ミサイル:射程300キロでは北の後方基地攻撃できず
射程距離を拡大すべきという主張が出る理由
韓米ミサイル指針により300キロに制限されている弾道ミサイルの射程距離を伸ばすべき、という主張が相次いでいる。これは挑発の抑制など、軍事戦略上必要となるからだ。
ミサイル指針でも弾頭の重量を500キロ以下とした場合には、射程距離300キロ以上の弾道ミサイルも製造することができると定められている。しかしそうなると威力が弱まり、敵に打撃を与えるという実効性には乏しくなる。そのため射程距離を伸ばすべきという主張が出ているのだ。
専門家は韓国も弾道ミサイルの射程距離を600キロから1000キロほどに伸ばすべきと主張する。現在の射程距離300キロでは、有事の際に北朝鮮後方地域にあるミサイル基地や軍需工場、空軍基地などの戦略目標を攻撃できないからだ。
今回のテポドン2号発射を通じてさらに深刻になった弾道ミサイル戦力の不均衡を解消するためにも、射程距離の延長は必要というわけだ。北朝鮮は韓国全土を攻撃できる射程距離300キロから500キロのスカッドB・Cミサイルを600発以上、韓国だけでなく日本のほぼ全域を射程圏に置く1300キロのノドンミサイルも300発以上配備、保管しているという。さらに3000キロから4000キロの新型中距離弾道ミサイルも配備が完了したとされている。
適正射程距離について、韓国国防研究院の金泰宇(キム・テウ)主任研究委員は「北朝鮮の全域を射程圏に置く一方で、中国、日本、ロシアなど周辺国を刺激しないためには700キロほどが適当だ」と語る。非武装地帯(DMZ)近くから発射するなら、550キロあれば北朝鮮全域を射程圏に置くことができる。しかし有事の際に敵の攻撃から身を守りながら発射するには、DMZから100キロ以上離れた後方からミサイルを発射しなければならない。そのため700キロは必要ということだ。
済州島や南海岸など韓国の後方地域から北朝鮮全域を攻撃できるようにするために、射程距離を1000キロほどに伸ばすべきという意見もある。2001年に行われたミサイル指針に関する実務交渉に臨んだキム・グクヒョン元国防部軍備統制官(現在予備役中将)は、「有事の際に韓国最南端地域から北朝鮮全域を射程圏に置けるようにすべきだ。そのためには射程距離を1000キロに伸ばす必要がある」と主張する。
しかし射程距離が1000キロ以上になると、東京や北京なども射程圏に置くことになり、周辺国が神経質になる。そのため慎重に対応しなければならないという見方もある。
専門家は現在韓国軍が戦略兵器として開発に力を入れている巡航(クルーズ)ミサイルの限界という観点からも、弾道ミサイルの射程距離を延長する必要があると主張する。巡航ミサイルは正確度に優れ、潜水艦や艦艇からも発射できるという強みがある。しかしその一方で、弾道ミサイルに比べて弾頭が小さく射程距離も3000キロ以下に制限されており、戦略兵器として使うには限界がある。
現在、巡航ミサイル開発に当たって、弾頭の重量が500キロ以下なら射程距離の制限はなくなる。そのため韓国軍は射程距離500キロの青竜ミサイルや1000キロの玄武Ⅲミサイルを配備しており、1500キロの玄武ⅢAも開発が進められているという。
ユ・ヨンウォン軍事専門記者
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