になり、他の町やナポリ市内よりも状態は良かったのですが、それでも新年開けて6日以降、またゴミだらけの町に変貌しつつあります。
これはもうナポリだけの問題だけではなく、イタリア全土の社会問題に発展し、毎日、TVで、新聞で、このゴミ問題が語られています。早急にゴミ集積所などの問題を解決してほしいと行政に望みますが、前にも書きましたように、市民の『ゴミに対する意識』がまったくなっていないので、そちらの改革も必要ではないかと思います。行政任せ、他人任せではなく、一人一人がゴミをなくす、減らす工夫をしていかなければ、ナポリのゴミ問題は生涯解決しないように思います。(1/9)
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