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【宮家邦彦のWorld Watch】イラクをめぐる7つの神話 (1/2ページ)
早いもので、来週3月19日はイラク戦争開戦6周年だ。筆者は幸運にも、去る1月末と2月下旬の2回、5年ぶりでバグダッドを訪問する機会を得た。予想通り、治安の最前線は既にイラク人部隊が担っていた。街中では多くの米兵を見かけることもなかった。
イラクの首都は外務省時代に2回勤務した思い出深い場所だ。その地に戻って冷静に振り返ってみると、イラク戦争をめぐる神話・俗説の多くがいかにいい加減なものか良く分かる。例えば、こうだ。
(1)戦争の目的は石油だった
これは明らかに間違いだ。当時筆者はCPAと呼ばれたイラク占領当局で勤務していたが、石油利権をあさろうとした米軍人・政府関係者は皆無だった。それどころか、今日に至るまで米国系メジャーはイラクの石油利権を一切獲得していないではないか。
(2)イラク軍解体が混乱の原因だった
これもおかしい。そもそも、イラクの一般兵士はフセインのために米軍と戦う気など毛頭なかった。彼らは開戦と同時に愛する家族を守るため自宅へ戻ってしまう。イラク軍は「解体」される前に「蒸発」してしまったのだ。
(3)イラクに大量破壊兵器はなかった
「なかった」というより「作れなかった」のが真相だ。後にフセインも核兵器開発の意図があったことは認めている。イランの核兵器開発も潜在的脅威だった。戦争がなければ、今ごろはイラクの核開発疑惑が再問題化しているに違いない。
(4)イラクで内戦が始まる
昔一部の識者が真顔で唱えていた説だ。確かに、イラクの宗派間抗争は深刻だが、1月末には地方選挙が整然と実施されている。イラクが泥沼化するといった「予測」は徐々に外れつつあるのではないか。
(5)イラクはアルカーイダの拠点となる
これもないだろう。アルカーイダの活動がイラクで始まったのは戦争後のことだ。最近では米軍に寝返って、昔の仲間を売る元テロリストが続出していると聞く。