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須賀川一中柔道訴訟:市が控訴断念 市長が正式謝罪の意向、初表明 /福島

 ◇「誤解や不信招いた」

 須賀川市立第一中学校で03年10月、柔道部の練習中に男子生徒に投げられ、当時1年の女子生徒(現在18歳)が意識不明となった事故を巡る訴訟は、同市が損害賠償1億5554万円の支払いを命じた福島地裁郡山支部判決を全面的に受け入れ、控訴しないことを決めた。控訴期限は今月10日で、同じく被告となった県、元男子生徒側も控訴しないことを明らかにしており、教育現場への不信を広げたこの問題は、提訴から2年7カ月で決着する。【坂本智尚】

 市役所で会見した橋本克也市長は「問題の早期解決を図ることを選択すべきだと判断した。元女子生徒の一日も早い回復を願いたい」と述べ、自宅を訪ねて市として初めて正式に謝罪する意向を明らかにした。賠償金は、「被害者救済の観点から市がいったん全額を支払い、その後、県などと負担割合を協議する」という。

 今回の判決で、元顧問の安全配慮義務違反、校長など管理職の監督上の過失、学校が作成した事故報告書の信ぴょう性への疑義--などが指摘された点に関して橋本市長は「初期対応のまずさから誤解や不信を招いた」と述べ、当時の柔道部顧問や校長ら学校関係者、市長を含む市や市教委の管理責任について、第三者機関を設置し、処分などを検討することを明らかにした。

 ◇両親「校長ら処分を」

 須賀川市の会見を受け、長女である元女子生徒の両親は、同市の自宅で取材に応じた。介護のため約1000万円をかけて増築した部屋の前で、「控訴しないのは当然だ」などと胸中を語った。

 父親(53)は、橋本克也市長から電話で控訴しないと報告を受けたと明かし、「当然だ。控訴の理由はない」と話した。当時の中学校の校長や教頭、同市教委幹部の懲戒処分を求め、「それが済むまでは裁判は終わらない」と語気を強めた。

 長女の意識は依然として戻っていない。「どうしてこんなことが起きたのかと思う時もあるが、落ち込んではいられない。家族で協力して生きていきたい」と語り、母親(45)は「意思疎通ができるまで頑張りたい」と話した。

 夏には長女が好きな千葉県のディズニーランドへの旅行を計画中という。【神保圭作】

 ◇県も控訴せず

 橋本克也市長は7日、県庁に遠藤俊博教育長を訪ね、控訴しない方針を伝えた。遠藤教育長は「市の重い判断を尊重したい」とし、県も控訴しない方針を表明した。

 賠償金の負担割合は今後の協議に委ねたが、「市の服務監督に関する責任が争われた訴訟なので、県は主張することはする」と話した。【関雄輔】

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 ■解説

 ◇情報公開、誠実な対応を

 「(事故隠しにより)中学校は責任を逃れようとした疑いが強い」。福島地裁郡山支部が糾弾したこの言葉こそ、事故で意識不明になった長女の両親が求めていた言葉だ。須賀川市は指摘を受け入れざるを得なくなり、控訴しないことを決めた。学校は事故を未然に防ぐのは当然として、起きた時には真摯(しんし)な対応と情報公開が必要だ。穏便に済まそうとする態度では教訓を引き出せない。

 03年10月、須賀川市立第一中1年だった女子生徒は、柔道部の練習中に投げられて意識不明になった。学校は「休憩中に倒れた」と両親に説明。両親が同級生に入院中の長女を励ましてもらうよう学校に求めても、学校は他の生徒に両親の希望を伝えなかった。そればかりか、面会したいという生徒に「両親は来ないでほしいと言っている」と伝えたという。

 両親は「責任の所在をはっきりさせたい」と、損害賠償を求めて訴えを起こし、2年7カ月の年月をへて勝訴した。

 事故から5年半。長女の意識は戻らず母親(45)らの介護が続く。身長は事故当時より5センチ伸びた。母親は以前こう語ったことがある。「事故直後、同級生の声を聞かせたら意識が戻ったのではないか」。学校側の不誠実な対応が、両親を一層深く傷つけた。【神保圭作】

毎日新聞 2009年4月8日 地方版

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