empro は OhmyNews 編集部発の実験メディアプロジェクトです(empro とは?)。

カルト・トピックス

GW後に本性を現す「浄土真宗親鸞会」

“キャンパス・カルト”に気をつけろ!(3)

藤倉 善郎(2008-05-07 11:40)
Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーを含むはてなブックマーク  newsing it! この記事をchoixに投稿
 本シリーズ第1・2回では、韓国産のキリスト教系カルトをとりあげた。しかし当然のことながら、日本産の仏教系カルトもある。中でも、大学での偽装サークル勧誘を行う代表格は、宗教法人「浄土真宗親鸞会」。正体を明かさないまま新入生を勧誘し、ゴールデンウィーク(GW)の合宿以降、本格的に宗教へと誘い込んでいく。

 それと知らずに親鸞会系サークルにかかわってしまっていても、いまならまだ間に合う。とっとと付き合いをやめた方がいい(記事を最後まで読んだ後に、親鸞会会合の録音もお聞きください)。
宗教法人「浄土真宗親鸞会」本部
勧誘のピークは毎年3~4月

 親鸞会の設立は1958年。創始者は高森顕徹(たかもり・けんてつ)代表で、本部は富山県射水市。公称信者数は10万人だが、元信者からの情報によれば2007年の実質信者数は6800人。

本部には毎週、全国から会員(信者)が集まる
 中高年の会員(信者)もいる教団だが、「学友部」と呼ばれる親鸞会の学生組織が、大学内で偽装サークルを作り、学生を勧誘する。近年は、大学側のカルト対策が進んだせいで会員獲得がままならず、新入生以外の大学生も積極的に勧誘するようになっているとの指摘もある。

 以前は、合格発表を見るため大学構内に来た受験生を最大のターゲットにしていたが、インターネットなどでの発表が導入された大学では、入学手続き以降の勧誘に力を入れているという。

「生きる意味」に関心がある学生を狙う

 「70年代ごろまでは『歎異抄(たんにしょう)研究会』を名乗っていましたが、その後は『古典を学ぶ会』などと称するようになり、最近は、聞いただけでは何のサークルかわからないような横文字の団体名を名乗ります。その名前も大学ごとに違う。勧誘の際、自分たちが親鸞会であるということはおろか、仏教団体であることすら明かしません」(元会員A氏)

 会員たちは、キャンパス内を一人で歩いている学生に声をかける。うたい文句は「なぜ生きるのか、生きる目的とは何か、を考えるサークル」。

 「3月終わりから4月初めに勧誘された新入生は、『GWまではお試し部員』と言われ、部室(拠点マンションなど)での勉強会に誘われます。ここで親鸞の言葉を記したとされる『歎異抄』の話題が出るため、この団体が仏教系であることだけはわかる」(A氏)

08年の新入生勧誘から本格導入されたテキスト『心の鏡』
 しかしサークルの正体が「親鸞会」であることは、まだ明かされない。

 「かつては高森代表監修の『なぜ生きる』(1万年堂出版=親鸞会系出版社)を新入生向け勉強会のテキストにしていましたが、これが有名になりすぎたため、昨年、別途『心の鏡』という冊子を作成。今年は、この冊子を新入生勧誘のツールにしています」(元会員B氏)

 『心の鏡』は、本文82ページの小冊子で、新聞記事や統計データをもとに若者の人生観の実態を解説。後半は小説仕立てのような構成で、主人公が「生きる目的」に気づいていく過程を描いている。

GWを過ぎると正式入会(入信)へまっしぐら

 新入生がサークルの正体を知るのは、GWの合宿以降だ。合宿では、スポーツなどのレクリエーションで楽しませつつ、一方で「人は死後、必ず無間地獄に落ちる」といった親鸞会の教義を説かれる。大学によっては、レクリエーションは少なく、ほとんど教学の時間に充てられる場合もある。いずれにせよ、この合宿で「(地獄に落ちる)そんな人間でも助かる教えを説く善知識がいる」として高森代表の名が出てくる。

 その後、富山県の教団本部で毎月2回行われている高森代表の法話に誘われ、新入生はここでようやく「親鸞会」という団体名にでくわす。以降、「こんなすばらしい団体はない」などと入会を勧められ、8月に開催される合宿を経て正式入会(入信)となる。

 「GW合宿に参加した新入生の8割は、本部での法話に来る。さらに夏合宿に参加した新入生は、ほぼ全員が入会(入信)する。無間地獄に落ちると言われ、恐怖感から教団を離れられなくなる人もいるが、入会する学生の多くは『地獄に落ちるとは思えないから、よく聞いて考えなきゃ』と考えてのめりこんでいくように思える」(A氏)

 地獄に落ちると脅されたから入会するというほど、単純ではないようだ。

「スーパーMMC」で「親カット」って?

 親鸞会学友部が作成した内部の勧誘マニュアル『必殺育成法の巻』は、勧誘時の会話が事細かに指示しているが、「親鸞会」について説明する内容は全くない。逆に、統一協会などの名前を列挙して宗教に気をつけろと学生にアドバイスするよう指示している。イベント参加の約束を確定させることを「クロージング」と呼び、約束を守らせるコツを「明るく、しつこく、強引に、さわやかに」などとしている。
勧誘マニュアル『必勝育成方の巻』の目次。30ページにわたり勧誘方法を指示している
 入会したことを学生の親に知られないようにすることも、彼らの勧誘においては重要事項。これを彼らは「親カット」と呼ぶ。マニュアルには、こうある。

 「スーパーMMCって知ってる。(略)妙なマザコン男のことなんだって。つまりなんでも親に相談しなくちゃ自分で決められない。というのは頂けないね」(原文ママ)

 こう笑い飛ばして、親に話しづらい気分にさせろ、というわけだ。現在はこの文書自体は用いられていないが、元信者によれば、現在の勧誘手法もこのマニュアルを踏襲しているという。
『必勝育成方の巻』には、新入生をコントロールするため新入生同士の交流を遮断するテクニックも
毎日が親鸞会

 親鸞会は、組織犯罪を行う集団というほどではない。しかし入会すると、大学生活は親鸞会一色にならざるを得ない。新入生がほかのサークルや部活をかけもちすることも禁じる(「兼部カット」と呼ぶ)。

 「毎週日曜日に本部で、高森代表の法話、教学講義、親鸞会製作のアニメの鑑賞と解説といったイベントがあります。参加は強制ではないが、仲間から『行こう、行こう』と言われ、行かざるを得なくなる。全国の信者も同様で、富山への交通費はもちろん自腹。そのほか施設の建立だの何だので献金をせざるを得ず、金銭の負担も大きい」(A氏)

 B氏によれば、「就職すれば払えるでしょ」などと、5年間の分割払いで100万円の献金を約束させられていたケースもあるという。

早稲田生は特に気をつけろ!

 親鸞会の現在の牙城は早稲田大学。ここには「アクセス」という名の親鸞会ダミーサークルがあったが、これが現在では「リンク」と名称を変えて活動している。

 「西の拠点は大阪大学でしたが、大学側のカルト対策がすすみ勧誘しづらくなっています。しかし早稲田大学はいまも野放し。親鸞会に入った早大生が幹部として教育され、他大学の親鸞会学友部をひっぱる。そのほか、東大、千葉大、富山大、神戸大、京都大などでの勧誘が活発です」(B氏)

 親鸞会の勧誘は、実は手当たりしだい誰でも誘うわけではない。

 「勧誘の際、彼らは団体名は隠すものの『なぜ生きるのか』といったことは必ず言います。『なぜ生きるのか』に興味がない学生は、はなから勧誘する気がない。熱心な信者になって活躍してくれる人材に狙いを絞っているんです」(A氏)

 「生きる意味」を語りながら近づいてくる団体に気をつけろ!

  ◇

 本シリーズでは、現役の大学生・大学関係者からの情報を募集します。学内で怪しいチラシを見つけたり勧誘を受けた方は、情報や体験談をお寄せください。このシリーズで取り上げていない団体に関する情報が多く寄せられた場合には、編集部でその団体の正体を調査し、連載の中で「最新事情」としてリポートします。

情報提供の宛先:
オーマイニュース編集部
「“キャンパス・カルト”に気をつけろ!」係(omnj-info@ohmynews.co.jp)

■親鸞会会合の録音
学生の献金を煽る浄土真宗親鸞会

■関連リンク
なぜ私は親鸞会をやめたのか(資料提供)
浄土真宗親鸞会被害家族の会


カルト・トピックス トップページへ

バックナンバー

マイスクラップ 印刷用ページ メール転送する
184
あなたも評価に参加してみませんか? 市民記者になると10点評価ができます!
※評価結果は定期的に反映されます。
評価する

なぜ日本のニュースサイトはつまらないのか
»日本列島力クイズを大画面でプレイする