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きょうの社説 2009年4月9日
◎正念場の北陸製造業 「負の連鎖」を招く大量失業
三協・立山ホールディングス(HD、高岡市)が発表した従業員千人削減、五工場の休
止・再編という経営改善策は、世界同時不況後の北陸でも異例の大規模リストラであり、地域経済や雇用情勢への影響は決して小さくない。三月の日銀短観では北陸製造業の雇用余剰感の急激な悪化が示されたが、それが今回のような大量離職の形で表れれば、雇用不安が消費を冷え込ませ、景気の足を引っ張る負の連鎖が生じ、悪循環の流れが加速しかねない。企業の人員削減が非正規から正社員へと及んだことも一層深刻である。製造業ではすで に派遣社員をゼロにした企業もある。県や各自治体はこれまで非正規の安全網や雇用の受け皿整備に軸足を置いてきたが、雇用悪化はこれから本格化するという厳しい認識のもとで、正社員の失業増にも備えた迅速、的確な対応が急務である。 三協・立山HDは富山県内に十工場、石川、神奈川県に各一工場を抱え、このうち五工 場を休止、再編する。住宅着工件数などの落ち込みから建材不況が長引き、業界内での業務提携も思い通りに運ばなかった。経営トップも引責辞任して体制を抜本的に見直す。 思い切った人件費圧縮で経営を立て直す構えだが、正社員を中心にグループ全体の一割 強に当たる千人という削減規模は、有効求人倍率が悪化の一途をたどる状況では、限られた地域の雇用の受け皿にしわ寄せを及ぼすことになり、大量の離職者が一度に発生することの衝撃は軽視できない。 景気悪化がさらに長引けば、企業が雇用維持で頼りにしてきた国の雇用調整助成金など も防波堤の役目を十分に果たせなくなる恐れがある。県や自治体、労働局は企業個々の雇用環境の変化にも目を凝らし、現実に即した受け皿整備を進める必要がある。 北陸では、在庫調整を進め、底打ちの兆しがわずかながら見え始めた企業がある一方で 、工場を閉鎖したり、新入社員に自宅待機をさせている企業も存在する。製造業でも今後、明暗が徐々に表れてくるだろう。不況を乗り切れるかどうか、経営トップの力量がまさに問われる正念場である。
◎追加経済対策 即効性ある消費刺激策を
政府・与党が追加経済対策に盛り込む自動車の買い替え促進策は、すそ野の広い自動車
産業を活性化させる良いアイデアだ。買い替えに際し、最大二十五万円の奨励金を出せば、新車販売が大きく上向くだろう。省エネ家電の普及を促すため価格の5%を「エコポイント」として消費者に還元する制度も悪くはないが、消費刺激策としてはやや力不足で、即効性に欠ける。自動車買い替えと同様に、まとまった額の奨励金を出す仕組みがほしい。私たちはこれまでも燃費の良い車への買い替えや省エネ効果のある家電製品、太陽光発 電の普及促進のための奨励金制度を景気対策の柱にするよう主張してきた。北陸の製造業は今、未曾有の輸出不振にあえいでいる。外需に多くを期待できない以上、生産拡大のためには、国内需要を増やすほかに手はない。自動車やデジタル家電などに「奨励金」を出す制度は、北陸にとっては願ってもない景気対策になるはずだ。 政府・与党案は、十三年以上経過した自動車を廃車にして、新車に買い替える際に一台 あたり最大二十五万円、古い車の買い替えでない場合でも、低燃費車の新車購入費用を一台あたり最大十万円補助する。ドイツ政府も低燃費の環境対応車への買い替えに、約三十一万円の奨励金を出す制度を開始し、二月の新車登録台数が前年同月比で22%増えたという。 省エネ家電の買い替えなら、たとえば与党の地上デジタル放送推進ワーキングチームが 地デジ対応テレビ購入額の13%、上限で三万九千円を支給する普及策を推進している。世帯普及率が50%に満たない状況を打開するためにも追加経済対策に入れてはどうか。 かつて世界一だった日本の太陽光発電の導入量は昨年、ドイツ、スペインに抜かれて世 界三位に後退した。国が家庭用太陽光発電設備に対する補助制度を今年一月に復活したところ、三月末までに二万件を超える申請があった。奨励金を消費意欲を引き出すインセンティブに使えば確実な効果が見込める。製造業の生産拡大を後押しして景気を上向かせたい。
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