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闇サイト殺人事件

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闇サイト殺人判決 1被害者で複数死刑 社会的影響を重視

 18日の名古屋闇サイト殺人事件の名古屋地裁判決は、被害者1人の殺人事件で2被告が死刑判決を受けた点で異例と言える。最高裁が83年に連続射殺事件の永山則夫元死刑囚への判決で9項目の死刑の判断基準の一つとして「結果の重大性」(ことに被害者の数)を明示して以降、これまで被害者1人の殺人事件で複数の被告の死刑が確定したのは1例(2人)しかなかった。

 「被害者1人」の殺人事件に対する死刑適用に慎重になったのは下級審だった。特に93年12月から98年3月までは、死刑確定事件が一件もない。

 この流れに危機感を抱いた検察側は97~98年、被害者が1~2人で、控訴審判決が無期懲役だった5件の強盗殺人事件について上告。最高裁が永山基準より詳細な基準を示すか注目されたが、最高裁は「被害者が1人でも極刑がやむを得ない場合がある」と判示しただけだった。

 だが00年以降、犯罪被害者保護法や犯罪被害者等基本法が制定され、被害者・遺族重視の傾向が強まる。05年3月には東京高裁が「峻烈(しゅんれつ)な遺族感情」などを理由に1審で無期懲役だった被告に死刑を宣告した。さらに長崎市長射殺事件で長崎地裁は08年5月、「選挙を妨害し、民主主義の根幹を揺るがした」として死刑判決を下した。社会的影響を重視した点では「闇サイトを悪用した犯罪の予防」を強調した今回の判決とも通じる。

 7歳の女児がわいせつ目的の犯行で殺害された奈良市と広島市の事件では、06年の1審判決は死刑と無期懲役に分かれている。【秋山信一】

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 ■判決要旨

 <量刑の理由>

第1 (略)

第2 全体の情状

1 犯行に至る経緯及び動機等

 被告人3名が、楽をして金もうけをしたいという強い利欲目的のみに基づいて行ったもので、動機に何らの酌量の余地はない。

2 犯行の特色等

 インターネット上の掲示板を通じて集まり、犯罪を計画し、実行したという点に特色がある。このような犯罪者集団が強い利欲目的に基づいて、通りがかりの、全く関係のない一般市民の生命を躊躇(ちゅうちょ)なく犠牲にして金銭を得ようという犯罪計画が数日間のうちに立てられ、実行された。悪質性は極めて高い。模倣されるおそれも高い。

3 犯行の態様等(略)

4 被告人が虚勢を張り合っていた面に関する評価(略)

5 犯行の計画性の程度

 程度に関し、より綿密詳細な計画が立てられていた事案と比べ、刑種の選択を分かつほど、有利にしんしゃくすべき事情があるとまで解するのは相当でない。

6 犯行の結果及び遺族の被害感情等(略)

7 殺害後の状況等(略)

8 社会的影響

 インターネット上の掲示板を利用して集まった犯罪者集団が、利欲目的のみによって、何らの落ち度のない女性を惨殺した事件として大きく報道され、社会に大きな衝撃、恐怖感、不安感を与えた。

第3 個別の情状等

1 被告人神田の存在が犯行計画立案に果たした役割は誠に大きい。殺害行為の場面においても、最初に自ら名乗りを上げて被害者の首を絞め、とどめを刺すべく被害者の首にロープを巻き付けて絞め上げ、ハンマーでも約30回も頭部を殴りつけるなどしたものであって、被告人3名の中で、最も積極的に苛烈(かれつ)な殺害行為を実行している。

2 被告人堀は、暗証番号を聞き出すべく、最も積極的に包丁を用いて強度の脅迫行為を行っている上、殺害行為についても、被告人神田に次いで積極的に行っている。

3 被告人川岸がインターネット上の掲示板に書き込みをしたことが契機となり、犯罪者集団が出来上がり、犯行が敢行された。殺害行為時には、被告人堀とともにロープの両端を持って絞め上げており、殺害行為自体についての関与は結果として低かったとはいえ、消極的であったということは到底できない。

 被告人川岸は、犯行後に自首した。

4 被告人3名の犯行等における役割の軽重

 3名の間に量刑上、刑種の選択を分かつほどの差異を設けるべき事情を見いだすことはできない。

5 被告人川岸による自首の評価について

(1)自首の成立(略)

(2)自首の量刑上の評価

 検察官は、自首がなくとも、被告人らの検挙は可能であり、自首はさしたる有利な事情とはいえない旨主張する。しかし、犯行がインターネットの掲示板によって集まった犯罪集団によるものであって、犯人逮捕が困難である点を考慮すれば、量刑要素として大きく評価することができる。

 第4 結論

 死刑は人命を奪う究極の刑罰であり、慎重に適用されなければならないことは言うまでもない。

 この種犯罪は凶悪化、巧妙化しやすく危険であり、匿名性の高い集団によって行われている点において、発覚、逮捕がされにくく、しかも模倣される恐れも高いという極めて悪質性の高い種類の犯行であって、厳罰をもって臨む必要性が誠に高い。結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯行後の情状等も考慮すれば、殺害された被害者の人数が1人であること等を最大限考慮しても極刑をもって臨むことはやむを得ない。

 被告人川岸の量刑について検討すると、被告人神田及び被告人堀と比較し、刑事責任は勝るとも劣らぬものである。しかし、犯行後短時間で自首し、被告人神田及び被告人堀の逮捕に協力し、その後起こり得た犯罪を阻止し、解決に結果として寄与したという点は量刑上、特に有利な事情として評価することができる。

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 ◇主な被害者1人の殺人事件を巡る動き

86年12月 東京都の男児を誘拐・殺害した男に1審死刑判決。永山判決後、初の死刑確定

88年 4月 福岡県の病院長強盗殺人事件の上告審で、男2人に死刑判決。永山判決後、唯一の複数被告の死刑確定

93年11月 仮釈放中に福岡県で母娘4人を殺傷した男の1審で死刑判決。確定。98年4月まで死刑確定が途絶えた

97~98年 検察側が控訴審で無期懲役だった5件の強盗殺人事件(被害者各1~2人)で上告

99年11月 上告した5件のうち1審死刑の男の上告審で「周到な計画性がない」と2審の無期懲役判決を支持。「被害者が1人でも極刑がやむを得ない場合がある」と判示した

   12月 5件のうち仮釈放中に2度目の強盗殺人を起こした男の上告審で、無期懲役判決を破棄、審理差し戻しの判決。5件のうち検察側の主張が認められた唯一の事件。高裁で死刑判決後、最高裁で確定

05年 3月 静岡県の女子大生を強姦(ごうかん)・殺害した男の控訴審で「遺族感情などを考慮すると極刑しかない」と1審無期懲役を破棄し死刑判決。最高裁で確定

06年 7月 広島市の女児を殺害した男の1審で「被害者1人で計画性がない」と男に無期懲役判決。上告中

    9月 奈良市の女児を誘拐・殺害した男の1審で「(被害者の)数だけをもって死刑を回避できない」と死刑判決。確定

08年 5月 長崎市長を射殺した男の1審で死刑判決。控訴中

09年 2月 東京都の女性を殺害した男の1審で「計画性がない」と男に無期懲役判決。控訴中

毎日新聞 2009年3月19日 中部朝刊

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