滋賀県長浜市で06年2月、幼稚園児2人が、他の園児の母親、鄭永善受刑者(37)=中国籍、日本名・谷口充恵(みえ)、無期懲役判決を受け服役中=に刺殺された事件で、被害園児2人の両親が、幼稚園を運営管理する同市と鄭受刑者の元夫を相手取り、逸失利益や慰謝料など計約2億600万円の損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こした。同事件では、鄭受刑者の責任能力が争われた。大阪高裁は今年2月、無期懲役判決を宣告し、その後確定した。
確定判決によると、児童らはグループ通園で鄭受刑者の乗用車で幼稚園に送られる途中、自分の娘がいじめられているという被害意識を抱いていた鄭受刑者に刺殺された。
訴状によると、幼稚園の教諭らは鄭受刑者から「娘がいじめられているのでは」と何度も相談を受けながら、通園のグループ割りに配慮したり、同じグループの保護者らに状況を説明せず、鄭受刑者にも送迎当番を分担させたという。両親らは、教諭らが鄭受刑者の心理状態を把握していながら安全配慮を怠ったとし、市に損害賠償を求めている。
また、鄭受刑者は03年に医師から統合失調症の可能性を指摘され、その後も近所に火をつけたり、家族に暴力を振るうなどの行動がみられたという。その際、精神障害の疑いのある妻を保護・監督する責任があるのに怠ったとしている。
川島信也・長浜市長は「遺族の心情を尊重して真摯(しんし)に受け止めたい。弁護士と協議して対応する」とコメントした。【稲生陽】
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