弘前大学人文学部付属雇用政策研究センターは昨年12月に若者の都市部と地方との就業状況などを調査し、7日、公表した。調査では同じ東北出身でも首都圏への移動時期によって就職状況や所得水準が大きく異なるという結果となった。リサーチグループリーダーの李永俊准教授は若者の首都圏流出を防ぐため「首都圏と地方間では時間とお金のかかる移動がネック。移動に伴う経済的支援政策などが求められている」と指摘した。
地方の若者が安定した職を求め、雇用条件の整った都市部へ流出するという地方過疎化の問題が深刻化していることから、地方出身の若者が抱える問題を把握し、若者が地元に戻るための有効な解決策を探ろうと調査。今回、「都市に暮らす地方出身の若者の就業状況と地元意識に関する調査研究」としてまとめた。
調査は昨年12月、インターネット調査会社マクロミルのモニターから抽出し、東北地方と東京圏の在住者を選び、20歳から34歳までの社会人男女(女性は未婚者)を対象に実施。インターネットを使用したアンケート2775人を対象に分析。
就業状況については進学時に移動した人と就職・転職時に移動した人の正規雇用の割合が高く、東北定住者、東北Uターン者、東京Uターン者に無業者の割合が高かった。
性別、タイプ別の年収(正規雇用者)については、東北出身者の年収を比較すると男女においても同じ結果で、最も多い進学時移動者と最も少ない東北定住者間には約100万円の収入差が見られ、進学時に首都圏に移動することが収入を得るきっかけになるという結果となった。
東北Uターン者の場合は、東北定住者と比べ、賃金水準が低く、教育水準、人的資本に見合わない処遇を受けている可能性がうかがえる。これは、Uターン者は親の介護、結婚、出産など経済的要因以外の理由でUターンするケースが多いことが原因だという。李准教授は「教育水準に見合う仕事、待遇があればUターン者の増加にもつながる」とも指摘し調査成果について「移動時期まで踏み込み、移動について明確なデータが得られたことが大きい」と話した。