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住所=「駅前トイレ」 路上生活5カ月

2009年04月07日

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トイレで暖をとる元派遣社員=JR福井駅前

 路上生活を強いられるホームレスをJR福井駅周辺などで見かけるようになった。県の1月末の集計では県内に28人。ホームレスたちは「実際はもっと増えている」という。昨秋以降に派遣切りされた人たちの雇用保険が春になって切れはじめ、失業者のホームレス化が進んでいる可能性もある。大都市と違って、ホームレスがほとんどいなかった福井。行政の対応は消極的だ。

 勝山市出身の男性(36)は深夜、駅前の公衆トイレの洋式便座にぬくもりを求める。家を失ってから5カ月間、大半を福井駅周辺の路上で暮らした。トイレは午後10時をすぎるとホームレスたちの仮の宿になる。ドアが閉まり「使用中」が明け方まで続く。

 この夜も、男性は身体障害者用のトイレに入り、一息ついた。2畳ほどのスペースに、シャワー付きの洗面台やベッドとして使える台が備わっている。何よりうれしいのは暖かい洋式の便座。この公衆トイレには二つしかない。「ホームレス同士で奪い合いですよ」。凍える冬の夜でも、1時間もするとお尻からじわっと温まってくる。

 県内や石川の半導体の製造工場で4年余り、月給18万円ほどの派遣社員として働いた。昨年10月、肝臓を患い1カ月ほど入院した後、派遣会社から「もう行くところはない」と言われた。両親は死亡し、4年前に離婚。家族はない。ハローワークで紹介された温泉街のホテルは不採用。生活保護は今月2日、ようやく申請書類を受理された。

 失業した時は「普通の人」。それが再就職先が見つからないうちに、住む家はなくなり、ひげは伸び、服は汚れた。「仕事を探すにも、食べる寝るの最低限の生活さえ保証されないと、面接へ行くかっこうもできない」

 県地域福祉課によると、ホームレス28人の内訳は福井市に27人、小浜市に1人。福祉事務所員らが主に駅前などで声をかけ、ホームレスと認めた人の数で、2年前の41人より減っている。しかし、県内の各福祉事務所への生活相談件数は3月末までの1年間に1157人で、前年度より419人増えた。特に昨年12月以降は急増。「派遣切りされて生活できない」といった相談が月平均100件を超す。

 ホームレスの人数についても、福井市内で路上生活する50代と70代の男女2人組は「最近急に増えている。100人以上はいる」という。同課も「派遣切りなどで先秋に失業した人たちの雇用保険が春に切れる。ホームレスが急増する心配はある」。2人は「石川や富山では週に1度は炊き出しがあると聞く。まず食べ物がほしい」と訴える。

 福井市は、福祉事務所の特別相談員が市内を巡回するが、状況把握しかしないという。「基本的に自助努力。国の制度に従っており、市独自の行政サービスはない。生活保護制度を利用してもらうしかない」と説明する。

 福井労働局によると、雇い止めや契約を中途解除される人は昨年10月〜今年6月末に30事業所2426人になる見込みだ。

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