1990年のリーズ国際コンクールは、世界中で大きな話題となった。
ベートーヴェン晩年の傑作にして難曲<ディアベッリ変奏曲>を独創的に弾き、審査員、聴衆の注目と喝采を総ざらいにしたワルシャワ出身の若者が、その後の本選から突如姿を消したのである・・・。
その若者の名は、ピョートル・アンデルシェフスキ。彼は、自身の演奏に納得できず、コンクールを途中で棄権したのだった。その後、あまたのレコード会社が彼に目をつけ、<ディアベッリ変奏曲>のレコーディングを打診するが、アンデルシェフスキは「まだその時期ではない」とその誘いをことごとく断ってしまう。二十歳になったばかりの演奏家にとっては、コンクールにしても、レコーディングにしても、願ってもない大きなチャンスであっただろう。しかし、アンデルシェフスキにとっては、自分が納得できるクオリティこそが、何よりも大切なのだった。
己の信ずる道を行く若き完璧主義者=アンデルシェフスキは、その後、じわりじわりと世界的な評価を高めていく。精緻さとダイナミズムを共存させ、強いコントラストの中に無限の豊かな階調を描き出すその演奏は、「古典」を新鮮な姿でよみがえらせ、多くの聴衆を魅了してきた。今度のリサイタルで演奏されるバッハ、シューマン、ヤナーチェク、ベートーヴェンは、最近のアンデルシェフスキが特に力を入れている作曲家、作品であり、その実力が存分に発揮されるプログラムとなっている。
21世紀を背負って立つであろうもっとも個性的なピアニストの一人として、大きな期待が寄せられているアンデルシェフスキのリサイタル。どうぞお聴き逃しなく。
担当:関根 哲也(水戸芸術館音楽部門学芸員)
http://www.arttowermito.or.jp/blog/sekine/
-----------------------------------------------------------------------------------------
ピョートル・アンデルシェフスキ ピアノ・リサイタル
Piotr Anderszewski Piano Recital
-----------------------------------------------------------------------------------------
2009年 5月31日(日)16:00開演(15:30開場)
水戸芸術館コンサートホールATM
J.S.バッハ:パルティータ 第6番 ホ短調 BWV830
J.S. Bach: Partita Nr.6 e moll BWV830
シューマン:作品未定
Schumann: to be announced
ヤナーチェク:霧のなかで
Jana?ek: V mlh?ch
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
Beethoven: Sonate f?r Klavier Nr.31 As dur Op.110
主催:財団法人 水戸市芸術振興財団
料金(全席指定):4,000円
---------------------------------------------
チケット発売:2009年 3月28日(土)
---------------------------------------------
・館エントランスホールチケットカウンター(9:30〜18:00、月曜休)
・館チケット予約センター Tel. 029-231-8000(9:30〜18:00、月曜休)
・MUSIC SHOP かわまた Tel. 029-226-0351
・ヤマハミュージック関東 Tel. 029-244-6661
・チケットぴあ Tel. 0570-02-9999 (Pコード 319-374)
・CNプレイガイド Tel. 0570-08-9990
・ATM速報受信のお客さまに限り、館日本語トップページ「ATM速報受信のお客さま専用ご予約メニュー」からご予約いただけます。
(発売日 9:30以降、公演前日または完売まで無休)
----------------------------------------------
ピョートル・アンデルシェフスキ(ピアノ)
Piotr Anderszewski, Piano
1969年、ポーランド人とハンガリー人の両親のもとワルシャワに生まれる。現代における最も刺激的で魅力あふれるピアニストの1人である。6歳でピアノを始め、リヨン、ストラスブールの音楽院、南カリフォルニア大学、ワルシャワのショパン・アカデミーなどで学ぶ。1990年のリーズ国際コンクールでは、予選で弾いたベートーヴェン<ディアベッリ変奏曲>の圧倒的な演奏が審査員、聴衆を驚かせ、高く評価されたものの、別の曲の演奏に自身が失望し、本選を棄権。その後、多くのレコード会社から<ディアベッリ変奏曲>の録音の打診があったが、「録音にはまだ早い」とその誘いをすべて断った。新人ながら、その完璧主義者ぶりが世界を注目させた。
1991年、ロンドンのウィグモア・ホールでのリサイタルは輝かしい成功をおさめ、国際的な名声を確立。以来、集中力の高さと独創的な解釈が高く評価され、カーネギーホール(ニューヨーク)、ムジークフェラインザール(ウィーン)、シャンゼリゼ劇場(パリ)など、世界の名だたるコンサートホールに定期的に登場し、リサイタルを行っている。また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団など、世界一流のオーケストラとも数多く共演している。
協奏曲の弾き振りにも定評があり、シンフォニア・ヴァルソヴィア、
マーラー室内管弦楽団、スコットランド室内管弦楽団、ベルリン・フィルのソリストたちなどと演奏している。
2000年、ヴァージン・クラシックスの専属アーティストとなり、以来、数々の録音が賞を獲得している。ヴァージン・レーベルでの初のレコーディングは『ベートーヴェン:ディアベッリ変奏曲』で、その録音過程は映像作家ブルーノ・モンサンジョン(スヴャトスラフ・リヒテルやグレン・グールドのドキュメンタリーの制作者)によってDVDに記録され、大きな話題を呼んだ。この録音はディアパソン・ドールなどの栄誉に輝いている。
ディスコグラフィにはこのほか、シンフォニア・ヴァルソヴィアを弾き振りして録音した『モーツァルト:ピアノ協奏曲集』や、グラミー賞にノミネートされた『バッハ:パルティータ第1番、3番、6番』もある。同郷の作曲家、シマノフスキの音楽との関わりは特に深く、『シマノフスキ:ピアノ作品集』は絶賛を集め、2006年度のクラシックFMグラモフォン賞を受賞した。最新のリリースは、『ベートーヴェン:6つのバガテル、ピアノ協奏曲第1番』(ピアノ協奏曲はドイツ・カンマーフィルハーモニーを弾き振り)。
1999年シマノフスキ賞を受賞、2001年イギリスのロイヤル・フィルハーモニック協会から2000年度最優秀器楽奏者賞を受賞したほか、2002年4月には4年に1度卓越したピアニストに贈られるギルモワ・アワードに輝いている。2008/09シーズンは、カーネギーホール、シンフォニーホール(シカゴ)、ディズニー・コンサートホール(ロサンゼルス)、ロイヤル・フェスティバルホール(ロンドン)、サントリーホール(東京)などでリサイタルを予定。また、ヴァイオリンのフランク=ペーター・ツィンマーマンとのデュオもヨーロッパ各地で予定
されている。
現在、パリとリスボンに在住。