【モスクワ=遠藤良介】北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を受け、国営ロシア通信社は6日、ロシアを代表する朝鮮問題専門家3人による公開討論会を開催した。出席者はこの中で、北朝鮮への制裁強化を求める日本の対応を「病的」「ヒステリック」と異口同音に非難し、「圧力は核問題の解決につながらない。対話と妥協こそが重要だ」などと主張した。ミサイル発射をめぐる日米韓との認識の溝はあまりに深い。
露科学アカデミー朝鮮研究センターのジェビン所長は「宇宙空間の平和利用は国際法上の権利だ」とし、発射されたのが弾道ミサイルだとしても「11年間に3度の発射実験では技術的に満足なものはつくれない。何ら軍事的脅威はない」と発言。「ロシア世界」基金のトロラヤ氏も「日本の反応は事前に準備されたものだ。ミサイル防衛(MD)システム配備の論拠を固めるといった政治的な目的がある」と同調した。
荒唐無(む)稽(けい)ともいえる言説の背景には、「(エネルギー支援などを約束した)1994年の米朝枠組み合意や2005年の6カ国協議共同声明で『妥協』がなされた際、北朝鮮は問題行動を停止してきた」(同氏)との認識がある。「制裁を強化すれば、北朝鮮は6カ国協議から脱退する。(不完全な)ミサイルと核兵器とどちらが危険か」(科学アカデミー、ボロンツォフ氏)との考えも根強い。
ロシアと北朝鮮との関係はソ連崩壊後に疎遠となったものの、2000年発足のプーチン前政権は朝鮮半島を「国益にかかわる地域」として積極外交に転じた。近年は北朝鮮との鉄道連結計画が始動、朝鮮半島での天然ガス・パイプライン敷設で合意するなど経済関係が深まっている。
ボロンツォフ氏は本紙に「ロシアにとっての国益は朝鮮半島の安全と安定であり、体制が好ましいかは二の次だ」と指摘。北朝鮮への弱腰が兵器開発の時間稼ぎに利用される懸念については「核放棄と改革・開放には北朝鮮が体制の安全を保障されていると感じることが不可欠だ。北朝鮮は直接的な圧力を絶対に受け入れない」と語った。
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