東京五輪開催の1964年に放送開始以来、連綿と続いてきた名古屋・東海テレビ制作の昼の帯ドラマ(フジテレビ系、平日午後1時半~2時)が45周年を迎えた。6日スタートの「エゴイスト」が179作目になる。長年のライバルだったTBS系の昼ドラ2本枠(午後1~2時)が今月からなくなる新段階を迎え、老舗局も自己改革に踏み切った。昼ドラ統括の鶴啓二郎・東海テレビ制作局次長兼東京制作部長(49)に聞いた。【網谷隆司郎】
話題作「真珠夫人」や「風のロンド」のプロデューサーを務めた鶴さんは、「2年前から練っていた昼ドラ改革案を今月から実施したのですが、それがたまたま裏局さんの消滅の時期とぶつかった」と説明する。個々の作品の平均視聴率(関東地区)はここ20年間、4~9%台に終始、88年「華の嵐」の10・8%以来、2ケタは出ていない。改革必至の事情があった。
まず作品の長さを変えた。今まで1本3カ月(全60~65話)で1年4本体制だったのを、2カ月(全40話)ものを新たに3本投入、3カ月もの2本と併せて1年5本体制にした。「3カ月だと長いがゆえに中だるみもあった。2カ月に凝縮して今まで以上にハラハラドキドキ感の強い作品を交ぜて、メリハリをつけた」
ドラマの内容にも変革の波が来るか。「東海テレビの昼ドラ」といえば、放送開始から数年は円地文子、井上靖ら著名作家の原作を基にした文芸ドラマが人気を博し、70年代後半は花登筐の浪花根性ドラマがヒット。80年代後半は欧米の古典小説を翻案した大河ロマンが支持を得て、90年代後半からは中島丈博らによる愛憎ドロドロ劇が幅広い世代に受け入れられた。
「こうした得意分野、ファンの多い作品群の中心の部分は維持するが、企画はもっと冒険していきたい」と、例えば純粋なホームドラマ、多重人格もの、刑事ドラマなどを挙げる。「今の作り手は失敗を恐れて発想の幅が狭くなっていないか。6人のプロデューサーには、何でもありだ、とけしかけています」
かつて中心視聴者だった専業主婦が減少し、生活時間も変化したが、鶴さんは昼ドラ文化の存在意義を強調する。
「登場人物の心のひだ、善悪を超えた業の部分をこれでもかと描くのが昼ドラの特徴。作り手は小さな町工場の職人のようで、ささやかでも人の心を豊かにするものであり続けるならば、受け継ぐべき伝統芸の職人技だ。消し去って砂漠にしてはいけないジャンルだと信じています」
毎日新聞 2009年4月2日 東京夕刊