2009年04月09日 (木)おはようコラム 「オバマ政権 核軍縮の課題」
アメリカのオバマ大統領はこのほど、核のない世界の実現を目指すため、ロシアとの大幅な核兵器削減を中心とした、新たな核政策に取り組むことを表明しました。秋元千明解説委員に聞きます。
Qオバマ政権の核政策のポイントはなにか?
A冷戦後のアメリカの核政策は、第3世界への核兵器の拡散を防ぐ、核拡散防止に重点が置かれていた。しかし、オバマ政権は、核保有国が自ら核兵器を削減することも重要だとして、ロシアとの核軍縮に取り組む方針だ。オバマ政権は、米ロの戦略核兵器の数を、今後の交渉で、1000発から1500発にまで削減することを提案する方針だという。もし、これが実現すれば、戦略核兵器の数は冷戦終了時のほぼ10分の1にまで減ることを意味する。核兵器を新たに保有しようとする国々への圧力にもなるだろう。しかし、両国とも一方で、核兵器の抑止力に依存する現在の安全保障は続けることでも一致している。つまり、米ロは多すぎる核兵器を廃棄することによって、費用の無駄を省き、少ない数で核戦力を均衡させることに当面の狙いがあるようだ。
Q核兵器を維持するには費用がかかるのか?
A米ロが保有する核兵器の多くは、すでに配備されてから20年以上が経過している。核兵器は古くなると、プルトニウムが劣化したり、起爆装置に不具合が起きるため、修理や更新が必要になる。そのための維持費は膨大なものだ。特に、ロシアは、予算上の問題から老朽化対策が十分に行われておらず、使用可能な核兵器が少なくなってきているという。そのため、ロシアは、アメリカとの交渉で、古い核兵器を廃棄し、節約できた予算を使って、最新型の核兵器の開発や配備を進めたいという思惑がある。つまり、核戦力の量的削減と、質的向上を合わせて実現する方針で、最新型の複数弾頭ミサイル、RS24を近く配備する計画だ。
Qアメリカも同じような老朽化の問題を抱えているのか?
Aアメリカは、毎年、50億ドル、5000億円をかけて、古くなった核ミサイルの起爆装置の改修やプルトニウムの交換作業などを行っているが、老朽化の問題は深刻だ。ただ、オバマ大統領は、現在の管理体制で十分だとして、費用のかかる新型核兵器の開発には消極的だ。しかし、アメリカ議会では、共和党を中心に核兵器の削減で抑止力が低下する懸念から、新型の核兵器を開発して最新の核戦力に転換すべきだという意見が根強い。軍縮条約を議会で批准するには共和党の協力が不可欠であり、オバマ大統領も無視はできないだろう。
このように、オバマ政権の新核政策は、核兵器を大幅に減らすという点では画期的なものだが、当面は、ロシアと協調して、新しくて性能の良い核兵器を維持することが狙いになるだろう。
投稿者:秋元 千明 | 投稿時間:10:53